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「一瞬の隙を上回る”飢え”」vs.Leceiter(H)[4-2]【24/25PremierLeague 第6節】


試合前展望・キーポイント

 ミッドウィーク開催のカラバオカップvsボルトン戦では、ヌワネリやスケリーらヤンガナ達の活躍もあり5-1の大勝。トロサールのサスペンションもこれにて解除という事で、強敵たちとの連戦が続いた開幕5連戦を抜けホームのレスター戦を迎える事になる。

 アーセナルの台所事情としては、ラヤに負傷の疑いがあるもののこの試合は先発、また冨安が全体トレーニング復帰を果たすも、依然ウーデゴールやティアニー等は離脱中。

 この試合の直前に行われたニューカッスルvsシティは試合終盤にゴードンがPKで追い付きドロー。前節ギリギリで追い付かれたこともあり、この試合勝てばシティに詰め寄ることが出来る。大量得点を期待したい。

キーポイント:マルティネッリに数字を、復調のきっかけに

試合情報

スターティングイレブン

ティンバー×カラフィオーリのフルバック継続 ラヤは欠場予想もスタメン出場

ハイライト

試合内容・所感

不本意な戦いを経ての「飢え」

 昨季プレミア降格となりつつも、チャンピオンシップでは無類の強さを誇り1年で戻ってきたレスター。スタメンを見てみても馴染みのある選手の方が少ないといった印象だが、元スパーズのウィンクスとスキップを中盤に並べ、CFとしてチームを率いるのは勿論ヴァーディだ。

 アーセナルは立ち上がりからポゼッションで終始レスターを圧倒する。10人での戦いを強いられ、あまつさえ2-1とリードし人数不利にも拘らず戦い方を ”消極的” と揶揄された前節。そこからの反動なのか、攻勢をかけ続ける選手達からは "こんなもんじゃない” 、"もっと貪欲に得点を" といった、ある種「飢え」のようなものを感じた。

 レスターの守備システムに触れると、ライスのCH化含め一応の同数プレスはかけてくるもこれは牽制の意味合いが強く、ファーストプレスを突破されると即座に自陣へリトリート、前残りのヴァーディを除き4-5ブロックでゴール前を固める形。

 狙いとしては主に2つ。1つ目は「対面のWGに必ず2人以上でマークする」こと。時には同サイドのCBも寄り縦突破と中央へのカットインを物量でカバーすることで、特にウーデゴールとの連携が無いサカにバックパスを強要させるシーンを何度も作らせていた。2つ目は「サイドチェンジに3センターで対応する」こと。WGからCHトーマスを介し逆サイドへ展開される際に3人が等間隔でペナルティエリア幅を埋めることで、ボックス外からのミドルや意表を突かれるような楔にこれまた人海戦術で対応する、といった目論見だっただろう。

 ただ後ろに人数をかけている分スピーディにカウンター移行出来ないため、アーセナル的には敵陣内で攻守を完結出来ていた。またカラフィオーリ、ライス、トロサール、マルティネッリの左サイド4人によるポジションチェンジがかなり効果的で、よりゴールに近い位置にいることが多かったマルティネッリはG1A1の記録を残す。最近のパフォーマンスに批判的な見方もあった中で、彼のハードワークが報われることになり本当に嬉しい。

 チームの好調理由を語る上で両SBのプレーについても触れておきたい。カラフィオーリは前述のポジションチェンジからWG/IHの位置取りをする中で、力強いドリブルによるパスコースの創出と機を見てハイプレスを敢行し奪いきるアグレッシブさを見せる。また、ティンバーはホワイト顔負けの絶妙なオーバーラップで先制点をアシストを記録、レスターに流れが傾く時間でも冷静なビルドアップと動き直しでチームにリズムを生み出していた。

「クラシックアーセナル」からの脱却

 前半だけでレスターに4枚のカードが出される程に対応を後手後手にさせていたアーセナルだが、立ち上がりにサリバにイエローが出たセットプレーでディフレクトによる不運な失点を喫する。またその15分後には、差を広げ直したい前線がハイプレスで捕まえきれずレスターの疑似カウンターが発動、右SBジャスティンが年に1回見るかどうかレベルの敵ながら見事なボレーシュートを沈め、この試合2得点を決める。

 そこからのアーセナルは前半と打って変わって停滞、押し込んでいた前半と比べU字パスが増え中々ブロックをこじ開けられない。またGKハーマンセンがこの試合13セーブと大覚醒し、多くのビッグチャンスを悉く潰されたのも大きく苦戦した要因に。好調に見えても事故から追いつかれ、相手GKの覚醒からシュートを撃てど入らないというのは数年前のアーセナルを見ているようで、不本意ながらも懐かしい気持ちに。

 交代投入のスターリングも有効な仕掛けが出来ず、ひたすら横パスを繰り返すトーマスのアイディア力に不満が募りフラストレーションだけが溜まっていく中、85分のヌワネリ投入から流れが変わる。交代直後から1,2,3枚と相手選手を剥がし放ったミドルは惜しくもハーマンセンに阻まれたが、ゴールへの執念と試合終盤のプレッシャーを感じさせない落ち着きが高い水準で備わった17歳に選手達も感化されたか、最後の攻勢をかける。

 そして再三のセットプレーが実を結ぶ。94分、メインマンとなるガブリエル含めターゲット達が固まり相手守備陣をスクリーン、そこにファーで待っていたトロサールがダイレクトで放ったシュートが見事ゴールへ吸い込まれ劇的勝ち越し点を挙げる。この形はこの日2度目で、ジョバーセットプレーコーチの引き出しの多さにはつくづく感服する。4点目は最後まで諦めなかった選手達へのご褒美。かつてのアーセナルを彷彿とさせるジェットコースターの試合をやりながらも、ギリギリ追いつき勝ち点3ptを持ち帰ることに。

個人的MOTM:Leandro Trossard

 チーム2点目となるゴールシーンは最近では最早恒例となったあまり喜ばないセレブレーションを見せつつ、自身2得点目となったアディショナルタイム弾はまさにチームを救うゴール。絶対結果残すマンことトロサールはキャプテン不在による押し込んでからの打開力の低下をその決定力で見事カバーしてくれた。

試合総括・今後の展望

 振り返ってみれば保持率は75%、シュート企図数は37-5、コーナー本数も17-0と圧倒した試合。事故に近い形で一瞬の隙を突かれ立て続けに追いつかれてしまったが、最後には勝ち越し勝負強さを見せた。

 印象的だったのはやはり両SBの攻守に渡る完全無欠に近いパフォーマンス、それとフィールドプレイヤー内でぶっちぎりの最年少ながら交代直後からスキルフルなプレーを見せ流れをアーセナルに手繰り寄せたヌワネリあたりだろうか。ヌワネリに関しては怪我のリスク等を考慮するとまだフル出場は厳しいだろうが、vsビッグ6以外の試合ではスタメン入りしてもよいのではないかと思う程素晴らしい活躍であった。それとスターリングは…もう触れないでおこう(笑)。彼のパフォーマンスに関しては筆者はかなり懐疑的だが、まあいつかやってくれるだろう。

 次節は中3日でCLリーグフェーズの第2節、vsPSG戦。ホームとはいえ世界屈指の強豪、難しい試合になることが予想される。キャプテン不在ながらもトレーニング復帰しつつある選手達もいれば、ヌワネリやスケリーらヤンガナ達の台頭もある。決して選手層が薄いわけではないから、上手くターンオーバーを行いながらシーズン序盤の山場を乗り切って欲しい。

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