水が抵抗になる理由

 昨日のブログの中で

氷が滑る理由|GR ski life @GRskilife #note https://note.com/grski/n/n60f345640e44

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 「水が抵抗になるのは…」
 と、注釈で書いたところ解説して欲しい!とのメッセージを頂きましたので解説してみます。ただし結構噛み砕いての解説なので、間違っている点などがありましてもご容赦下さい。

 さて、経験ある方もいらっしゃるとおもいますが、ゲレンデの水溜まりにスキーで入っていくと、急激なブレーキをされたような感じがあったかと思います。また水分の多い湿った雪や、解けつつある雪では板が全然走りませんよね?

 この現象の主な原因は水の表面張力です。コップにそーっと水を注いだ時にコップの縁で膨らんでこぼれないあの現象です。

 水の表面張力は水どうしがまとまろう!とすることでおきます。なんでそんなまとまろう!とするのかは分子間力というものの働きで、水分子どうしがそれぞれ引き合って手をつなぎあっている。そんな感じです。
 水分子のふるまいは手をつなぎあっている状態のようなもので、それが必死に手を離すまい!と表面で頑張っているのが表面張力の状態です。

 この水の表面張力って液体のものの中では結構強い方で、アメンボが水の上を滑っている理由も、葉っぱの上で水が球になって転がるのも表面張力のお陰です。

 さで、ここで少し話が変わって接着剤の話。接着剤ってなんで貼り付くのか?と言うと、濡れるからです。
 はぁ?と思うかもですが、例えばプラスチックのトランプを一枚、少し濡らしてテーブルの上に置いてみて下さい。そう簡単にトランプを取ることはできません。コレにはファンデルワールス力と言う聞き慣れない力が関わっていて、水が介在してトランプとテーブルが引きつけあっていることで貼り付いています。このファンデルワールス力というのは、物を構成している分子が近付けば近付くほど強く作用する引きつける力なのですが、ファンデルワールス力自体は分子レベルで近付かないとそもそもその力が発生しません。そんな物体どうしの間に水(分子)があると表面張力によって物体の隙間を埋めて引き寄せあい、トランプとテーブルといった物体どうしに働くファンデルワールス力を増大させて張り付くのです。
 もし水がなくともツルツルしたものどうしであれば張り付きます。安物のトランプが張り付きやすくて、それなりの値段のトランプが張り付きにくいのは、印刷などの表面処理でツルツルにならないように工夫されているからだったりします。

 で、スキー板もツルツルです。水が介在しない氷点下であれば雪と板の間には水がほとんど無いのでファンデルワールス力は働きません。しかし氷点下以上だと水によって雪面との間にファンデルワールス力が働きはじめて張りつこうとする力(=抵抗)が産まれてしまいます。やがて滑るというよりも水を押し退ける!といった感じになって、滑りは著しく低下します。

 これを防ぐ方法が滑走面の凸凹、ストラクチャーです。敢えて表面が均一なツルツルにならないように微細な傷をつけたり、機械でごく浅く彫ったりして水を排水したり、ファンデルワールス力の働きが弱まるようにあれらの傷は付けられているのです。
※かといって傷つけすぎると今度は滑走面がヤスリのようになって摩擦抵抗が増してしまい、ファンデルワールス力以上に悪影響になったりします。その辺の加減はかなり難しいので、安易に滑走面に傷を増やす事はけっしてしないで下さい。

 また積極的に水をはじく事で物体どうしを近付けようとする水の表面張力を弱めて、結果としてファンデルワールス力を軽減させよう!と言うのがワックス添加剤、フッ素の効果です。ただしフッ素はこうした水が発生しない氷点下以下の気温だと邪魔な添加剤になって滑りが悪くなる事もあるので、低温度域ではフッ素はあまり利用されていません。

 と、かなり難しい話でしたが水が抵抗になるという話はどういったことかイメージできたでしょうか?解りません!というなら「雪は滑るけど水は接着剤みたいな感じになって滑らない!」と思って頂いて構いません。

 最後に蛇足ですが、ヤモリが壁にペタッとついて動けるのはファンデルワールス力を利用しているからだそうです。それと今更ですが、ファンデルワールス力はファンデルワールス「力」(りょく)です。カタカナの「カ」ではないのでお間違えなく…

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