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留学先紹介とほんのちょっとだけ米英生活比較


留学アドベントカレンダーも後半戦ですね。
今回は前半のセメスターの復習もかねて留学先でどのようなことを勉強しているのか紹介しようと思っていますので、多少まじめな記事になるかと思いますが、ご了承ください。

留学先紹介

留学先はUniversity of Edinburgh Business School MSc in Global Strategy and Sustainabilityです。後ほど授業内容にも触れながらも説明しますが、どのようにしてビジネスを通じた社会課題及び環境課題の解決を実現していくのかを学ぶマスターのプログラムになります。

Why Edinburgh?

そもそもなぜこのプログラムに進学しようと思ったのかきっかけをまずお話します。もともとお金稼ぎという側面ではないビジネスの社会課題の解決の可能性という側面について大学時代から興味がありソーシャルビジネスやマイクロファイナンスについて独学ながら勉強をしていたのですが、もう少し本格的にビジネスの知識を身に着ける必要があると考えていたため、大学院進学を考えるに至ります。ビジネスを学ぶということでなんとなくMBAの進学も考えていたのですが(途中までGMATの勉強もしてました)、MBAに進学された方のお話をお聞きすると、Accounting、Finance、Strategy等のGeneral Managementに必要な基礎知識を学ぶことが多く(MBAは将来のマネジメント層を輩出することを目的としているためこれは当然ではあります)を、何かの専門家を養成する感じではないという話をお聞きし、イメージが違うなーと思っていたところ見つけたのが、このプログラムでした。

MBAの進学について自分の中で検討したり先輩方と相談したりする中で、MBAに進学する意義の内その最大の魅力は企業内での昇進の条件を満たせることやこれまでのフィールドとは異なる業界への転職の機会を得られることにあると理解するに至り、もともと仕事では弁護士をやっていたことから、将来企業のジェネラルなマネジメントをやっている姿は想像できず、また、コンサルや外資系金融機関への転職等も考えていなかったことからMBA進学は果たして私にとってペイするものなのか?悩んでおりました。

そんな中、Edlinburgh大学のロースクールに進学していた友人と久々に話す機会があり、Edinburghがいかに素晴らしい街か滔々と語られたのですが、なんとなくEdinburgh大学のウェブサイトを眺めていたところSustainabilityに特化したこのプログラムは見つけた瞬間、まさにビジネスを通じた社会課題、環境課題の解決を学べるところじゃん!ここだ!と決めて出願し運良く合格したため、MBAの受験はやめることにしました。と言いながら、1校だけ魅力的な大学があったのでEdinburghの合格後にも出願したのですが、インタビューに呼ばれたものの見事落ちてしまいました。

ちなみに今年からQSランキングでSustainabilityのランキングが発表されることになったのですが、なんとEdinburghは世界4位、英国1位の順位を獲得していました!指標はよくわかりませんが多分すごいことなのでしょう!なおこのランキングに教授たちはとても喜んでました。


授業の感想

前期の授業は以下の6つでした。Strategies for Internatinalizationは選択科目で、その他は必修です。各Semesterが2termsに分かれており、前半三つ受け、Global Strategic ManagementはなぜかReading Weekに1週間詰め込みで毎日4時間授業が行われ、残り二つが後半のtermでの授業でした。
Corporate Responsibility
Sustainability in Context
Strategies for Internationalisation
Global Strategic Management
Sustainable Business Practice
Responsible Management of Digital Innovation

Corporate Responsibility
文字通り会社の社会的責任を勉強する授業です。ビジネスと人権、NPOの支援等を通じた社会課題の解決に関する仕事も行っていたため、もともとそれなりに知識はある分野でしたが、かなり最先端な議論を行っていました。授業全体を通底しているテーマは、SustainabilityやSocial Responsibilityを問うことで生じるジレンマを深く考えよ。というものです。例えば最近Sustainabilityな経営を目指すべきであるとお題目のように唱えられているが、すべての企業にSustainabilityを実現することを義務付けることは正当化できるのか?という議論をよくしていました。具体的には石炭火力発電、石油会社、たばこ産業等コアビジネスそれ自体がSustainabilityに抵触する可能性のある会社に対して、Sustainabilityの実現を要求するのであれば、そのビジネス自体止めて、廃業しろと言わざるを得ないが、それは果たして正しいのか?という議論です。もちろん答えがあるわけではないのですが、CSRやSustainabilityを考える上で骨太な問いを提供してくれたことの意義は大きいと思っています。

Sustainability in Context
Sustainabilityの考え方に至るまでの歴史を学び、現代の大問題であるClimate Changeやそれに対する企業の責任、政府の役割等を学ぶ授業です。Sustainability、ESGの定義の問題やフリードマンのShareholder Primacy、フリーマンのStakholder Theory等Sustainabilityとビジネスを考える上で欠かせない基礎的な概念からTCFD、TNFD等の開示規制関連の最先端の議論まで取り扱う授業で、大変勉強になりました。再生可能エネルギー関連の仕事は日本でかなりにやっていたので、気候変動や環境問題にはそれなりに理解があると自負していましたが、実務で身に着けた付け焼刃の知識だったなと反省させられました。また、この授業の先生は授業での心理的安全性を確保することをとても大事にされており、そのおかげで発言や議論が絶えない雰囲気を作り出しており、コミュニティの雰囲気づくりという仕事でも役に立ちそうな技術を学べました。加えて、Sustainabilityの議論をベースにしながら、Critical Thinkingを実践するという形式で授業が行われ、効果的なCritical Thinkingの方法を身体に叩き込むというとても素晴らしい授業を展開してくれて、終始楽しかったです。

Strategies for Internationalisation
国際化社会における企業の国際戦略を学ぶ授業で、前二者に比べると、理論の解説(ウプサラモデル等)が多かったり、リーディングの量も多く、いわゆるお堅い授業でした。あまりSustainabilityに関連するような話は扱いませんでしたが、国際戦略に関する学説の変遷を知ることができ、今後国際戦略を学ぶ上での基礎を学ぶことができたのは、まあよかったなと思っています。

Global Strategic Management
この授業も国際戦略を学ぶ授業なのですが、教授がマイケルポーター大好きマンでポーターの戦略論を全体的に学び、国際戦略にどのように活用するのか、という議論を展開されていました。教授は自らの研究成果をもとに、ビジネスの国際化において、様々な産業において国際的に寡占化が進んでおり、寡占化の状況を見極めないでポジショニングを取ることは不可能であることから、国際的な産業の寡占化状況をチェックせよ!という持論を唱え続けて、また、彼自身も複数の英国の有名企業に対してコンサルタントサービスを提供しているようで、実務的な話もありつつ、極めて興味深かったのですが、内容がかなり高度で、ついていけない人たちも多かったと記憶しています。
https://www.routledge.com/Global-Oligopoly-A-Key-Idea-for-Business-and-Society/Carr/p/book/9780367312756

試験は手書きであり、試験範囲も400ページのテキストほぼ全範囲となかなか大変でした。熱が出ていて体がだるい中試験を受けたので、何を書いたのかもう覚えていません。

Sustainable Business Practice
Sustainability in ContextでベーシックなSustainabilityの概念を学び、今度は前期後半戦のこの授業で、実際に企業がどのようにしてSustainabilityを実践していくのかを学びました。Theory of Change、System Thinking、Desing Thinkingと様々なフレームワークを使ってSustainabilityを実践に落とし込んでいく実務的な授業でとても面白かったです。グループワークも多く、実際に渡されたフレームワークをベースにあーだこーだ議論する過程で、各フレームワークの使い方、メリット、デメリットを学んでいくスタイルでかなり教育効果が高い授業だったと思います。

Responsible Management of Digital Innovation
Sustainabilityの授業としては一風変わったテーマでしたが、Digital InnovationとSustainabilityは切っても切り離せないことを学びました。例えばSustainabilityの実現のためにサプライチェーンにおける原材料のトレーサビリティを高めるべきという議論がよくなされるのですが、トレーサビリティを高めるためには何が必要かというとそれこそDigital Innovation、具体的にはブロックチェーン、IoTやAIの活用が必須です。このようなDigital Innovationの知識なくしてSustainabilityの専門家にはなれないという強いメッセージを感じました。加えて、Digital Innovationが与える負の影響、例えばAIを通じた信用スコアリング社会の形成による監視社会化、Uberをはじめとしたギグワーカーの増加による、雇用・労働概念の破壊の可能性等についても理解する必要があることを強調されており、Digital Innovationの功罪をバランスよく扱ったとても興味深い授業でした。

全体的な感想として、すべての授業が面白く、またそれぞれ有機的に関連しており、別の授業で学んだことを他の授業でも使えるようになっており、個人的に前期の授業は大満足です。
後期には、前期で学んだことを活かし、実際に企業にSustainability関連の課題解決のためのコンサルタントを提供するプロジェクトが用意されており、今から楽しみです。
クラスメイトは45名程度で国籍が多様であることはもちろんのこと(ぱっと思いつくだけでもアメリカ、イギリス、ノルウェー、アイルランド、アルゼンチン、ペルー、エジプト、インド、インドネシア、マレーシア、日本、中国、台湾、韓国)、大学卒業後そのまま進学された方、有名投資銀行やコンサルを辞めてきた方、政府から海外研修として来られた公務員の方、スタートアップを自ら立ち上げていた方まで多種多様なバックグラウンドの学生で構成されており、みんなやる気に満ち溢れていて日々刺激を受けています。

米英生活比較

留学先紹介だけではすぐ終わってしまうと思って米英生活比較も書こうと思っていたのですが、それなりにプログラム紹介で字数を稼げたのでどこかでいつか書きます。
米英と言いながら米国で住んでいたのはニューヨーク、英国で住んでいるのはエディンバラと都市間の比較しかできませんが、一言だけ言えばエディンバラの方が圧倒的に治安がいいので、夜遅くまで遊べます。ニューヨークは深夜そこらへんで殺人事件や発砲事件が発生しがちなので夜は早く家に帰っていました。そんなニューヨークですが、また住んでみたいと思えるくらい大好きな街で不思議なところでした。

それではみなさん有意義な冬休みを!



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