見出し画像

PTAの「強制」をなくし、さらに「強制『感』」を減らすために

 近年取り上げられているいわゆる「PTA問題」とは、「強制加入」・「強制参加」という「強制」・「強制『感』」の問題であり、「強制加入」の問題の解消のためには手続きの整備を行うこと、「強制参加」の問題は「活動エントリー制」の導入で解消できることは以前に整理しました(「強制のないPTA」とは?)。
 しかし、それでもゼロにはならない「強制『感』」を減らすためにはどのような工夫が考えられるでしょうか。

「加入」の「強制『感』」を減らすために

 PTAは、会員資格を持つ人(多くのPTAは保護者と教職員)が入会の意思表示をして会員になる「任意加入」の団体です。しかし、子どもの学校入学と同時に、入会の意思を確認されることなく会員となる「自動入会」で運営されているところも多く、入会申込書があったとしても、全員に提出が求められるようなこともあるようです。
 「加入」の「強制『感』」を減らすためのポイントなるのは入会に関する「説明」を丁寧にするしかないのかもしれません。入会申込書を整備して、入会の意思表示をして会員になる「任意加入」の団体であることを伝えることが前提となります。しかし、それ以上の説明はどのようにすればいいのでしょうか。PTAを運営する側(例えば会長)として、「『任意加入』の団体なので、入っても入らなくてもいいです」とはなかなか言えません(言ってもいいですが)。
 説明のポイントとなるのは「PTAの目的と活動に賛同して入会してもらう」というスタンスだと思います。

〇〇○学校PTAは△△△を目的として、□□□、♢♢♢や☆☆☆などの活動を通して、この学校に通うすべての子どもたちのための取り組みをしています。ぜひご賛同の上、加入と活動への参加をご検討ください

例えばこのような説明をして、理解と納得をしてもらい、目的と活動に賛同して入会してもらう以外に「強制『感』」を減らす方法はないと思います。もちろんこの他に、会員の義務と権利について納得できるような説明も必要です。
 名古屋市立吹上小学校PTA(以下、吹上小P)は
会員の義務
・入会申込書の提出
・個人情報の取扱の同意
・会費の納入
会員の権利
・PTAの活動への参加
としています。

「参加」の「強制『感』」を減らすために

 各クラスから選出する委員を廃止して、それまで委員が担っていた活動のすべてを募集する「活動エントリー制」を導入することで、システムとして「強制」をなくすことができます。それでも、会員であるからには何かの活動に参加することが義務だと考える人も多いようです。これも「加入」と同様に「やらなくていいですよ」とはなかなか言えません(言ってもいいですが)。やはり活動の目的と内容を伝えて「賛同」してもらい、会員の義務と権利について説明して納得して参加してもらう以外にありません。

 さらに、もうひと工夫として、吹上小Pでは参加アンケートに「今年度は参加できそうなものはない」という選択肢を入れていて、これが大事なポイントだと考えています。
 吹上小Pの参加アンケートでは参加形態によって「参加者として関わる」(赤枠)「有志で企画運営する」「サークル活動」(青枠)に分けています。「参加者として関わる」(赤枠)については「都合がつけばどれかに参加してみたい」(黄枠)の○をつける欄だけになっています。○を記入したからといって必ず参加しなければならないわけではないことを伝えているつもりです。また、最下部には「今年度は参加できそうなものはない」(黄枠)という欄も設けていて、こちらも参加しなければならないわけではないことを伝えているつもりのものです。「参加しない・できない」という選択肢があることを伝えることは「参加」の「強制『感』」を減らすために大事なことだと思います。

画像1

PTAの「強制『感』」を減らすために

 PTAの「強制『感』」を減らすためには、あらゆる運営上の強制をなくした上で、PTAの目的と会員の義務・権利を明確にすること。そして、それを伝えて賛同した人に入会してもらい、その目的に沿った活動に主体的に参加してもらえるようにすることが必要だと考えます。
 言い換えると、目的を明確に説明することで「強制ベース」から「賛同ベース」へ転換し、その目的に沿った活動することで「イヤイヤベース」から「やりがいベース」へ転換する、ということです。
 「PTAは親の義務」という感覚がなくなり、「PTAとは主体的に参加するもの」という原則が文化として定着し、PTAの「強制『感』」がゼロになるにはまだ時間がかかるのかもしれません。「強制『感』ゼロ」のPTAを目指して、さまざまな工夫を重ねていくことが必要です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?