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【アーセナル】PremierLeague/第37節/vsNottingham Forest(A)【ごとこの備忘録】

試合前展望

 サリバやサカの契約延長交渉が順調に進みラムズデールは2028年まで無事契約延長、かたやアーセナルの低迷期から長く在籍し酸いも甘いも経験したジャカのレヴァークーゼン移籍が秒読みと、シーズンの終わりを感じる時期になってきた。

 そんな終盤戦のプレミアリーグは、シティが次節勝利で優勝確定とアーセナルにとってはほとんど望み薄で、今節は正直モチベーションがあまり上がらずメンタル面で難しい試合となることが予想されてしまう。

 また冨安、サリバ、ジンチェンコに加えマルティネッリがシーズンアウトの続報も先日出ており、怪我人的にもアーセナルに逆風が吹いているといっていい状況。それでも、素晴らしい成長を見せた今季の締めくくり、そして来季に向けて弾みをつけるためにも快勝を収めて欲しい。

試合結果

NFO 1-0 ARS
NFO:アウォニイ 19'
PL公式MOTM:アウォニイ

https://www.premierleague.com/match/75277

スターティングメンバー

左フォレスト、右アーセナル

試合展開

 今節はスタメン発表から大きく驚かされたファンも多かっただろう。かくいう私もその一人で、ジェズストロサールの共演にトーマス先発はともかく、ジョルジーニョも同じく名を連ね、バックラインはキヴィオル、ホワイト、ガブリエルの3人でティアニーがベンチ、更にネルソンがベンチ外と色々な憶測が飛ぶ選出に。

 ジャカ左SBや懐かしの3バック等様々な構成が考えられたが、試合が始まってみるとトーマス右SB×キヴィオル左SBの4-1-2-3。サリバ冨安のダブル離脱が起こった時期から可能性が囁かれていたトーマスの右SBに、来季を見据えての偽SBロールかキヴィオルの左SB運用というサプライズ起用が行われた。またティアニーはコンディションが整っておらず、ネルソンは体調不良ということでメンバーから外れた。

 さていつもと比べイレギュラーな陣容で興味深いこの試合は、キヴィオルではなくトーマスが主に中盤へ組み込まれる形から始まる。キヴィオルがそのまま低い位置に留まるのに対し、トーマスがジョルジーニョと2CHを組み従来の偽SBの左右反転版というイメージに近いものを展開した。

 対するフォレストは降格圏から3pt差とそこそこ危ない順位であるものの、最下位セインツが既に降格が確定し降格枠が実質2枠。また間にエヴァートンも挟まっているため、勝ち点1pt上等の自陣にこもりブロック形成という所謂昇格組の戦い方を行った。

 さてアーセナルはトーマスの立ち位置を調整することからブロック攻略の起点を見出そうとしたが、こうすることで得られるメリットは2つ考えられる。1つはトーマス自身が持つフィルター役としての能力×2CH+3CBに伴って最終ライン周辺の防御力が増すこと。もう1つは中央からの配給役が増えることで、ブロックを形成する相手からすると配給の起点ポイントを絞って守備基準を設定することが難しくなることが挙げられる。

 ただ逆に、トーマスはタッチライン際まで開いてボールを受けることもあった中で、ホワイト程右サイドの連携面が成熟していないため攻撃面で迫力が足りなく、ここが大きなマイナスポイントとなっていた。特にサカへのサポートランが微妙で、ホワイトならここで駆け上がりマークを引き受けていただろうなと感じてしまうシーンが多々あり、本職ではなく仕方ないがどうしてもトーマスのパフォーマンスでは物足りなかった。

 またこれは左サイドも同様。キヴィオルとトロサールの縦ラインもまた初めての組み合わせでサイド攻略に難ありといった印象で、今季ここまで展開してきた「サイドの奥行きをWGが生む→SBとIHがレーンを跨いで攻撃のサポート」という一連の流れがほとんど機能していなかった。

 他にもトロサールやジェズスが降りてくる流れから右サイドでオーバーロードを作り出し、かなりの右サイド偏重で攻めるも一定の効果を示せず。受けるのは足元ばかりで裏抜けを狙おうとする頻度すら少なく、前線メンバーのそもそものコンディション不足も相まって、90分間を通してフォレストの5-4-1(5-3-2)ブロックに大苦戦してしまったアーセナル。永遠とUシェイプのボール回しを繰り返していた暗黒期を嫌でも思い出す、見ていて非常にじれったかった。

19' ウーデゴールのバックパスミスからフォレストのショートカウンター発動、ラストパスを受け取ったアウォニイがガブリエルのクリアを受けながらもシュートを打ちゴール、フォレスト先制

 加えてアーセナルを厳しい状況に陥れたのはフォレストが数少ないチャンスをものにした試合序盤の先制点。後ろに重たいブロックを組むチームは勝つための得点をどこで獲得するかという最大の問題が常について回り、フォレストも例に漏れずこのパターンに当てはまる。だがこの解決策をフォレストが自ら見出す前に、アタッキングサードへ侵入しようとアーセナル全体で前がかりになっていた中でキャプテンのロストを起点に手薄な中央を最短距離でゴールまで運ばれ決められてしまった。トーマスの偽SBロールのメリット「中央の防御力上昇」のある種例外ともいえる場面を運悪く付かれ、手痛い失点を喫してしまった。

 この苦戦模様は先に述べたように90分を通して見られた。後半60分には効いていなかったジャカとキヴィオルを下げエディとティアニーを投入し、シンプルにティアニーの大外ランから放り込む攻撃手段も追加したがトロサールの左IHコンバートはまたも明確な効果を示せず。それならばと70分にヴィエイラをトロサールに代えるもこれまた効果なし。極薄スカッドでシーズンを駆け抜けたツケが回ってきたか交代で攻撃力が増すような事もなく、却ってホームサポの熱狂的な雰囲気に飲み込まれ時間と共に萎縮してしまった印象が否めなかった。

 こうして良いところを見せられずいくつかの決定機はナバスの正面。経過していく時間とは対照的にインテンシティは上がらず終戦。アウェイで首位としてシーズンを戦ってきた覇気のようなものが感じられない残念なパフォーマンスを晒したアーセナルが無得点の敗戦を喫し、ライバルシティの優勝を自ら確定させる屈辱的な夜となった。

ピックアップ選手

 何度もカウンターの芽を摘んだホワイトが唯一と言っていい高パフォーマンスを見せた選手だった。

全体雑感・次戦に向けて

 今シーズンは成功か、失敗か。シーズン開幕当初はCL権を目標に戦い始めたものの予想以上に好調を継続し気づけば優勝争いへ。実に250日近くも首位の座を保持し続けたものの終盤の大失速でそれまで積み上げてきた勝ち点の余裕を失い、最終的に自らの敗戦によってシティの優勝を確定させてしまう。まるでジェットコースターかのようなシーズンを送った新生アーセナル。

 だが個人的にはやはり「成功」と言えるのではないだろうか、と思う。現実的な目標として見えていた優勝が最終盤で手から零れ落ちていく、まさに昨季CL権を取りこぼした流れを奇しくも踏襲する展開に大きく落胆してしまったことは間違いない。ただ繰り返しになるがそもそもの目標はCL権。アルテタ5ヵ年計画というものがあるように、PLやCLの舞台で一歩ずつ成績を上げていく過程を歩んでいく前提があった中でそれをスキップし、「2位」という素晴らしい成績で今季を締めくくることが出来たこと。これには堂々と胸を張ってよいのではないだろうか。

 次節はとうとうシーズン最終戦。来季を見据えての人選、戦術が数多く垣間見えた今節から更に多くの要素を考慮し実践する、意義のある試合となることが予想される。

 今季積み上げてきた数々の名試合/記録は決してまぐれでは無く、自分たちの力で生み出し残してきた「功績」である。そんな素晴らしいチームで行う最後の試合を、選手/サポーターが気持ちよく終われるように好ゲームを演出してくれることを期待せずにはいられない。

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