見出し画像

【今季ワーストゲーム】Arsenalマッチレビュー@PL第20節vsFulham(A)/23.12.31



試合前トピックス

・冨安早くもフルトレーニング復帰


マッチレポート

試合結果

FUL 2-1 ARS
5' サカ
29' ヒメネス(ケイニー)
59' リード

https://www.premierleague.com

ハイライト映像

スターティングイレブン


試合トピックス

上々の入りからフラムの土俵へ

 日本時間で12月31日の23:00キックオフ、後半に差し掛かるあたりに新年を迎えアニバーサリー的な意味合いが強い今節のフラム戦。無事勝利し2023年の締めくくり&2024年の門出を祝って欲しい所に、予定よりも早い冨安のベンチ復帰という追い風も吹いたスタメン発表。ふくらはぎに軽度のハリが見られたジンチェンコが欠場となってしまったものの、便利屋から今や欠かせない主力となった冨安が帰ってきたのはとても大きい。

 試合はお互いにボールを持つ展開からスタートする。アーセナルは後方からのショートパス繋ぎを苦も無く行えており、CH脇で受け反転する選手を作り出してからサイドへ散らす。フラムは中央でタメを作りつつ早々に左へ振り、ウィリアンを中心にオーバー/アンダーラップする選手と縦に素早い攻撃を敢行。共にコンスタントに敵陣へ侵入する立ち上がりとなった。

 先に得点を獲得したのはアウェイアーセナル。5分という早い時間帯に、キャッチしたラヤの素晴らしいリスタートからマルティネッリが左大外を単独で押し上げカットインしてシュート。これはレノに阻まれるもゴールへのランを残していたサカがオフサイドギリギリでこぼれを押し込み先制点を挙げる。

 フラムも悪くない立ち上がりだったが開始早々の得点を挙げたことにより試合はアーセナルへと傾くと思われた。だが彼らは失点に怯むことなく、むしろ退路を断たれた事から自分達の攻撃プランを徹底して遂行してきた。

 前述の通りフラムは左で作るのがメイン。中央でマークを引き付け大外でウィリアンがフリーになった所に預けたり、またウィリアン自身がホワイトの外を走り込み1vs1からエリア内へじわじわ侵入していく動きも出来る。左SBロビンソンや左CHケイニーのサポートも良く、ウィリアンの立ち位置とは異なるレーンに立つことで出し手/受け手どちらの振る舞いもできる為、特に疲労が見られるホワイトは対応に苦戦していた。

 この得意の形から29分、中央の混戦状態から最終的にフラムボールとなりウィリアンがホワイトが出払った左大外を突破、両CBもサイドへ釣り出され空いた中央へアンダーラップしてきたケイニーが送り込みヒメネスが合わせ同点に追いつかれる。再三突かれていたアーセナル右サイドから狙っていた形で遂に仕留められ、雲行きが怪しくなっていく。

 先制点をしたもののイマイチ流れを掴み切れなかった中で、スクランブルがきっかけとはいえ崩された上での失点を喫し事態は更に厳しくなっていく。ここまでフラムの攻撃プランについて触れたが、アーセナル側のパフォーマンスもお世辞にも良いとは言えなかった。

 予め述べておくと試合序盤に限って言えばむしろ上出来な入りで、フラムが慣れる前まではCH脇を利用しての前進がスムーズにいっていた。しかし問題は失点前後あたりから。前節ウェストハムで触れた課題と似たような話になるが、後方で何度かパス交換をする事で前線のプレー時間を作るも、マークを外すような動き出しが少なくやり直し。しかもその内プレスに追いつかれ無理な前パスを通しカウンターを招く、といった事態が頻発していた。ガブリエルが苛立ちを見せるシーンやウーデゴールが複数人マークを背負って無理をし奪われるシーンも多く、個々人ではなくチーム全体で機能不全に陥ってる感覚が否めなかった。

 余談だがどんなに劣勢だろうがライスだけは常に輝いており今節も例外ではなかった。よく彼の守備スキルに関して、ストロークの長さや運動量について触れられる事が多いが個人的に大事な要素だと思ったのが「重心移動の上手さ」かなと。ルーズボールに対して普通ならただ足を延ばして触るだけになってしまいがちだが、彼の場合その出した足へ素早く重心移動が出来る為、触れるだけでなく体も入れられ確実にキープしてマイボールに出来る技術がある。だからこそ奪ってから即座に攻撃へと反転出来るのではないかなと感じた。

 ともあれ先制点の波に乗り切れずズルズルと失点を食らい、ホームチームの勢いを跳ね返す事も出来なかったアーセナルは不甲斐ない前半戦を過ごした。

お年玉の冨安はどこへやら

 明けましておめでとうございます。という事で日本時間では2024年へ突入。更に復帰したばかりの冨安がハーフタイム中にアップを始め、日本人グーナーへ向けて予期せぬ新年早々のお年玉となることに。

 こうして後半頭から冨安が左SBとして投入。交代で下がったキヴィオルの評価に関して触れておくと、悪くはなかったと思う。偽SBロールは彼の得意なスタイルではない事から依然微妙であるものの、前回スタメン出場したCLグループステージ最終節PSV戦で散々だった守備強度が今節は素晴らしく多数のパスカットが見られた。また攻撃性能に関しては中央でこねくり回したい傾向のあるジンチェンコと比べシンプルにマルティネッリのランを活用してくれるので、中央からの打開が減った分左大外からの突破頻度がいつもより多かった印象がある。しかし守備面に加え今や攻撃面での貢献も大きい冨安の前では少々分が悪いか、割と順当な交代となってしまった。

 そんな彼の投入を背に受け再びリードを確立したいアーセナルだったが逆に決められてしまうことに。59分、CKのスクランブルからクリアが十分ではなかった所をリードが押し込みフラムが逆転。不運な形ではあるが、前半の不調ぶりから察するに起きるべくして起きたような失点ではあった。冨安出場というお年玉は一体どこへやら。未だ不甲斐ないアーセナルのパフォーマンスはこれに留まらず、更に悪化の一途を辿る。

最低のパフォーマンス

 逆転弾を食らったアーセナルは1-1の時点ですら追加点が遠かった中、更に苦しんでいく。これまた前節の二の舞感が否めないが、後半は特にアタッキングサードでのクリエイティビティに欠けており、押し込み方があまりに貧弱過ぎて持ち手が困る現象が多発していた。

 何せ前半以上に相手ボックス周辺での攻め手に欠け、ボールホルダーが晒しては横パス、また晒しては横パスを繰り返し、前線も大してパスコースがないゾーンを流れ作業のように裏抜けを行ったり無謀なポストですぐにロスト。そうじゃなくてもフラムのプレスが間に合ってくると雑な楔から一転ロングカウンターという始末。最早後半の選手達にとって、楔=ロスト+被カウンターという負の方程式が出来上がっていたように思う。

 それでも何度もトライしていれば決定機の一つや二つは生まれる。だがやっとこさ生まれたゴール前でのどフリーサカ弾もボールは遥か枠外へと飛びフィニッシュでも悪い雰囲気が漂う。はっきり言って今季ダントツの酷さである。選手達からは追加点を狙う気力や動き出しもが見られず、いたずらにブロック周りでパス回ししては定期的にピンチに陥るというふざけた状況が出来上がっていた。

 酷かったのはアルテタも例外ではない。とりあえず前線を適当に変えてビハインドだしファイヤーフォーメーションにしておくか~といった風にトロサール、ネルソン、ジェズスを順に入れ、ホワイトを下げて3バックに変更する。これで結果が出ればよいが、チーム全体で機能不全に陥っているアーセナルが変わる筈もなくファイヤーフォーメーションも見方を変えればただFWの選手を増やしただけである。せめてブロック攻略に欠けていたワンツーでのリンクプレーやオフザボールを得意とするスミスロウを投入したりだとか、いたずらに前線を増やさず機能不全の論理的な結論に基づいたフォーメーション変更を行うだとか、やりようはいくらでもあった。

 試合を見た方ならばわかると思うが、選手と監督、試合を動かす人達がこの体たらくである。当然ゴールの匂いなんてこれっぽっちもせず試合はフラムペースで進み、試合終了間際にはむしろ3点目を決められなくて良かったと感じている自分に気づいてしまった。間違いなく今季ワースト、プレミアリーグで首位争いを繰り広げるチームとして0点な試合運びを行ったアーセナルは、勝てば暫定首位の状況で逆転も追いつく事すらも出来ず当然のように4位へ転落。これからの試合も酷い出来になるのではないかと感じさせる最低のゲームとなった。

ゲーム総評

 ウェストハム戦は不運だったなと割り切れる内容だったし、ニューカッスル戦とアストンヴィラ戦は暴力と誤審に殺された試合だったからまだいい。だが今節は違う。間違いなく違う。勿論フラムのサッカーも良かったが、それ以上に技術や気力、クリエリティビティに欠け、自分達の不甲斐なさが徹底的に露呈した最悪な試合だったと私は感じる。

 国内カップ戦とはいえ、次節のリバプール戦は果たしてどうなってしまうのか。先日のアウェイリバプール戦では引き分けの中でも素晴らしいゲーム運びができ希望を繋げるような出来だったが、今は違う。といつまでもネガキャンしていても仕方ないので、とりあえず選手、監督は今節の多くの問題点を洗い出し調整を行い、かつてのパフォーマンスに戻れる事だけを目指し尽力して欲しい。もう二度とこんなアーセナルは見たくない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?