DMX512 トラブルシューティング

はじめに

舞台のみならず、建物の照明や遊園地などのイルミネーションに使われている調光プロトコル DMX512-A ですが、接続される灯体が増え、配線を引き回す面積が広くなり、規模が大きくなるほど灯体が変な動きをしてしまうというトラブルに遭遇しやすくなります。

そもそも RS-485 規格の信号配線を扱うことになりますので、電気の専門家ではない照明エンジニアの手におえないことがしばしばです。
トラブルが発生している現場へは「テスター」だけでなく、電気の動きを目で見ることができる「オシロスコープ」を持っていくのが理想的です。

トラブルあるある

・光がチカチカ、チラチラする
・ムービングライトの動きががカクカクする
・施工時は問題なかったのに、本番になると問題が起きる

原因と解決のヒント

配線へ飛び込んでくるノイズ

AC100V・200Vなど電灯や動力の配線からのノイズはもとより、Wi-Fiのノイズは最近特にひどくなっています。
人が多く集まるホールや教室など、メンテナンスに割り当てられた日に行ってみても、人がいないためか正常動作しています。しかし、施設の営業日になるとトラブルが発生します。

オシロスコープ等で信号を観察することにより、どんなノイズがあるかわかるでしょう。
長い配線にはリピーター(ブースター)的なものをはさんで解決することもあります。
Wi-Fiなどの高周波の干渉はフェライトコアが効くときもあります。

信号の反射

デジタル配線には信号の反射がつきものです。
信号に反射が乗ると、デジタルデータがうまく受信できなくなってしまいます。
反射の影響はオシロスコープで信号を観察すると、特徴的な波形になるのですぐにわかります。

これにはインピーダンス管理されたDMX用の線材(カナレ DMX203等)を使用すること、ターミネーター(終端抵抗器、120Ω)を付けることで防ぐことができます。
ターミネーターを付ける位置は、配線の先頭と末端の2か所です。付けすぎてもよくありません。(機器に内蔵されている場合はそれでかまいません)
4芯のケーブルなどで未使用配線がある場合はGNDへ接続しておきます。

マイクケーブルや電話用(インターホン用)ケーブルの流用もよくありません。

GNDを浮かせると直る?

トラブル対策として現場でよくあるのがDMX配線のGND(シールド線)を未接続にするというものです。
これでトラブルが収まってしまうため、それでいいものだと思われているフシがありますがそんなことはありません。
そもそもGNDをつなぐとおかしくなる場合は、つながっている灯体の間にかなりの電位差が生じており、信号を受信しているRS-485ドライバが無理をしている可能性もあります。
片端を未接続にした電線はアンテナとして働くため、ノイズを拾いやすくもなります。

アースの未接続、または、離れた場所のアースによる電位差も考えられます。
また、アースが接続されているとしても、グラウンドループの状態にあるかもしれません。
いったんコントローラー側と灯台側を切り離し、テスターで電位差(電圧レンジ、DCとAC)を測ってみると何かわかるかもしれません。

そんなときはスプリッター(アイソレーター、絶縁)を使用します。
スプリッターも適切に配置しないとその効果が得られませんので、適切な配線計画が必要です。

信号タイミング

古い灯体など内蔵されているCPU(マイコン等)の処理能力が低いため、DMX信号を取りこぼしていることがあります。
調光卓やDMXコントローラーを変えると直るときは、その信号タイミングの違いにより問題が起きたり、起きなかったりしている可能性があります。

こんなときは信号タイミングを調整して遅くすることができる機器を間へはさむことにより解決できます。

そもそも機器の問題・・・

1入力6出力のスプリッター、出力側はそれぞれ絶縁されていると思っていたら、入力側と出力側が絶縁されているだけで、6つの出力はRS-485ドライバは独立しているけども絶縁はされていなかったということもあります。
仕様の確認もれですが、カタログに書かれていないこともあります。
複数ある出力のうち1つから入り込んだノイズが他の出力に回り込んでいたなんてこともあります。

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