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入澤美時『考える人びと』(双葉社、2001)を読む

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一線で活躍する専門家たちに博覧強記の編集者・入澤美時が鋭く切り込む。 インタビュー集を読んでいきます。
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2021年2月の記事一覧

入澤美時『考えるひとびと』より ー網野善彦・豊かになって失われていくこと。

人生を変える、という言い方は大袈裟ですが、自分の考え方を根本的に変えるきっかけになった本があります。入澤美時『考える人びと この10人の激しさが、思想だ。』(双葉社、2001)です。 網野善彦、伊沢綋生、安藤邦廣、大西廣、加藤典洋、根深誠、森繁哉、芳村俊一、森山大道、吉本隆明のインタビュー集で、当時ありとあらゆる分野の一線にいた方々が集結しております。この本が出版されたのは2001年。私が21歳で、たしか池袋のリブロで見つけて購入したように思います。値段も2500円で、この

入澤美時『考えるひとびと』より ー安藤邦廣・思えばあたりまえのこと

建築史研究者の安藤邦廣は、現代建築家でもあります。彼の特徴は、板倉構法の住宅利用です。この工法は、板倉という文字通り、もともと正倉院校倉などで利用されてきたものです。木材の柱の側面に溝を彫り、その溝にそって横板を落としこむことでそのまま壁とします。木材を連結する仕口や継手といった伝統工法も取り入れ、古来あった方式を再評価しつつ、法定された建築基準も満たそうとするもの。 もう現代では完璧に認知され、実践例も増えているようですが、刊行当時はまだそれほどでもなかったのか、インタビ