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【仕上げに一瞬の曇りも圧勝】Arsenalマッチレビュー@PL第17節vsBrighton(H)/23.12.17


試合前トピックス

・ウォルターズ、ルイス=スケリーベンチ入り
・体調不良のライスは無事復帰


マッチレポート

試合結果

ARS 2-0 BHA
53' ジェズス
87' ハヴァーツ(エンケティア)

https://www.premierleague.com

ハイライト映像

スターティングイレブン


試合トピックス

スペース管理と守備基準の優先順位を突く

 アストンヴィラ戦での敗戦、CLGS最終節の締まらない消化試合を経て快勝の感覚をここ最近味わっていないアーセナル。順位こそ2位につけるものの手放しで喜べるチーム状況ではない中、難敵ブライトンをホームに迎える。対ブライトンは今季3戦中1勝2敗であり、エミレーツスタジアムでの無敗記録が続く中最後に負けたのも昨季のブライトンと相性の悪さも相まって難しい試合が予想される。

 アーセナルは長期離脱組に加えジョルジーニョが試合前に足に問題が見られスカッド外。ライスこそ間に合ったもののアンカーの控え不在と心細いが、対するブライトンはエストゥピニャン、アンス・ファティ、ソリーマーチ、エンシソ、ランプティ、ウェブスターといったいずれも主力級の選手達に大量の離脱者が出ており、アーセナル以上に苦しい状況。こちらもウェルベックがハムストリングの怪我から復帰、ベンチ入りしてくれた事が唯一の救いか。

 そんな台所事情の厳しいブライトンが導き出した一つの答えがミルナーの左サイドバック選出。ミルナーはリバプール在籍時代から中盤や最終ラインを器用にこなす選手であり、今節も離脱者が集中するポジションに補填されたような形だろう。同時にグロスやファーガソン、ダンクといった攻守の要も出場。デゼルビのデザインされたサッカーにどう対抗するか見物である。

 しかし予想とは裏腹に立ち上がりからアーセナルは猛攻を仕掛けることに。怪我人続出とはいえアーセナルのスタメンはギリギリの所でベストメンバーを保っており、ポゼッションから敵陣内での徹底的な押し込みをベースとした遅攻を展開。加えてジェズスは勿論の事、後方からのフィードをサカやマルティネッリが対面のサイドバックを背中で受けながらコントロールしその落としを拾っての波状攻撃に繋げる事も可能。やりたい放題の攻勢を、前半を通しかけ続ける事に成功する。

 離脱者大量による連携/メンタル両面でのディスアドバンテージを抱えるブライトンであるが、アーセナルの支配を盤石にした一番の理由として挙げられるのは彼らの「スペース管理と守備基準の優先順位」が定まっていなかった事だと考える。アーセナルのビルドアップをスタートから追って見ていく。

 まずラヤを交えた後方ではファーガソン+2列目が最終ラインでのプレーを阻害してくるように牽制をかけてくるが、その次、後続の3列目以降の連動が鈍い。その為こちらとしてはその間延びしたライン間にボールを届けるのはそう難しい事ではなく、ブライトンの守備攻略を突破しての前進が容易となっていた。

 次はミドル/アタッキングサードへの侵入後。ここで彼らの目線に立って考えると最初に対策すべきポイントなのはやはりサカ/マルティネッリの強力なWG陣だろうが、ここにはアディングラや三笘がプレスバックし2人つけることを徹底していた。だが問題なのは更にその先、アーセナルのオーバーロードに対応出来なかった事である。

 特に右サイドではかなりの人数をかけブロック攻略の糸口を見つける事に勤しんでおり、起点のサカ、ランと立ち位置でサポートするホワイト、低い位置でのキープからキーパス創出まで担うウーデゴールに加えジェズスやライス、時に反対サイドのマルティネッリやジンチェンコが中央に侵入する事で、ブライトンからすると最早どのスペースを消せばよいか判断出来ず、両WGへマークについた後3人目、4人目と現れるアーセナルの選手に対してブロックの収縮対応が円滑に行えていない印象が強かった。

 勿論アーセナルは闇雲に人を送り込む脳筋スタイルではなく、ウーデゴールやライスといった視野の広い選手が敢えて低い位置に留まることでブライトンのプレスを誘発させる動きも行う。こうなると守備基準を定めるのはもう至難の業。マルティネッリへ懸命にマークについていたフェルトマンが守備対応時に負傷し交代した事もブライトンにとっては更なる追い風で、ウーデゴールのセクシーパス連発を筆頭に決定機を作り続け、ゴールに幾度となく迫る。

 アーセナル側のハイプレスが面白いようにハマっていた事もブライトンの課題を更に浮き彫りに。「守備隊形はこうやって組むんだ」と言わんばかりの敵陣プレスで窒息させ、たまらず雑な前進パスを入れてきたところで完全に潰し切りすぐ攻撃に移転。ずっと俺のターンと言わんばかりの圧倒劇を繰り広げた。

致命的な決定力不足

 だがアーセナルはそんな攻勢の中作り出した決定機をものにする事が出来なかった。チャンス創出数は稼ぎ続けるがブライトンの体を張った最終局面での守備に阻まれ続け、間違いなく今季1押し込んでいるのに何故か得点だけは取れない非常に歯痒い前半戦を送る。

 そしてそれは後半も同様。特にCBダンクとGKヴェルブルッフェンは見事。こちらのチャンスをすんでのところで防ぎ続け、シュートストップにコース切り、一歩間違えれば自殺点なボックス内での競り合いをしっかり潰し切ってくるなど、アーセナルにとって最後の壁として立ちはだかってくる。

 それでも待望の得点はCKから生まれる。53分、CKをニアでファンヘッケが反らしたボールにファーにいたジェズスが対応、頭で合わせゴールネットを揺らす。ようやく、本当にようやく先制点を挙げる。ここまで決まらない試合はそう見たことない。

 リードを確立してからのアーセナルは前半以上に前線がノッた攻撃を展開する。フットサル由来の細かなボールタッチで裏を突くジェズスやロングカウンターでスピードと股抜きを織り交ぜ強烈な推進力を見せるマルティネッリ。そして極めつけはウーデゴール。密集地帯で奪われたと思いきや気付けば見事なタッチで脱出し、絶妙なスピード・距離間のスルーパスを操りアーセナルの攻撃を牽引する。

少々のバタつきと勝負所のハヴァーツ

 だが得点を決めども未だゴール感覚は掴めない。それどころか80分を迎える頃にはアーセナルに疲れが見え始め、代わりにブライトンが保持する時間が増え何度か決定機が訪れる。前半は消えていた三笘が大外でボールを持てるようになり、深い位置を取った三笘→中央のグロスがギリギリ枠の外へ逸れたシュートを流し込んだシーンはブライトン1の決定機であった。

 オープンになりホームで圧倒しながらも1-1痛恨ドローが現実的になりかけていた中、勝負所での得点に自信ありのハヴァーツがまたも試合を決定づけるゴールを獲得する。87分、トロサールが自陣でバックパスをブラフに反転しウーデゴールに預けエンケティアへ。右を抜けていくサカを囮に左を抜けていくハヴァーツへ送り、背後からファンヘッケが迫る中ヴェルブルッフェンの脇を打ち抜くシュートで追加点を挙げる。

 先日のルートンタウン戦で先制しながらも二度の追いつきから逆転され、流れが相手に渡りそうなところをすぐさま得点を決め試合を引き戻したのはハヴァーツだし、更に少し前のブレントフォード戦では0-0ドローで迎えた89分に劇的ウィナーを挙げたのもハヴァーツ。試合の転換期に仕事をするハヴァーツが今節も大事な場面で得点を挙げてくれた。勿論得点だけに留まらずパスワークでのテンポアップに空中戦、ボールキープやインターセプトまで幅広く活躍。一部界隈では少し前まで今夏ワースト移籍だと揶揄されていたのが信じられない程に気付けばチームに取り必要不可欠な存在まで昇華した。

 忘れてはいけないのがライスとサリバ/ガブリエルのCBコンビ。ライスは半年前に加入したばかりにも関わらずアーセナル公式MOTMに今節含め既に7度目の選出。最早彼の良さは語るまでもないし、当初は高いと感じていた2人の移籍金が今ではバーゲン価格に感じる。それとアーセナルの押し込みはサリバ/ガブリエルの2人が広大な範囲のカバー力と勇気ある潰し無しでは成立しなかった。数日前のCLでは前進守備をミスする場面もあったが今節はそんな事は全くなく、3人そろって高馬力+安定と頼もしい活躍を見せてくれた。

 こうしてノリ始めていたブライトンは値千金の追加点によって再び沈黙。今季全試合で得点と攻撃に自信ありのブライトンをクリーンシートで完全に抑え込み、押される時間こそあれど全体的に完成度の高い試合で快勝。暫定ながら再び首位に返り咲いた。


ゲーム総評

 直近のPL32試合で平均2.1ゴール、17本ものシュートを記録していたブライトンに対し、怪我人多発+ホームとはいえこちらもやりくりが厳しい中、クリーンシートに加えシュートを6本に抑えるなど、ほとんど完勝に近い内容で勝てたのは今のチーム状況にとって大きな追い風となっただろう。

 また直後開催されたリバプールvsユナイテッド戦は、絶不調ユナイテッドをアンフィールドで迎えるもリバプールが引き分け、2位アストンヴィラが1pt差と肉薄しているものの17節終了時点で正式に首位に躍り出る事となった。こちらも選手達にとっては非常に自信になるだろうし、良い意味でのプレッシャーになるだろう。

 次節はそんなリバプールとアンフィールドで早速戦うアーセナル。昨季1勝1分とここ数年の対戦成績からすると素晴らしい結果を残したが、今季のリバプールは復調どころか再びリーグ最強格にまで戻ってきている。全盛期の輝きを取り戻しつつあるファンダイク、攻守に存在感を発揮するショボスライ等要注意人物は沢山いるが、今のアーセナルなら勝利はそう遠くない。火中、いや大炎の中の栗を何とか拾い、気持ちよくクリスマスを迎えたいところだ。

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