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興収ではなく利益ベースで評価?

既に、共有しておりますが、先週実施のCannes Next Webinar "How can distributors and VOD platforms work together to grow audience"の録画と資料は下記のリンクから閲覧、ダウンロードできますので、是非、チェックしてください。

さて、劇場が営業できないという未曾有の自体に直面した映画業界は生き残りをかけ、劇場公開とほぼ同時に配信へ切り替えたり、劇場公開をせずに配信を実施した作品も出てきました。

こちらのnoteの記念すべき、初回記事でもいくつかの事例をご紹介しております。

Trolls World Tourの場合

2020/4/9にプレミアムVODとして配信開始されたTrolls World Tourですが、USでの売り上げとコスト概算を見ると面白いことがわかります。本作品は1作品目の75%の費用で製作されています。売り上げは1作目$154MM、今回のプレミアム配信は$100MMとこちらも、35%減少。但し、劇場公開と配信では売り上げの分配率が異なります。劇場の場合、配給会社への分配がこの場合、56%、配信の場合80%となっています。この為、Trolls World Tourの費用における売り上げの割合は39%となり、1作品目の33%を上回りました。

US以外の売り上げはまだ、全容がわかっていないので、単純に配信の方が費用対効果がいいという結論をだすことはもちろんできませんが、示唆的ではあります。

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利益ベースで考える?

このTrolls World Tourはプレミアム配信開始後、AMCシアターが今後はUniversalの作品を上映しない!など、後日ちょっとした論議を起こしました。現在は、関係は改善したようです。この件は、また別途。

ここで強調したいのは、劇場上映は映画の最終出口ではなく、その後、複数のチャネルで流通され、消費され(期待として、何年も)やっと費用を回収できるビジネスと言うことです。

劇場上映の成功は重要ですし、やはり作り手としては、劇場で多くの人に観てもらいたいという思いは強いと思います。

ただ、ビジネスとしての映画を考えた場合、マーケティング・宣伝の予算のほぼ全てが劇場公開に投入され、その後の流通における宣伝はおまけと言うのは本来の事業構造を考えるといささか不自然なのです。

配給側や制作者は少しでも回収期間を短くしたいので、仮にプレミアム配信の方が投下費用に対し、回収効果が高いのであれば、その期間を早めると同時に、配信の為にも費用をきちんとマーケティング予算をかけることが必要なのではないでしょうか。劇場公開タイミング、配信開始タイミング、宣伝の山、そして、当初の事業目標などを鑑みて全体のマーケティングをプランすることが重要になってくるのではないでしょうか。

劇場公開の興収だけでなく、作品の最終的な利益を最大化する視点と配信との共存がキーになるでしょう。

配給会社と配信会社が協力すべきこととは

作品の事業性を考え、利益を最大化するには配給会社と配信会社は強力なタッグを組む必要があります。配信プラットフォームで取得できるデータなどを活用し、配給会社は費用対効果を考え、宣伝費用などを投資、再投資していくことが必要になるのではないでしょうか。もちろん、劇場公開での成功はそれ自体が絶大な宣伝効果を生み出すので、重要であることには変わりありません。これは今後もずっと続くでしょう。劇場公開の成功だけでなく「利益」ベースで考える為には、配給と配信、そして、いずれは劇場が同じ経済圏の中で、それぞれの利益を最適化できるように協業していくことが大切になるのです。

是非、Cannes Nextウェビナーの感想や質問などお聞かせくださいませ!




配信、劇場公開に限らず、映画を効果的に宣伝することに興味があれば、是非、お声がけください。