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【中断前の不調を断ち切る】Arsenalマッチレビュー@PL第21節vsCrystalPalace(H)/24.1.20



試合前トピックス

・代表ウィーク中断明け、冨安→アジアカップ、エルネニー→AFCONで離脱


マッチレポート

試合結果

ARS 5-0 CRY
11' ガブリエル(ライス)
37' ヘンダーソン(og)
59' トロサール(ジェズス)
90+4' 90+5' マルティネッリ(エンケティア/ジョルジーニョ)

https://www.premierleague.com

ハイライト映像

スターティングイレブン


 年末の不甲斐ないフラム戦を経て、年始のFA杯4回戦リバプール戦でも最近の致命的な決定力不足により敗退したアーセナル。シュートに至る流れは完璧に近く、リバプール相手にビルドアップでは何枚も上手なサッカーを展開出来ていただけに非常に悔しさの残る試合となった。

 この敗戦を受けて公式戦では4連敗中。クリスマスを迎えた頃は単独首位で昨季からの更なる進化を感じられていたのに気づけば4位へ後退である。不幸中の幸いであったのが代表ウィークに伴う12日間のリーグ中断で開かれたドバイキャンプ。監督選手達は心身共にリフレッシュを取れた事だろう。これ以上トップから離されない為にも、今度こそ新年の門出となる勝利を挙げて欲しいところだ。

 リーグ再開後の初戦でアルテタが選んだのはいつもの11人に加え左WGにトロサール。マルティネッリに特段問題があったわけではないだろうが、そうなるとキャンプ中のトロサールのコンディションが良かったのか、期待が高まる。個人的には、リバプール戦で負けたものの攻守にわたり素晴らしい活躍を見せていたラムズデールが継続してベンチだったのが気になるポイントではあった。

 対するクリスタルパレスはここ最近採用している3バックのフォーメーション。右CBには今夏バイエルンから完全移籍してきた若きDFリチャーズが入ることに。ロイ・ホジソン御大はまだまだ現役である。

試合トピックス

プレミア最多得点DFガブリエルの無双と注目株エゼ

 数週間前のアーセナルならば安心して見ていられたであろうホームでのパレス戦。しかしここ最近の停滞から鑑みて、今節も苦戦の予感がどこか漂っていた。

 だが試合が始まってみるとそんな不安はどこへやら、立ち上がりからアーセナルが自信をもってボールを保持する。特に効いていたのが左SBジンチェンコ。彼は自慢のサッカーIQと技術力に対し守備力が懸念点でよく議論の対象に挙げられるが、今節は素晴らしい活躍を見せていた。パレスのプレスがサイドに傾くのを見計らって手薄な中央でパサーの出口になり、引き取ってからも小気味のいいキックを長短使い分け、アタッキングサードでの決定機演出まで担っていた。

 アーセナルペースで始まった試合は、11分という比較的早い時間帯にガブリエルがセットプレーから先制点を挙げる。次いで37分、こちらはGKヘンダーソンのオウンゴールと処理されたが追加点も彼のCKから生まれた。1点目、リチャーズのマークを更に超えた高打点のヘディング弾は勿論見事だったが、一度セットプレーから得点した選手は次以降警戒される中で2点目もねじ込んだのは流石というほかない。これでガブリエルは自身のPLデビュー以来、プレミア所属DFの得点ランキングでは単独の首位記録となった。

 セットプレーの観点から見ると、1、2点目どちらもガブリエルへピンポイントで配給されたクロスも素晴らしかった。ファーで仕留めるという共通の狙いのもと、ライスとサカ共にドライブ性の伸びる球や守備者と真っ向から競り合うふんわりした球など異なるボールを使い分けていたのが良かった。最近のアーセナルはセットピースの強度に難ありな印象が強かったが、ドバイキャンプで練習を重ねたか、ニコラス・ジョヴァーセットプレーコーチの取り組みが実った結果だろう。

 アーセナルの主役となったのがガブリエルならば、パレスの主役であったのは間違いなくエゼ。彼はキレのあるドリブルにゴール方向へ巻く鋭いクロス、強烈なミドルシュートとオンザボールでの貢献がすさまじかった。守備力に定評ありのライスを含むアーセナルの選手3人がエゼを取り囲んだ場面では、彼らのプレスを搔い潜りそのままボックス付近まで侵入してくるなどその圧倒的な個を見せつけた。彼と連動し崩してくる選手がおらず直接的にゴールを脅かされるシーンは少なかったが、マテタのポストから始まる波状攻撃が成功していたのならば、失点の可能性は十分にあっただろう。

足りなかったオープンプレーからのゴール

 2点のリードを確立したが、アーセナルが圧倒的かと言われるとそういう訳ではない中盤戦。パレスの比較的高いプレスに対し、ショートパスの繋ぎでファーストプレスの突破は出来るが、ジェズスがよくオフサイドに引っかかっていたようにハイラインの攻略には少しばかり手を焼いていた印象。チャンスの割にフィニッシュに問題ありと直近の二の舞に陥りかけていた。

 だからこそ後半59分の3点目は試合を決定づける重要なゴールであった。ラヤの強烈で精密なスローイングをジェズスが運び、絶妙なラストパスを受けたトロサールが最終DFの逆を突く素晴らしいファーストタッチから冷静に放ったシュートはチームに3点目をもたらす。シンプルに完結させたロングカウンターは、先程触れたエゼの奮闘を筆頭に諦めてはいなかったパレスの勢いを殺す大事な得点となった。

 更に付け加えるなら、前半に挙げた2得点がセットプレーからとリーグ中断前の決定力不足を解消する答えではなかった中で、オープンプレーから得点を挙げられたというのも良かった。繋ぐフェーズは良く出来ているのだから、あとは機を見て飛び出したりワンタッチでのシンプルなプレーを意識すればコンスタントに点を重ねることもそう難しくはない。

結果を残したインパクター達

 先に言っておくがこれはあくまでアーセナルが3点を取り既にゲームが決まっていたという前提ありきの話である。

 3点目を取った後アルテタにしては珍しく69分という早いタイミングで交代。ベンチスタートとなったマルティネッリ、そして全グーナー待望スミスロウの投入が行われる。次いで76分にはジョルジーニョ、81分にキヴィオルとエンケティアで残されたカードもしっかりと使い切ることに。

 スミスロウに関してはそこそこ良かったのではないだろうか。持ち前のワンタッチパスワークは随所に見られたし、球離れの良さがパレス側からするとプレスに行くかどうかの判断を迷わせ、厄介な存在になっていたように思う。得点関与こそ見られなかったが、この調子なら次節以降も継続して出場機会を得られそうだし、シーズン後半の優勝争いにおいて大きな助けとなってくれること間違いなしである。

 そしてマルティネッリは本当に素晴らしい。私は生でプレーを見たことはないが、往年のアンリのようなファーへ流し込むシュートを2分間の間に立て続けに2発放ち、あっという間にチームを5-0大勝に導いた。エンケティアとジョルジーニョのアシストも、マルティネッリのスピードを殺さずマークが離れた瞬間を狙った精度高いもので見事だった。


ゲーム総評

 中断前の不調を引きずるのではと一抹の不安を抱えながら迎えた今節であったが結果は5発快勝。セットプレー、ロングカウンター、シンプルな抜け出しとゴールは多彩で、遅攻から密集地帯を崩すようなアイデアこそ見られなかったものの概ね満足のいく試合だったのではないだろうか。

 スミスロウ復活の兆しが見られたのが個人的なポイント。二度の手術を経てコンディションが上がり切らずアーセナルでの去就が定期的に取り沙汰されているが、アカデミー卒の10番は一貫してアーセナル残留を望んでいる。ファンとしてはもう応援せざるを得ない。とにかくこれからも頑張って欲しい。

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