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吉沢ハルが出来るまで

 ハルというキャラクターを作ってからそれなりの時間が経った。こう書くと他人ごと、あるいは多重人格みたいだけれど。

 ハルという名はただのハンドルネームであり、自分の名前とは全く関係がなく、関係がなければないほどよかった。
 当時、実生活で言いたくても言えないようなことを言う場として、ぼくの前にはインターネットがあった。リアルとネットは交わるものではなく、交わらせたいものでもなかった。だからSNSで直接の知り合いなどは一切フォローせず、アカウントの存在も教えず、ただただネットの中だけの曖昧模糊なキャラクターとして存在していた。

 それでもネットに触れ続けていると、そのキャラクターの輪郭が濃くなってくる。
 たとえば、ぼくが書いたもの描いたものに対価を払おうと思ってくださる方が現れはじめた。下品な話だが、評価として一番わかりやすいのはお金だ。

「お仕事として、文章を書いていただけないでしょうか」
「イラスト素敵です、Tシャツ買いました」

 こうなってくると、ハルもだいぶ気合が入ってくる。鼻息も少し荒くなったし、いつも寝起きのような顔をしていたのに心なしか男前な面持ちになった。

 お仕事をいただいたのもそうだし、個人的に親しくなったことで、「じゃあご飯でも行きましょう」となり、直接の知り合いになった人もいる。
 リアルとネットは混ざり始める。
 そこまできても、ぼくの本当の名前など知らず、ただ「ハルさん」とだけ認識している人もいる。

 変な感じだ。

 学校のツレ、職場のツレ、地元のツレ。
 それぞれ、話すときのノリが微妙に違うという経験をしたことがある人は少なくないだろう。
 それのものすごくエクストリームなパターンが、ハルなのだと思う。

 今年、小説を書いてネットに掲載した。
 著者名がハルでは収まりが悪いので、Twitterで「なんとなくぼくっぽい名字を適当に考えてください」と募ってみた。その中から吉沢が採用された。掲載サイトでは名前も漢字で吉沢春と表記した。
 
 輪郭の濃くなったハルをより自立させるため、その他媒体でも吉沢を冠することにした。
 しかし、やっぱり本名とまるで関係がないために、たまに西沢と間違える。まるで馴染んでいない。


 ぼくは長年ブログを書き続けている。
 毎日のように書いていたときもあればひと月に一度書くか書かないかというときもあるが、なんにせよ、継続して書き続けている。 

 さて、ここはnoteである。
 なにかの折にnoteを勧められ、いざ登録してみると使い方も使い道もよくわからない。
 ブログとどう棲み分けるのか。

 ブログはふたつあり、ひとつは服や音楽など、ぼくの趣味興味に特化したもの。もうひとつはTwitterの延長で、どうでもいいことを長々と書いている。
 前者はコンテンツに興味がある人に向けて、後者はぼく個人に興味がある人に向けて、という感じだ。

 なのでnoteは、特に興味がどこにも向いていない人が読んでも楽しめるものが書けたらいいと思っている。エッセイというか、コラムというか。それぞれの記事が独立した読み物になっているようなもの。
 それはなかなか難易度の高いことだ。大言壮語もいいところ。

 まあ、やってみるのはタダだから。

 できそうにもないからやらない、よりも、できないかもしれないがとりあえずやってみよう。
 と、考えるのがハルであり、ぼくなのだ。

 吉沢ハルはまだ出来上がっていない。

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