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【クラブ史上初アウェイ6発勝利】Arsenalマッチレビュー@PL第24節vsWestHam(A)/24.2.11



マッチレポート

試合結果

WHU 0-6 ARS
32' サリバ(ライス)
41' 63' サカ(pen/ウーデゴール)
44' ガブリエル(ライス)
45+2' トロサール(ウーデゴール)
65' ライス(ホワイト)

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ハイライト映像

スターティングイレブン


 ドバイキャンプが明け、クリスタルパレス、ノッティンガムフォレスト、そして今季限りでの退任を発表したクロップリバプールを相手に3連勝を挙げているアーセナル。中断前の失速を取り返す勢いのままに今節はアウェイウェストハム戦に乗り込む。

 アーセナルはアジアカップ帰りの冨安が原因不明のベンチ外。またジェズスに加えジンチェンコ、フォレスト戦でまずまずだったスミスロウまでもベンチ外と若干不穏な空気が漂うセレクションに。対するウェストハムはパケタとアントニオが怪我離脱中であるものの、主力が10人弱も落ちているアーセナルの方が幾分か厳しい台所事情だろう。

試合トピックス

2CFプレスにポジションチェンジのアンサー

 ジェズスがベンチ外、ジョルジーニョもベンチの為選手のやりくりの必要が生まれたアルテタは、リバプール戦CF出場で好調だったハヴァーツをIHに置き代わりにトロサールをCF起用した。

 試合はホームチームの圧の強いプレスが目を引く立ち上がり。ボーウェンとウォード=プラウズが横並びの4-4-2プレスで、両CBは勿論のことチャンスと見ればラヤにまで全速力でプレッシャーをかける。またミドルサードへ侵入されてからのリトリートも中央をタイトに締めつつWGへのチェックも怠らず、総合的に強度が高い守備を展開してきた。

 また攻撃面でもウォード=プラウズやクドゥス等鋭いクロスを持った選手がおりエリア内へボールを放り込まれることもしばしば。タッチライン際のワンツーから左SBエメルソンが抜け出しDF/GK間をグラウンダーパスで狙い、ファーへクドゥスが走りこむシーンも用意されていた形だろう。特に序盤はこうしたウェストハムの勢いに対し苦労していた印象は否めない。

 これに対しアーセナルは、前線がかなり流動的にポジショニングを行うという解答を叩きつけ流れを自分達に引き寄せる。特にスタメン出場となったトロサールの動きは素晴らしく、IH/WG/CHと複数のポジションに顔を出しては球離れの良さを生かしたテンポアップでチームの前進を助ける。加えて臨機応変なポジショニングに長けたハヴァーツも連動、意図的にサイドに流れ、マルティネッリの中央でのプレー関与を促進する活躍を見せる。

 余談だがこうしたポジションチェンジによる打開方法は、苛烈なプレスと中央を締めたブロックを展開してくるウェストハム対策という意味合いの他に、怪我人を考慮したスタメン選出故の側面もあるだろう。比較的頑固なアルテタが選手のやりくりに応じた戦い方を選択したことは、更に怪我人が続出するだろうシーズン終盤戦に向けて良い兆候なのではないだろうか。

 話を試合に戻す。意図的にピッチにカオスを生み出していきマークを剥がせるようになると、ウェストハムの後ろの選手達にはプレスよりリトリートの意識が刷り込まれていく。勿論強度に慣れたアーセナルのボール回しが洗練されていったこともあるだろうが、そうなると先に述べた2CFプレスの次が連動せず組み立てが容易になっていく。アレオラのスーパーセーブに阻まれたトロサールの至近距離ボレーを筆頭に、段々アーセナルの決定機が増えていった。

ホワイト偽SBロール解禁によるビルドの活性化

 ポジションチェンジという方法で試合を比較的優位な状況に押し上げた後、アルテタは第二段階としてホワイトの偽SBロールという手を打つ。

 アーセナルのこれまでの偽SBロールの仕組みについて軽く触れると、基本的に左SBのジンチェンコが行い得意とする動き方で、両SBでのプレーが可能な冨安も左に入った時比較的取るプレースタイルである。逆に、今節も左SB出場だったキヴィオルは本職がCBということもあり偽SBロールは得意としておらず、ジンチェンコの振る舞いを強引にやらせるとあまり良い結果は生まれてこなかった。こうした背景がある中で今節のフルバックの内キヴィオルを低い位置に残し久方ぶりのホワイト列上げが見られた。

 ホワイト偽SBロールの効果が一番に感じられたのが中央から右サイドにかけての押し上げである。まず試合序盤に見られたウーデゴールの列落ちが改善されたことが大きな変化で、ウーデゴールが列落ちすると後ろのボール回しは滑らかになるもののアタッキングサードでの前進が停滞するという課題が解消された。またサリバが3バックの右にスライドすることで得意の持ち運びシーンも作られ、必然的にサカも高い位置でゴールに繋がるプレー関与も増える。

 更に付け加えると前述のポジションチェンジでトロサールやハヴァーツ、マルティネッリといった前線のメンバーも規律の中で自由に動き回る。こうなるとウェストハムからすると最早手の付けられない状態に。各々がマークから解き放たれ積極的なビルドアップ参加にシュートチャンスの量産と状況はどんどん好転していき、30分頃には完全にアーセナルのペースとなっていた。

クラブ史上初アウェイ6得点とヌワネリ君出場

 ゴールに至る道筋が整備されたアーセナルはセットプレーでの得点を皮切りに様々な角度から得点を生み出す。

 32分、古巣対戦のライスのCKからサリバが均衡を破るヘディング弾で先制。GKとの競り合いでファールをとられがちなホワイトだが今回は上手く妨害し、サリバがフリーで打てる状況を作り出していた。

 続いて41分、中央低い位置でボールを持ったトロサールの超絶高精度のフィードに一発で抜け出したサカがアレオラのイエローを誘い、獲得したPKをアレオラの逆方向に打ち抜いて追加点を挙げる。

 更に44分、ライスの放った短いFKにニアで準備していたガブリエルが強烈なヘディングで叩きつけ3点目。ここまでボーウェンやジョンソン、クドゥスらを制圧し圧倒的なパフォーマンスを見せていた両CBが得点という形でもチームに大きく貢献した。

 ここまででアウェイウェストハム戦で前半3得点は上出来と後半へ意識が向けられていた47分、中央狭いエリアでトロサールが細かなタッチで一瞬マークが外れたところに右足でコントロールショット、飛んだアレオラの手から逃げるようにボールはゴール右上隅へ吸い込まれまさかの4点目を獲得。3点目のPK創出に続き彼の高いキック精度が生かされたゴールとなった。

 大量得点で完全にノッたアーセナルは後半も継続してチャンスを作る。ウェストハムはセンターラインのテコ入れを兼ねて移籍したばかりのカルヴィンフィリップスと元アーセナルのマヴロパノスを投入する。

 しかしアーセナルは攻撃の手を緩めない。63分、ウーデゴールの鋭い楔をライン間に一瞬生まれた緩みを狙ったサカが受け取り反転、素早いカットインからアレオラが全く動けない強烈なシュートで5点目を挙げる。

 その僅か2分後の65分、深い位置を取ったホワイトの折り返しをトロサールとウーデゴールがお見合いしてしまうものの、後ろから走りこんできたライスがダイレクトで合わせサイドネットに突き刺さるミドルで驚きの6点目をゲット。勿論ノーセレブレーションだったが、彼の手はアーセナルのエンブレムを握りしめていた。

 流石に6点のリードともなると主力選手の温存にフェーズは移り変わり、エルネニー、ネルソン、エンケティアを入れ大量得点の功労者を休ませる。そして77分、セドリックに加え、ベンチに座っていた選手達がアルテタに投入するよう進言していたヌワネリ君が交代でピッチに立つことに。

 ヌワネリ君とほぼ同い年にトップチームデビューを果たしたサカがワールドクラスの選手になるまでをリアルタイムで見てきたファンの一人として、彼に用意された10分以上の出番というのは非常に感慨深いものである。左手の使い方に若干癖のある可愛らしさを残しつつ、相手の逆を突く重心の低いドリブルにキーパスの意欲も高め、守備もサボらないと16歳の選手としては上出来過ぎるパフォーマンスだった。彼のアーセナルでの未来が輝かしいものになることを願って止まない。


あとがき

 大量得点&CSに加えヌワネリ君のプレーが見られたりと文句なしの試合運びをしたアーセナルはこれで中断明け4戦4勝。冬の補強0が確定した2月頭には拭い切れない不安はあったものの、ドバイキャンプで復調のきっかけを掴んだか素晴らしい結果を残している。

 惜しむべくはこういった得点のチャンスが多分にあった試合でスミスロウが居なかったことだろうか。出れば毎回そこそこの活躍を見せている彼にあと足りないのはゴール関与である。チャンスの度に怪我で居ないという不運もあるが、出場機会の損失は本人が一番悔やんでいるだろう。一刻も早くコンディションを戻しトップチームで再び輝きを放って欲しい。

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