見出し画像

「読みやすい」はつくれる。私のデザインの源泉

 同人誌やTRPG用ツールなど、自分の作ったものを世に出すようになって、はや数年が経ちました。
 先日、私の手掛けたDTPデザインへのお褒めの言葉とともに「参考書などがあれば教えてほしい」と言われたので、おすすめしたいもののまとめも兼ねて、普段考えていることを書き出してみます。

はじめに

 私は自分の作った同人誌が好きです。内容も好みを詰めているのですが、今回はデザインに絞った話をします。

 私の同人誌の第一の読者は自分自身です。私の作る紙面構成は、その時々の自分にとって「快い」ように作っています。
 この「快さ」は複合的なもので、「読みやすさ」「参照しやすさ」「わかりやすさ」といった要素を含んでいます。この中のどれを優先するかは本の形態によって異なりますが、「自分にとって快いと感じられる」ものを作ろう、という姿勢は共通しています。

 「快い」というのは感覚的で漠然とした表現です。しかし、「どうデザインすれば快く感じられるのか」という理屈は、偉大な先人たちがあの手この手で解明し、体系化し、さまざまな媒体で発信してくれています。
 私がやっているデザインは、そうした知識と技術のつまみ食いと模倣で成り立っています。いわば「こうすればより快い」という小技の積み重ねです。あとから見ると未熟も目につきますし、学んだすべてを実践できているとは到底言えないのですが、それでもデザインの方法を知る前と知った後とでは、随分作り方が変わったと思います。

 肝心の「何をどうすれば快いものができるのか」については、ぶっちゃけ私からは説明できる気がしません。
 デザインを学びたい人に向けて、私よりもっとうまく説明してくれる偉大な先人はたくさんいます。この記事ではその入り口となる媒体や、私が制作時に参考にしているものをいくつか紹介します。


1.市販の参考書

 市販の本って、全部プロがデザインしてると考えるとすごいですね。対価を払えば技術の粋を手元で見られる。そしてデザイン関連書籍だとノウハウも学べる。すごい。
 良書と呼ばれるデザイナー指南本は色々ありますが、手元にある中で個人的に好きな本を3冊紹介します。

 「一からちゃんとデザインについて学びたい」人向けにおすすめしたい入門書。「レイアウトの基本ルール」の章をしっかり読むだけでも、自分の作るものはもちろん、世の中に存在するあらゆるレイアウトデザインを見る目が変わると思います。
 「応用テクニック」の章は作例がはちゃめちゃにおしゃれで、「このデザイナーの頭の中どうなってるの?(何考えてデザインしてんの?)」という疑問の答えを一部垣間見ることができます。

 余白って本当大事です。いいレイアウトは大抵余白の使い方がうまい。逆に、見ていてどこか引っかかりを覚えてしまうレイアウトは、大抵余白の使い方がいまいちな気がします(※個人の感想です)。
 この本は作例が豊富で、「悪くはないけどいまいちパッとしない」レイアウトと「今風の“しゅっとした”」レイアウトの対比がとてもわかりやすくまとまっています(このわかりやすさもデザインの力ですね)。「どこにどう手を入れたら良くなるのか」も丁寧に解説されています。

 こちらは優れた作例を集めた本です。1つのテーマに対する4パターンのデザインアプローチを、解説つきで見ることができます。メインに使ったフォント名まで明記してあるのが手厚くてありがたい。
 眺めてみて「こういうの好きだな(or好みじゃないな)」とか「こういうの作ってみたいな」というのが出てきたらしめたものです。全般に言えることですが、知ったこと全部を実践するのは到底無理なので、自分の琴線に触れたところをかいつまんで真似していくくらいが丁度良いです。


2.プロが作ったスライド

 SlideshareSpeaker Deckなど、プレゼンテーション資料(スライド)をweb上で見られるサービスがあります。この2つは英語のサイトですが、日本語の資料も多数投稿されており、プロのデザイナーが講演会などで使用したスライドを無料で見ることができます。

 本来は口頭での解説が付随するものでしょうから、先に参考書等でふんわりとでも基礎知識を頭に入れてから見た方が、内容が頭に入ってきやすいんじゃないかと思います。
 スライドそのものも、「伝える」という目的のために洗練されたデザインなので、その点にも注目して見ると楽しいです。

 一例として、荒砂智之さん(@tomoyukiarasuna)の「ウェブデザインに応用する4つの基本原則」と、とりいめぐみさん(@kinakobooster)の「これだけ守れば見やすくなるデザインの基礎」を紹介します。noteの埋め込み機能、すごく便利ですね……。


3.ひとさまの同人誌×レビュー企画

 デザインぢからのほとんどを同人誌制作に注力している私にとって、ひとさまの同人誌はこの上ない実例サンプルでもあります。内容を楽しみ、デザインを参考にし、と一粒で二度美味しくいただいております。
 同人誌の楽しみ方が広がったのも、デザインを勉強して良かったことのひとつですね。

 他ジャンルの同人誌にはなかなか触れる機会がないものですが、web上でたくさんの実例を見られる機会があります。それが、プロデザイナーのPOO松本さん(@POO_MATSUMOTO)がコミケ後に実施している、氏のもとに持ち込まれた同人誌のレビュー&デザインアドバイス企画です。
 この企画はTwitter上で行われ、有志の手でtogetterにまとめられています。ジャンルを問わず、同人誌制作で「デザイン」という壁に当たったことのある人は全員読んだ方がいいと思います。

 この企画には毎回様々なジャンルの同人誌が寄せられており、情熱の詰まった本の数々を見ているだけでも楽しいです。
 1冊につきほぼ1ツイート+画像1枚に収まるワンポイントアドバイスは、今日からすぐに活かせるものばかりです。togetter記事のトップにも書いてある通り、「参考になる!と思ったアドバイスをつまみ食い」させていただいております。

 ちなみにC96編では弊サークルも新刊を持ち込んだのですが、TRPGシナリオ集という性質上、ネタバレにご配慮いただきご紹介のみとなっています。どこなら載せても大丈夫かを伝えそびれた、私の報連相不足でした。レビューしていただく機会を失ったのが悔しいので、C98でリベンジ予定です。

 C97編も近日開催とのことですので、同人誌のデザインに興味があったり、様々なジャンルの同人誌を見てみたいひとは要チェックですよー。


4.市販の素材集

 いざ何か作ろうと思い立つと、遅かれ早かれ突き当たるのが素材の問題です。今はwebで無料ダウンロード出来るフリー素材が充実していますが、「玉石混交」「数が膨大すぎて探すのが大変」という側面があります。
 一定のクオリティの素材を一覧して使えるものを探したい、そんなとき便利なのが市販の素材集です。

 良い素材はアイデアの引き出しを広げてくれます。「この素材を使えばこういうことが出来る」という思いつきから始まるデザインもあります。最近の素材集は作例も豊富なので、それに助けられることも多いです。
 使うか使わないかはひとまず置いといて(※この割り切りは大事です)、本屋で実際に素材集を手にとってみたり、Amazonのプレビューを利用したりして、好みの傾向のものを何冊か見つけておくといいと思います。
 以下に私の個人的な推し素材集を4冊紹介します。

 付属のDVD-ROMをうっかり紛失してしまい、2冊目を購入したくらいお世話になっています。表紙の箔押しがかわいいです。
 大きい柄をメインに使うも良し、ちょっとした罫線や枠組み、ワンポイント装飾として置くのもよし。それだけで画面が引き締まってほんのり上品な感じになります。もう手放せません。

 様々なジャンルの素材と、それを使った作例が多数収録されています。更には使用したフォントとカラーコードも明記されている手厚さ。帯の「これ一冊でおしゃれなデザインが完成」というあおり文句は伊達じゃない。
 カバーにニスで描かれた模様が大変かわいいので、機会があればぜひ現物を見てほしいです。本の特殊加工が好きな人は、ちょっとテンションが上がるんじゃないでしょうか。

 植物系の素材が欲しくていくつか素材集を買ったのですが、これが一番重宝しています。鉛筆画風のイラスト素材もさることながら、落ち着いた色合いのテクスチャが豊富で、大変使い勝手の良いもの揃いで助かってます。

 花の素材集はこちらもオススメ。シンプルな線画でありながらとても華やかな飾り枠が、サイズ別にバリエーション豊かに収録されています。
 何の花がメインに使われているか、ファイル名でわかるようになっているのもありがたいポイントです。


5.便利なwebツール

 この記事を書いている途中でふっと思い出したので、原稿中ブラウザのタブにずっと出しっぱなしだったwebツールもついでに紹介しておきます。

 伝統的な「見る人が美しさを感じる比率」に基づいた寸法を自動的に計算してくれるwebアプリです。どういう形になるのか視覚的に見られるので、レイアウトを考える時の補助ツールとして便利です。
 今までなんとなく配置していたものを、このツールで算出した寸法に合わせて配置すると、どことなく洗練された感じになります。


おわりに

 「学ぶ」と「真似ぶ」の語源は同じであるといいます。
 はじめに述べた通り、私のデザインは知識と技術のつまみ食いと模倣で成り立っています。私が作りたいものを作れるようになるには、それが一番の近道だと思っています。

 デザインをする上で「見る人のことを考える」のはとても重要なのですが、私のデザインは仕事ではなくまず第一に自分のためなので、「自分にとって快いものにする」という基準を設けています。
 良いと思ったものの真似から出発しても、より自分好みにすることで、結果的に全く違うものができます。出来の良し悪しはあるでしょうが、そこから軌道修正を行う足しになるのもまた、何かの真似から得た技術です。
 そういうことを繰り返して、次第に個性とか「らしさ」みたいなものが出来ていくんじゃないかと思います。

 ここまで読んでいただきありがとうございました。この記事が、何かのお役に立てれば幸いです。

【PR】私の制作した同人誌(TRPG「インセイン」の同人シナリオ集)は、オンラインショップ「BOOTH」上で頒布しております。現在は紙媒体は完売し、同レイアウトのPDF版をダウンロード頒布中です。
 下記リンクは、総合的に一番デザインを気に入っているシナリオ集『愚者の葬列』の頒布ページです。冒頭サンプルも無料ダウンロードできますので、もしご興味がございましたら、ぜひお手元でご覧くださいませ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?