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【厳しくも確かな前進】Arsenalマッチレビュー@PL第2節vsCrystal Palace(A)/23.08.22


試合前トピックス

・ティンバーACL損傷でシーズンアウト濃厚
・冨安先発
・イケメン中盤トリオ
・攻撃陣をエディが牽引
・引き続きガブリエルはベンチ
・ネルソン・ジンチェンコ復帰
・ラヤベンチ入り


マッチレポート

試合結果

CRY 0-1 ARS
54' ウーデゴール(PK)

https://www.premierleague.com

ハイライト映像

スターティングイレブン


試合トピックス

①MOTM獲得のライス

 ファン投票により今節のArsenal公式MOTMを獲得したライス。彼は前節に引き続き、いや前節以上にチームにフィットしつつ、それでいて自身の強みを発揮していた。

 彼の良さを一言で表すならば「バランス感覚」だろうか。まずは試合全体の情勢を把握し、保持/非保持それぞれにおける自分のポジショニングを適切に判断すること。トーマスと共に3列目を形成している時は、トーマスと同様にボールをCBから引き出し即座に反転することもできるし、ホワイトやサリバといった持ち運びに定評があるCBの長所を生かすためバックステップを踏んだり左右に振れたりしてパスコースやプレースペースを提供することも怠らなかった。ここはパレス側のプレスを見つつ、サイドチェンジするうえで自分とCBどちらがより展開しやすいか判別していたように思う。

 また、列落ちのタイミングも降り過ぎていた印象が否めなかったPSMに比べ遥かに改善されていた。エディがジェズスのように2列目、時に3列目まで下がりボールをはたいてたように、ライスも左SBのように振る舞いフォーメーションの重心を操作していた。

 IHとしてのランニングも随所に光っていただろう。特に前半右サイドのハーフレーンを駆け上がりウーデゴールからボールを受けエディへ送り決定機を演出したシーンは100点の動きだった。

 このように振り返ってみると、昨季POTS級の進化と活躍を見せたジャカを失ったロスが早くも癒されつつあると実感できる。中盤での長短織り交ぜたパス、列落ちでバランス調整、IHのサポートラン、そのどれもがジャカと比べ既に遜色ないレベルまで来ている。驚くべきなのは今季たったの2節が終了した段階である。アルテタの指導の下ここから更に才能が開花していくと考えると、1グーナーとしてワクワクせざるを得ない。試合終了後、破顔でガッツポーズを見せたライスにこちらもガッツポーズである。

 あと試合中にコンタクトが外れちゃうのは次から気を付けてね。

②またも多彩な攻撃手段

 今節もまた、ポゼッション時における予測不能性が多くみられた。

 まずベースとなるのは前節を見ればわかるように3-1-6。トーマスが中央に鎮座し、ライス/ハヴァーツ/ウーデゴールが2列目で若手3人衆が前線を牽引する形だ。

 そこから先ほども触れたように、エディ/ライスが列落ちしバックラインや中盤の人数を確保して前進を助けるようなシーンもあれば、逆に冨安も中盤参加したりサカ/エディが積極的にミッチェル/グエヒの裏を狙う。ウーデゴールが細かいタッチで溜めを作ってくれるのも一助となり、ゴールに対して上下方向へ揺さぶりをかけるシーンも頻繁に見られた。

 もちろん左右方向への揺さぶりも同じく効果的。こちらはよりシンプルに、ライス/トーマスといった視野が広くキック精度の高い面々が後ろに控えているので、彼らの武器を遺憾なく発揮した大きな展開がパレスのスライド速度を上回る。そしてマルティネッリ/サカが高い位置からドリブルを開始出来ていた。

 更に面白かったのはトーマスの右SBロールだ。偽SB色がとても濃い人選なのだが、サカのように右サイド高くタッチラインまで開いて大外のパスコースを担保する形が何度かあり、昨季までだったら見られなかった形があった。これはあくまで中盤の人数が足りている状況という下地が前提にあるとは思うが、トーマスが幅取り役を請け負うことでサカがゴールに近い位置でプレーが出来るようになり、ウーデゴールらと短いパス交換で素早くエリアへ侵入することが可能になっていた。

③不可解で不愉快なレフェリング

 プレミアリーグファンならば、今季23/24シーズンからレフェリングの基準が大きく変化し厳しくなったことはご存じだろう。怪我人の治療や選手交代、その他数秒~数十秒程度の短い時間でも試合が止まっている間は都度厳格に計測しATに反映させた結果、例年以上の長丁場になったり、遅延行為や審判への抗議が以前よりもカードの対象になりやすくなったことなどである。これはより公平に、厳格にゲームを進めようとする為に導入された新基準であるだろう。

 しかし、こういったルールは今のところ良い影響よりも悪い影響の方が圧倒的に叫ばれているのが今の現状である。それはなにもアーセナルに限ったことではなく、プレミアリーグに所属するチームそれぞれにである。

 その悪い影響とはずばり「審判の絶対王政化」である。と聞くと、第三者として両チームを平等に裁けるレフェリーの権限が増して良いのではないかと思うかもしれない。

 だが裏を返せば、審判の絶対王政化はあくまで「しっかりとした基準に基づく納得感のある一貫した判定を行う」ことが大前提にある。これが致命的に出来ていないために、今季まだ2節にもかかわらず各所から不満が続出するのである。レッドカードの数も今節を除いても既に5枚である。

 そんなプレミアリーグの怠慢で愚かな審判団の流れ弾を食らってしまったのが今節の冨安である。1-0リード時点でのスローインにてたったの8秒かけただけで1枚目のイエローが提示。更にその数分後、マッチアップしたアイェウが反転しようとした際に足を滑らせ転倒。冨安がユニフォームを引っ張ったり足をかけたりといった場面がないことはいくつかのカメラ視点からも確認できたが、冨安のファールとして2枚目のイエローも提示。残り20分以上もの間10人で戦うことを強要された。

 実に腹立たしい事例である。如何に微妙な判定でも2枚目のイエローにVARが介入できないといったルールの欠陥に加え、レフェリーの誤った判定に異議を唱えようものならその申立人に「はい、あなたにもカード」である。まさに地獄。元々まともなレフェリングのできない質の悪いPL審判団の方々が、なまじ権限を強めてしまい偉くなったと勘違いしてしまった結果、更に悪い方向へと突っ走っていっているのが今のプレミアリーグの現状である。

 アーセナルは10人でもなんとかリードを守り切り勝利することが出来たが、誤審の影響を受け勝ち点を落とすチームは例えアーセナル以外であったとしても気持ちの良いものではない。ライバルチームがコケてくれるのはハッピーだが、サッカーの内容ではなく抗いようのない権力によって潰されるのは不快以外の何物でもない。世界最高峰のフットボールで全世界のファンを楽しませてくれるプレミアリーグに存在する、ある種「癌」とも言える審判団は、このへんてこで馬鹿馬鹿しい新基準を一刻も早く改定してほしい。選手がのびのびとプレー出来なくなり、プレミアリーグが壊れてからでは遅いのだ。

その他雑感

・クリスタルパレスは右CBアンデルセンからのロングボールで左サイド中心に起点を作り攻め込む
 →クロスをいくつも上げられるもシュートまではいかず
・ウーデゴールのFKフェイントでホームサポ大ブーイング
・サリバパスミスでピンチを招くもエリア内の際どいスライディングで帳消し
・エディはターンが本当に上手い
 →急加速で相手ディフェンス陣を置き去りいくつかシュート
・マルティネッリの素早いFKリスタートに抜け出したエディがPK獲得
 →サカがウーデゴールに譲りゴール
 →アルテタ「譲ったのは選手の判断、ピッチの判断に従う」
・最強クローザーガブリエル再び
・久々に10人で凌ぐアーセナル
 →最終ラインの防波堤がシュートブロック連発
 →ジョルジーニョ/ジンチェンコ/キヴィオル投入で保持の構えも捨てない
・全力で喜びを表現するライス&険しい表情の決勝点ウーデゴール


ゲーム総評

 ポジティブな要素もネガティブな要素も共に入り乱れた複雑なゲームだった。

 前半は特にトピックスで触れたように様々なアプローチでゴールを狙えていたが、結局点は取れず。アウェイのパレスというシーズン屈指の難敵相手に10人で20分以上守り切ることが出来たが、そもそも冨安の退場処分が納得いくものではない。

 選手個々人に触れるならば、ターンとポストが光っていたが得点というFWとして一番大切な仕事をこなせなかったエディや、果敢な攻め上がりと堅い守備を両立できたが退場という重すぎる代償を支払ってしまった冨安などがいる。

 結局勝てばよかろうという言い分も分かるし、いい試合をして負けるよりかは断然マシである。しかし、やはり優勝を狙うチームならばこういった試合環境・相手であっても盤石な試合運びを行ってほしいというのが正直なところだ。

 冨安の出場停止も、チームにとっても本人にとっても大きなダメージだ。左SBはティンバーの長期離脱が確定し、ジンチェンコは復帰直後、ティアニーは去就不透明という状況で、満を持して冨安に出番が回ってきていた中での退場は悔しいだろう。厚かったはずのDF陣が、シーズンが始まってみれば何故か野戦病院化。実にアーセナルらしいとも言える(泣)。

 次節はホームでフラム戦。シーズンの中では間違いなくイージーな部類に入るカードだ。王者の座を目指すものとして圧巻の試合を演出してくれることを願う。

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