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【まずまずのスタートダッシュ】Arsenalマッチレビュー@PL第1節vsNottingham Forest(H)/23.08.12



試合前トピックス

・ティアニー&ロブ選出外の噂
・加入間近ダビド・ラヤは獲得発表&スカッド入りするか
・ジェズスの離脱→CFはハヴァーツ?トロサール?エディ?
・ジンチェンコorティンバー×ホワイトor冨安という豊富な選択肢
・昨季逃した優勝に向け、大事な初戦で良いスタートを!


マッチレポート

試合結果

ARS 2-1 NFO
26'エンケティア(マルティネッリ)
32'サカ(サリバ)
82'アウォニイ(エランガ)

https://www.premierleague.com

ハイライト映像

スターティングイレブン


試合トピックス

大混乱のスタメン発表と臨機応変な可変

 コンディション低下や怪我人多発、はたまた優勝争いのプレッシャーか、様々な要因が絡み合って終盤の大失速から優勝を逃した昨季。ベストメンバーに近い選出はプレー/メンタル両面で大切なことだということを、2位という嬉しくも後悔の残る最終順位で実感した。

 そんなわけで23/24シーズンの開幕戦。相手は昨季奇しくもアーセナル戦で残留を決めたノッティンガムフォレスト。格下ではあるものの良いスタートを切るために奇を衒わず順当に昨季の4-3-3メンバー選出になると思われていた。

 が、蓋を開けてみれば最終ラインにトーマスが名を連ねることに。サリバと不動のコンビを組んでいたガブリエルはまさかのベンチ。となると怪我離脱中のジンチェンコを除きファーストチョイスになるのは冨安であるが、なんと彼も同じくベンチ。ティアニーとロブに至ってはベンチ外であった。

 フォーメーション的にはRSBトーマス×LSBティンバーの両偽SBロールか、はたまた3CB×2CH(トーマス+ライス)か。保持局面が多くなることを見越してCBコンビの内持ち上がりに一日の長があるサリバを残した説など様々な想像が出来た。試合前からまさに大混乱で、開幕戦に変化球を投げ込んできたアルテタの思惑が気になるところであった。ちなみにティアニーは来週にもレアル・ソシエダ移籍の可能性があるということでベンチ外であったが…。

 ともあれいざ試合が始まってみると、なんのことはない普通にトーマス右SBライスアンカーの4-3-3。であったのだが、時間と共にトーマスが徐々に列上げアンカー化→IHライス+ウーデゴール×OMFハヴァーツという布陣に。またライスが絶妙に縦関係を調整することでトーマスと2CHを組むこともあり、4-3-3⇔3-1-5-1⇔3-2-4-1といったように多くの可変を見せた。

 このスタメン選出・可変の理由としては、アルテタの頭の中に、
①フォレストのような引いて守ってくる相手に対して配置のローテーションによる混乱でブロック破壊を行いたい。
②ベストメンバーが何人か調子を落とし失速した昨季を反面教師とし、今季はメンバーのローテーションを積極的に施したい。
 という2つの思惑があったのだと考えられる。①は昨季見せた4-3-3⇔3-2-5or3-1-6可変に更なるバリエーションをもたらすもの。②に関しては、今回はガブリエルを外したが、これがコンディション面か戦術的理由かはともかく、核となる選手が不在でもクオリティを落とさずプレーしたい、と。それは現在怪我によって離脱中のジンチェンコやジェズスにも同じことが言える。

 そしてこれらの思惑が現れた今節でアルテタは一定の手応えを得られただろう。基本は保持の構えを崩さず選手の配置において手を変え品を変えといったように細かく修正させ、多彩な攻め手でフォレストの最終ラインをコンスタントに脅かした。またボールを奪われても即時奪回の姿勢をチーム全体で見せて奪い再度攻撃を始める様は見事。フォレストの最終ライン5枚に対し、CF+2WG+OMF+2IHと6枚で常時数的優位を取れていたことも狙い通りだっただろう。他にもトーマスが中へ入るのに連動してホワイトがRCBながらオーバーラップを見せサカを自由にさせた事など、大小さまざまなメリットがあった。

80点の新加入選手達

 PLデビューとなった新加入選手3名。デクラン・ライス、カイ・ハヴァーツ、ユリアン・ティンバー。スタンドの大歓声に迎えられ満を持して出場した彼らはプレッシャーに屈することなく高いパフォーマンスを見せてくれた。

 まずはライス。試合開始直後の自陣での好守備から始まり、フィジカルと献身性、ストロークの長い足を生かしたボールハントを試合終了間際まで何度も成功させた。更に時間経過と共に視野の広さを生かした列下げ→ビルドアップ貢献と、IHらしく深い位置へ侵入するランニングを両立させる鬼の働きっぷりでグーナーの心を鷲掴みした。ターナーの好セーブに阻まれたものの惜しいミドルも3本放ち、得点関与もそう遠くないうちに期待できる全方面で活躍した選手であった。

 次にティンバー。彼も前半終了間際の接触+後半開始直後の自損で右膝裏を痛め交代するまで光ったものを見せた。最終ライン全てプレー可能という冨安に負けず劣らずのユーティリティ性で、高いハント力を生かしたカウンター阻止役と攻撃のスイッチ役をこなした。いくつかパスずれからフォレストへボールが渡ってしまうことがあったり、ハント意識の高さが仇となりスライディングからカードを貰ってしまったが、代わって入った冨安に攻撃面で少々物足りなさを感じるくらいティンバーの存在感は大きかった。

 最後にハヴァーツ。ハヴァーツに関しては「まずまずだった」という評価を試合終了後いくつか見かけたが、個人的に全くそんなことはないように思う。シュート企図に裏抜け、前線の選手達とのリンクプレーにダイナミックなランニングでフォレストの陣形を切り崩し、試合終盤のCFコンバートに伴ってターゲットマンまでこなすなど、ライスと同様に圧倒的なタスク量を抱えながらもパンクすることなく遂行して見せた。個人的に、試合終了間際のフォレストの熱量をうまくいなして時間稼ぎする「柔の強さ」を見せてくれたことも良かった。そんなハヴァーツを通して、ポリバレント性の高い選手をアルテタが欲する理由がよく分かる良いパフォーマンスであった。

 と、三者三様に褒めちぎったが、100点ではなく「80点」という上から目線な評価を付けたのには勿論理由がある。それはライスの場合だと特に序盤マルティネッリへのサポートが少々不足していたことであったり、ティンバーはピーキーなパスの改善、ハヴァーツは前線の選手ならば当然求められる得点関与という目に見える働きである。が、デビュー戦から100点を叩き出すというのもまぁ無理な話で、高パフォーマンスを見せた3人の実力ならばもっと素晴らしい働きをしてくれるだろう、という期待込みの「80点」にさせてもらった。

結局素晴らしい現有戦力

 と、2つ目のトピックで新加入選手について語ったが、そんな彼らを食ってしまう程の活躍を既存選手たちが見せてくれたことが個人的にとても嬉しかった。

 まずは試合を通して存在感抜群だったチームの心臓と旗手であるトーマスとウーデゴール。アンカーとして世界3本の指に入ると断言できるトーマスは、今では一時期去就が取り沙汰されていたとは考えられない程に素晴らしかった。なにせ彼が一人中盤に鎮座しているおかげで攻守に絶大な安定感をもたらしてくれ、欠けてはならない選手だと改めて分からされた。また華麗さと泥臭さを併せ持つウーデゴールは、予測不能なボールタッチで保持/非保持の両局面でチームの手綱を握っていた。

 マルティネッリとサカの両翼も脱帽もの。マルティネッリは2人置き去りのルーレットでエディの先制点をお膳立てし、猛烈なプレスバックと強烈な縦突破を駆使し攻守において「剛の強さ」を見せた。神童サカに至ってはコンタクトを受けてながらにも関わらず鉄板ゾーンから左足一閃で追加点をゲット。早い時間に対面のアイナにカードを出させ、スターボーイなんていう枠に最早収まる器ではない世界トップクラスのWGたる才能を披露した。

 他にもサリバはスピード勝負で絶対的安心感を見せ適切なコース取りでカウンターの芽を摘んでいたし、エディも14番らしい貪欲なゴールへの意識からアーセナル今季初ゴールを獲得。多くの選手からポジティブな要素を感じ取れた。

 特に今夏は例年に比べてビッグネームの獲得が相次ぎ、ついつい話題が持っていかれそうであったが、そんな彼らに活躍場所を奪われるどころかむしろ引っ張っていくようなパフォーマンスをアーセナルの先輩選手から感じられたことは、チーム内での健全な競争という意味においてもとても大きいものだろう。次節以降も互いに高めあって練習に励み試合に臨んでくれることを願うばかりである。

その他雑感

・キックオフ前の円陣でノースロンドンフォーエバーを歌うライスが好き
・ターナー移籍後早速のスタメン、ティンバー負傷時アーセナルの選手たちと話すシーンが温かくて良かった
・マルティネッリやハヴァーツが右サイドへのダイアゴナルランを挑戦
・攻守においてすんなり溶け込んでいた冨安、ファーストタッチでシュートを放ち、ワンツーでエリア内へ侵入するシーンも
・70分過ぎの投入という短い出場時間でも攻守に存在感のトロサール
・エランガの爆速ロングカウンターは見事
・新ルールによりCSに続きAT7分の長丁場
・最終的にはクリス・ウッド率いる長身FWvs4CB
・マルキーニョス、ナントへ移籍発表&No.10着用


ゲーム総評

 終盤に1点を返さればたつく時間は少なからずあったものの、各種スタッツでフォレストに大差を付け、試合を支配して無事に勝利。勝ち点3ptスタートを無事成功させ、ひとまずは監督、選手たちに心からお疲れさまと言いたい。

 それと同時に、選手達にはもっと無慈悲になることを要求したい。試合前日シティがバーンリーと戦った際は、2点奪ったところから3点目も獲得していた。2点奪っても1点を返されるようなパフォーマンスを続けていると、今節のようなミッドテーブル相手の試合だとまだいいかもしれないが、対ビッグ6、それとニューカッスルやブライトン、アストンヴィラのような難敵にいつ足元をすくわれるかわからない。また途中交代から入るベンチ組にもチームの勢いを加速させるような働きを同じく求めたい。そうして試合の頭から最後まで一切手を緩めることなく、圧倒的な力で相手の戦意を削ぎねじ伏せてほしい。そうなれば一過性ではなく真の意味での強豪へと進化でき、最終的にリーグチャンピオンの座を目指せると思う。

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