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【勝ち切る事の重要性】Arsenalマッチレビュー@PL第15節vsLutonTown(A)/23.12.6



試合前トピックス

・前節負傷交代の絶好調冨安は軽傷


マッチレポート

試合結果

LUT 3-4 ARS
20' マルティネッリ(サカ)
25' オショ(ダウティ)
45' ジェズス(ホワイト)
49' アデバヨ(ダウティ)
57' バークリー(タウンゼン)
60' ハヴァーツ(ジェズス)
90+7' ライス(ウーデゴール)

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スターティングイレブン


試合トピックス

有効活用したい非対称可変のアキレス腱

 今季初めてプレミアリーグへの昇格を決めたルートンタウンは昇格組ながらここまでスパーズに0-1と肉薄、リバプール相手に1-1ドローへ持ち込むなど上位陣にもしっかり食らいつく結果を残している。前線のアデバヨが脅威なのは勿論、バークリーやタウンゼンといったプレミアファンは見覚えのあるメンツを擁し曲者といった印象が強い。

 そんな彼らのホームへ乗り込むアーセナルは冨安が離脱、ホワイトが右SBへ入り、左SBにはキヴィオルが久々の先発出場を果たす。サカにとっては今節がアーセナル公式戦出場200試合目のメモリアルマッチに。

 この試合において個人的にポイントとなった点を先に挙げておく。それは「ルートンタウンの左右非対称可変プレス」と「アーセナルの強情さ」である。

 ルートンタウンはフォーメーション上は5-4-1(3-4-2-1)であるが、非保持時はまずCFアデバヨがボールホルダー側のCBにプレッシャーをかけ、右SHに入ったタウンゼンがほぼ同じ高さまで上がりガブリエルや低い位置に留まるキヴィオルへプレスをかける左右非対称な5-3-2という形がメインの守備陣形。勿論左SHブラウンが留まるホワイトへ行くシーンもあったが基本は右上がり。またタウンゼンの上がりに合わせ右WBカボレが前スライドしコンパクトさを保つなど、地の利を生かしたタイトな前プレスをかけることを至上命題としていた。

 アーセナルはこの出方に対し序盤こそ上手く裏を突くシーンがあった。タウンゼンのプレスを受けるガブリエルが彼の背後に位置取るキヴィオルへ預けて剥がしたり、もっとシンプルに大外を裏抜けするマルティネッリへロングボール一発で深さを取るなどして相手の前傾守備を逆手に取る事に成功。だが試合が落ち着くに従ってルートンタウン側のプレスが整備されていき、こういった打開方法は鳴りを潜めアーセナルはしばらく苦戦することとなる。

 そうは言うものの、後方ビルドはウーデゴールが下がったり時にはマルティネッリすら受け取りに来ることで2-3プレス隊を散発的に突破するシーンがあったが、属人的でかつ偶発的な要因に拠る部分が大きくあまり光明が見えない。こうなると今度はルートンタウンの攻撃をリトリートでいなし整備される前にカウンターに活路を見出したいところだが、彼らは保持局面でも用意してきた武器を披露する。

 フォーメーション的には先程のカボレがほとんど右WGのように振る舞い、最終ラインが前プレス時と似たように右スライド、バークリーがアンカー役を務める4-3-3の形。特にこのバークリーがアーセナルにとっては嫌らしい活躍を見せ、幾度もジェズスのプレスをいなしては、散らして良し・持ち運んで良し・被ファールで流れをリセットしても良しと臨機応変な対応でこちらの奪いきりたい意欲を上手くいなしてくる。彼は試合を通してチームの中心となり厄介な選手となっていた。

 ホームサポーター達の大きな歓声も決して見過ごすことが出来ない。ケニルワース・ロードスタジアムはピッチ周りが非常にコンパクトで観客席が近く、ホームチームを応援する声、アウェイチームへの野次やブーイングがいつもより近くに感じるような作りになっている。また最近プレミアリーグの審判を務めるようになったとかいうSamuel Barrott主審のレフェリングもかなり酷かった。流石プレミアの劣悪審判団が輩出しただけはあるね。ホームの雰囲気に飲まれ危ないプレーを見逃し無駄に高いプライドで判定の是非を問うこと放棄。本当にFAという腐敗を極めた連盟は素晴らしいね。ここに関してもサポーター達が上手く雰囲気作りを行ったと言うほかないが、とにかくルートンタウンの整備された攻守両局面と会場の雰囲気に飲まれていたアーセナルはまともにチャンスを作れず苦しんだ。

 ホーム少々優勢の流れはアーセナルのチャンスシーンの少なさに表れるも、20分、カミンスキがタッチに逃げたところからジェズスが素早いスローインでリスタートし、サカ→マルティネッリと最短ルートでの先制点を挙げる。跳ね返すことに成功したと感じるのも束の間、その直後25分にはCKからオショが頭で決め試合を振り出しに。ルーズボールはルートン側へ流れ、こちらが能動的に決定機を生み出すことは難しい状況が続き、甘い繋ぎをカットしてマルティネッリ、ウーデゴールと連続してシュートを撃つシーンもあれどカミンスキの壁も決して低くはなかった。

 こうしたチャンスを作れないアーセナルの不調における一番の問題点は、先に述べた「アーセナルの強情さ」であると考える。タウンゼンの後方スペースを使ったり、シンプルな裏抜けで陣形を間延びさせてほしかったが、ウーデゴールやライスはダブルチェックの付いた幅を取るサカに預けたり崩し切る前の中央へ楔を差す事を狙い続ける。ルートンの守備戦略の土俵に乗っかったまま戦い続け歯痒い試合展開が続いた。

ハードでオープンでスクランブルな中盤戦

 それでもルートン側がずっと順風満帆だったというとそういう訳ではない。守備で無理が効かない場面がありブラウンやバークリーといったチームの核となる選手にアフターのイエローが提示された所からは、彼らの献身的なマンマーク色の強い守備は1人でもズレると途端に半壊する危うさを孕んでいると感じる。そしてアーセナルはまたしても数少ないチャンスを前半終了間際シンプルに決め切って見せる。45分、ライスの持ち運びからホワイト、一度サカへ戻しつつ裏抜けでリターンを受け、ふんわりと上げたクロスにジェズスが飛び込み勝ち越しを果たす。チャンスに顔を出すジェズスは勿論、ニアへ走り込みマークを引き付けたハヴァーツのサポートランもお見事である。

 こうして、ピッチ&フィジカルコンタクト両面で圧迫感のあるルートンタウンに苦しめられつつも、少ないチャンスをきちんとものにしリードを確立して前半を折り返したアーセナル。ハーフタイムを挟んで調整を行い、後半は幾分か試合を支配したいといったところか。

 だが後半頭のパフォーマンスはお世辞にも良いとは言えなかった。いや、むしろ前半以上に受け身のやられ具合で、次々に繰り出される波状攻撃を受け止めるのに必死な入り。49分、またもCKから今度はアデバヨが処理に来たラヤの上から叩きつけるヘディング弾で再度追いつかれ、57分には左に流れポケット近くを取ったバークリーがファーを打ち抜くグラウンダーシュートであっという間に逆転されてしまう。

 しかし転んでもただでは起きなかったのがハヴァーツ。逆転直後の60分、サカのクリアを上手く落としたジェズスのボールにハヴァーツがカミンスキの飛び出しをかわしながらタップインでゴール。2点目のサポートランと同様かっちりCFポジションに抜け出す得点感覚がここ最近継続しており、その他守備貢献等も合わせどんどん存在感を増してきていて、個人的にはMOTM級の活躍。ルートンは逆転直後ブラウン-アデバヨ-タウンゼンの前線を入れ替え逃げ切る体制を整えようとしていた中で、そのカードを切ってくる前に追いつくことに成功したのはとても大きかった。

 非常にハードな強度の中、オープンなボールが増えトランジションが頻発し、ゴール前での対応がスクランブルになり突如として両陣営チャンスが生まれる中盤戦。集中力を保ち続けることが何よりも大切な実にプレミアらしい試合だなと、グーナーとしてのハラハラ感とはまた別に他人事のように感じる試合運びとなった。

交代による右サイドの解放とまたしても勝負を決めるイングランド人史上最高額の男

 最早ドローでも御の字のルートンタウンが少々ペースを抑えたのも相まって徐々に押し込む時間帯が増える終盤戦。それでもゴールには遠いアーセナルだが、転機となったのが64分のジンチェンコとトロサールの投入である。

 彼らの投入により生まれた一番の成果が「右サイドの解放」である。具体的には、キヴィオルがうまくこなせなかったタウンゼンを揺さぶる動きをジンチェンコが裏取りや偽SBロールを行い注目を集めてくれたことによって自然とマークが集まった結果、逆に右サイドのハーフレーン周辺が空くようになり、ウーデゴール-サカ-ホワイトのお馴染み3人衆によるライン間の攻略が円滑になった事が挙げられる。また、トロサールもジンチェンコ程の貢献度ではないがタメを作る動きとサイドチェンジをセットにして時間をかけ過ぎず完結してくれる。あともっとシンプルに、ジンチェンコのパス精度が高いおかげで「さっきまでそこ通されなかったのに!」とプレスを無力化する楔で次以降のプレス意欲を減らしてくれたのも大きかった。

 そんな彼らのブーストを背に受けアーセナルは試合終了に向けて猛攻をかけていく。幸いにも彼らのリトリート守備は堅守という程ではなく最終ラインを攻略する糸口がない訳ではなかった。それでもクロスは跳ね返され続け、ここまで我慢してきたルートンタウン寄りの判定の数々がPKの複数回見逃しと更に牙を剥いてくる。

 そんなこんなでAT6分をも過ぎ、もうダメかと諦めかけていた97分。ジンチェンコのパスをダイレクトでエリアへ放り込んだウーデゴールのクロスに、前半ヘッドで先制点を決めてきたオショを相手にライスが競り合いで勝ってヘッドで合わせ、ファーへ流れたボールはカミンスキの手から逃げるようにゴールへ。正真正銘ラストワンプレーでの劇的弾。先日のマンチェスターユナイテッド戦を彷彿とさせるライスの逆転弾で手元からこぼれかけていた勝ち点3ptを強引に手繰り寄せ、90分間苦しめ続けられていたケニルワース・ロードスタジアムでドラマチックな勝利を挙げた。


ゲーム総評

 アウェイとはいえ初の昇格組相手で過密日程の中でもイージーな試合になることが予想されたが、いざ終わってみるとセットプレーが強力で十分歯ごたえのあるチームだったなと感じる。先制するものの2度も追いつかれ、逆転までされた中で逆境を跳ね返して勝利できた事は、チームにとっても、3、4点目を決めた新加入のハヴァーツやライスにとっても更なる自信に繋がったのは間違いない。最後の最後まで諦めず本当によくやってくれた。

 また、2、3失点目のラヤの対応については人によって評価が分かれるところ。個人的にわざわざ非難される程ではないと思うが、未だ尽きることのないGK論争の新たな火種となってしまった。双方にとって納得感のある落としどころを一刻も早く見つけたいところ。

 また試合後のアルテタのコメントにて、冨安はしばらく離脱するといった旨の内容があった。弱点である攻撃参加すらも今や完全に克服し、文字通りスタメン級の活躍を見せていた中でまたも長期離脱と非常に悔やまれるし本人が一番悔しいだろう。こちらも一刻も早く解決しまたフルコンディションの冨安が見たいものだ。

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