チェックリストの魔力。現場と魅せるプロダクト作り
「チェックリストに1個でも抜け漏れがあると、1回でウン百万の損失があるんだよね」
航空業で働く友人のこの一言がとても印象的だった。
1枚の紙に書かれた、たった1つの項目に大きな金脈を感じ、震えた瞬間でもあった。
初めまして。カミナシでPMをやっている後藤といいます。
普段はB2B SaaSのスタートアップで、紙のチェックリストという魔物と闘う日々を過ごしています。
紙に書かれたそれぞれ違う項目達。
現場へ赴き紙のチェックリストと出会う時、自分は現場の業務フローを想像します。
・現場へ行く度に出会うチェックリスト。この魔物は一体何者なのか
・チェックリストというモノは現場に何を魅せたのか
・現場はカミナシのプロダクトに何を夢見るのか
チェックリストがなし得たこと、そしてその裏に抱える大きな課題はなんなのか。
また、プロダクトはその中で何を解決するのかを話していきたいと思います。
人は何故チェックリストを使うのか
チェックリストは資産であり、宝箱です。ただその価値を改めて問われたときに何故チェックしないといけないのか。
そもそも人は何故チェックリストを使い、その価値を感じて様々な企業に使われるものになっているのか。
この本の中でも話されている、内容を掻い摘んで話します。
チェックリストを使う目的として、失敗に対するリスクを下げて標準的な作業を行いたい!という大きなゴールがあると思います。
失敗に対して改めて分解してみると、人が失敗を起こす原因は大きく二つがあります。
1. 無知
・建設できないビル、予知できぬ大雪
2. 無能
・設計ミスで崩落する高層ビル、気象学者が予兆を見落とした大雪
昔は「無知」による失敗が多かったです。ですが今は科学、技術の発展により無知よりか無能がより重要な問題となりつつあります。
そして、たいていの失敗は怠慢のせいで起こるものではなく、必死の努力にかかわらず起こる失敗がほとんどです。
当然のことながら誰もがミスを起こしたくて起こしているわけは無いのです。
知識と経験を生かしつつ、人間の限界を補い失敗を防ぐには1つの仕組みが必要なのです。
チェックリストは、その無能なことによる失敗のリスクを下げて、ベストな選択を選び続ける手助けツールなのです。
いいチェックリストの作り方
いいチェックリストは、ミスの軽減と決断時の思考コストを下げます。
そんなチェックリストを作るに当たって、そのチェックリストが使われるものとなるために、決めなければならないポイントとして大きく2つあります。
a. チェックリストがそもそも有効かどうか
まず、改善したい問題が以下のどの問題に当てはまるのか、これを明確にする必要があります。
上記の図は課題の難易度とチェックリスト複雑度の関連グラフです。
課題の難易度が上がることで、指数関数的にチェックリストの複雑度も増加します。
課題の難易度ごとにとるべき施策も変わってきます。
・課題難易度低 = 誰もがチェックリストを使える/有効な状態のため、変更なし
・課題難易度中 = 専門家同士でチェックリストを使ってコミュニケーション可能。使い人によって、さらに噛み砕く
・課題難易度高 = 話し合い、課題を分割して易しいチェックへ変換する
つまり課題の難易度に応じて、チェックを正しく分割することが求められるのです。
それを、誰もがチェックリストを使える/有効な状態のチェックへどのように落とし込む必要があります。
b. いつチェックを行うか
チェックを行う時、作業の一時停止点を作るのかも大事なポイントです。
つまりチェックリスト自体がどのタイミングに使われるものなのかも考える必要があります。
チェックを行うタイミングとして、
・読むのち行動(READ-DO)
・行動のち確認(DO-CONFIRM)
の2つのタイミングがあります。
・読むのち行動(READ-DO)
・手順通りに実行すること。平常通りの行動を行うための補佐
・(例) 着陸高度セレクタを引き、8000にセットせよ / 高度8000フィートまで降りること
・行動のち確認(DO-CONFIRM)
・知識と経験を元に仕事をする。その行動に抜け漏れが発生していないか
・(例) 建物の外にゴミが溜まっていないこと / 材料の受入の確認を済ませていること
レシピ的に使われるようなチェックリストなのか、それとも抜け漏れを防ぐために使われるチェックリストなのか。
この二つを明確に分離して考える必要があります。
・非常時チェック = 読むのち行動(READ-DO)
・平常時チェック = 行動のち確認(DO-CONFIRM)
のような使い分けをして、作業の特性に合わせたチェックリストを作成することも大事な要素です。
紙によるチェックリストの課題
いいチェックリストの要件を満たしたチェックリストは出来たとしましょう。
ただ、紙によって作成されたチェックリストの場合は、どんな課題があるのでしょうか。
・ファイリングキャビネットをあさって過去の紙を探さないといけない
・実施されていないことに気づくまでに数週間かかることも
・紙が返却されたときには、コーヒーのこぼれや油汚れ
・付箋、付箋、付箋
・テキストで書かれたもので、何をするのか初見ではわかりづらい
・誰が書いたものなのか分からず、結果印鑑等で証拠を残す運用をいれる
紙によってパッと思いつく欠点を出してみました。
並べて見た時に、紙によるチェックリストは作業の前後作業、また実際にチェックを行う以外に思考コストを持っていかれ、本来集中したいことに集中できていない状態となってしまいます。
また、紙によって失われてしまう価値も存在します。
・入力/承認を行う人が固定に。タスクを請負った人の知識の属人化の加速
・形骸化する品質保証。ルーチン化したチェック作業
・チェックリストを導入しているのに起こってしまうミス
どれもチェックリストによって解決したかった課題だと思います。
つまり、紙によって本来手にすることのないマイナスな要因となってしまうのです。
僕らのプロダクトは、このルーチン作業と化したチェックリストにメスを入れます。
プロダクトで魅せる、チェックリストの魔力
たった5~9項目書かれたチェックリスト。
この1つ1つの項目にウン百万の価値と責任を持った大事な種です。
この種をしっかりお客さんと共に育て上げること。これをカミナシは行いたいと思っています。
ルーチンで行われるチェックリストに魔力は宿りません。
ベストなタイミングで使われ、運用に乗って初めてチェックリストの魔力は最大の力を発揮します。
そんなチェックリストを作るために、カミナシのプロダクトは何を意識しているのか。
テキスト情報だけではない
=> 写真やキーボードなど直感的なUIを設置
チェックつける作業ではない
=>違反時に写真を撮らせる運用。読んだ後確認したことの保証
やりっぱなしで放置されない
=> 違反は直感的に、即時で通知を送る
既存の紙では出来なかったシームレスな情報の連携をプロダクトは魅せます。
高齢者/従業員/監督/看護師/整備士/パイロット/ヘルパー/フロント etc...
数えだすとキリのないユーザーの数々。この人が同じ品質/基準/操作を行えることがプロダクトには求められます。
プロダクトがチェックリストを記録させる体験は、その先に繋がる管理者の後工程をも効率化し、さらにその先のプロダクトの未来を魅せます。
つまり、そもそも記録がされないことをなんとしても防ぐ必要があり、全ての記録の入り口こそがこのチェックリストという門なのです。
終わりに
運用が回り出したたった1枚、たった10個に満たないチェックが入ったチェックリストの効果は計りしれないインパクトを持っています。
僕らのお客さんは一つの些細なミスでも、それに伴うリスクが大きい仕事を毎日行っています。
僕らが日々安定したインフラが提供され、安全であり高品質なサービスを受けられているのは、その背景に現場の絶え間ない努力と歴史があります。
ただ、改善の努力を続け、ミスが起こるたびに人のクビを切って責任追求しているのでは一向にミスが減ることはありません。
一流の現場のプロフェッショナルは、何故どんな状況でもミス少なく高品質の仕事を行い、能力を解放させて仕事が出来るのか。
カミナシはこのチェックリストという一つの起点を持って、さらに現場の能力を解放させるプロダクト開発を進めていきたいなと考えています。
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ここまでお読みいただき、ありがとうございました。