本をうるには

売れない時代だが売らなければならない。売れなければ本にならない。確実に売れる戦略が提示できれば本になる。

過去に2冊本を出したが売れていない。毎年出版社から白い封筒で、長方形のペラペラの紙が送られてくる。印税額が書いてある。確定申告に用いるが申告額に変化はない。そのくらい売れていない。売れていないが本になった。売る戦略があったのだ。

一冊目は認定資格講座の教科書だった。資格講座の受講料に書籍が含まれる形で、受講生の数だけ本が売れる仕組みにした。講座の人気とともに本も売れる。出版した2018年当時、受講生は毎月30-50名ほどだったから、少なくとも毎月30-50冊は売れる見込みとして出版が決まった。目論見通りに受講生を受け入れ、本も売れたが長くは続かなかった。あの感染症のせいにしている。

二冊目はそんな感染症が大流行している最中に、オンライン診療の本を出版しないかとお声かけいただいた。時代の潮流に合うからと持ち込まれた企画であり、出版は決定している。だが売れないと思った。オンライン診療の人気のなさは私が一番よく知っている。著者は出版社から直々に本にしないかと言われてしまうくらいオンライン診療のパイオニアなのだから、オンライン診療がどれほどマイナーで人気がないか自覚しているが、彼らは知らないのだ。だが感染症のパンデミックが編集者の背中を押してしまった。私も出版したい欲に負けた。「売れないから企画ごとボツにしましょう」と言えなかった。売ることが唯一の償いだ。売らなければならない。時流には乗っている、話題性はある、あとは中身だ。売りやすさを考え、オンライン診療に励む友人医師を10名誘って共著とした。それぞれの医師がsnsで拡散すれば少しは反応があるだろう。さらに10名の医師が順番にオンラインイベントを開催して手売りする。全て予定通りに行われたが売れていない。出版が決定していたので浮かれていた、売るための戦略が甘かった。

三冊目について。著者が運営するコミュニティのメンバーに月刊誌の連載をお願いしている。毎月メンバーが1記事ずつ書いており、3年以上続いている。50記事ほど溜まったので、一冊にまとめて出版しないかと提案している。だが売れる見込みがない。見込みがないなら出しちゃだめだ。だが出したい。50名の著者が10冊ずつ買って手売りすると500冊。20冊ずつ買って手売りすると1000冊。30冊ずつ。40冊ずつ。

今日も、最後まで読んでいただきありがとうございます。100冊ずつ買って手売りすると5000冊。なんのための出版なのか、いま一度考えよう。おちつけ。


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