コブが滑れない!

 スキー中級者の壁、コブ。不整地。
 これを一言で説明するならば、苦手な食べ物はどう足掻いても美味しく感じられないのと同じだと思います。

 そうは言ってもコブが好きでコブばかり滑っている方も居ますね。ええ、モーグルという競技で、モーグル好きな人たちはモーグラーと呼ばれてます。

 コブを滑るのって、ある種の達成感なんです。攻略が難しいコブラインを攻めて攻めて滑り切った時の達成感は、他の滑りでは感じられない快感です。「滑り切る」というわかりやすい目的があるので、初めて滑り切った時の快感はひとしおでしたね!

 じゃ、どうやって滑れるようになるのよ?と言った時、意外な盲点が解決の理由です。一つは「板」で、一つは「速度」で、一つは「目線」です。

 まず「板」ですが、実はコブというかモーグルって、それに適した板を使うだけでかなり楽に滑れるようになります。猛者はどんな板でも滑りますが、やはり専用があるというのは、「専用に勝るものはない」ということでもあります。モーグル用の板は他の板に比べ細く、柔らかく作られています。この板だから憧れるような軽快な動きができるのであって、普通の板やスキーボードで同じように滑るのは案外難度が高いものなんです。

 と言って、モーグル板をそのためだけに買うなんてなかなかできないこと。肝要なのは「違う」ということを意識することです。板が違うから要求される動きも技術も違います。
 だから、同じように滑る必要はないんですよ。まずは一つ越え、次は二つ、次は三つと、少しずつ自分が滑れるように越えていくコブを増やしていくことで、いつかは最後まで滑れるようになります。そうして次は最後まで滑れたコブをもう一度、二度と経験を積み重ねて、気がつけば自分の滑り方でコブを滑れるようになります。

 次に「速度」ですが、もしコブのラインに平行に普通の整地された斜面があるコースがあれば、コブで滑ってる人と同じ速度で滑ってみてください。思ったより「遅い」んです。可能なら同じ回数小回りターンしてみると、それが予想以上に速くないことが体感できます。
 コブが滑れない人は暴走してしまうから滑れないと感じますが、単純にいつもの速度で滑ろうとしてしまうから「速くなって」→「暴走」なんです。
 ・・・そうは言ってもコブの中で減速とかブレーキなんてできないじゃん?と思いますが、別に足を揃える必要のないんですよ、初期的には。ハの字だけで下まで滑ったって全然構いません。滑るのをくりかえす中でハの字をだんだん浅く、だけど滑り切れた時のスピードは超えないように滑れば思ったより楽に攻略できます。暴走しそうだったら外に逃げればいいですし、一度立ち止まればスピードは0から、またリセットして始められます。

 最後に「目線」。コブが滑れない人のほとんどは足元だけ見て滑っています。
 ちょっと試して欲しいのですが、その場に普通に立って足を見てください。簡単に見れますよね。
 これと同じことを今度は壁にピッタリと背中と踵をつけてやってみてください。おや?見れないことはないけどちょっと見にくい。
 もう一度壁のないところで足を見ると普通に見れる。この違いは?
 人はバランスを常にとりながら立っているので、足を見ようとする時もバランスを取っています。そして足元を見ようとすると自然に重心が後ろに傾きます。壁を背にした時に見づらくなったのは、重心がスムーズに移動できなくてちょっと違和感があったのです。

 で、このことがコブでは影響します。下ばかり見ているので自然に重心は背中側になり、後傾の形になって行きます。後傾になると暴走しやすくなるので、コブを滑るのが大変になります。※後傾がNGというわけではないのでそこはご注意下さい。
 さらに先を見ていないので動きの先行動作もできません。コブって、2、3個先のコブとその滑るところを見ながら滑っているもので、それを見ないで滑るのは目隠しして滑っているのも同然、滑れませんよね。

 ですがこの目線というのがかなり厄介で、今回あげた三つのなかで最も感覚的に取り組みにくいものです。ただ知っておくと、ある時にできた時に「あ、これか!」と気付けることができ、その瞬間から目覚ましく進歩できます。

 実はこの三つ、私がまだコブが滑れなかった頃に教わった内容だったりします。特に「速度」の意識は大きく変えるきっかけになりましたね。板の違いで得て、不得手が変わることはGRの板作りにも大いに影響しましたし、目線はコブだけでなく多くの滑りのために役に立っています。特にパウダーやバックカントリーでは目線がとてもとても大事でした!

 今回お伝えした内容で滑れるようになる!と保証はできませんが、少なくとも意識はシフトされると思います。良かったら頭の片隅にでも置いて楽しんでみてくださいね!

<重要>モーグルラインのルール、マナーについて

 ここは関連するのでこの機会に触れておきます。スキー場には「ゲレンデが予め準備したモーグルコース」と「自然にできたモーグル地形」があります。前者は競技や検定などのために作られたもので、幅や長さをメジャーで測りながら、人為的に構造物として作ったものです。なのでモーグルコースとされている所を滑る場合、当然そこに集う人たちはモーグルが滑りたくてそこにいるということをまず理解して下さい。
 その上でそこを滑る場合、先行者が絶対優先です。途中で長時間立ち止まったり、もし上部で待っている方がいるのに横から入ることはNGです。転倒などで立ち止まったり、途中で抜け出ることは全く構いませんが、板が脱げたり安全に戻れない場合はコースを離れ、安全を伝えた上でそこから下は諦めて次の方にコースを譲る必要があります。
 また丁寧に整備されていることも多いので、不用意にコブを削ったり、地形を変えることもNGです。掘れてしまって土など出ても、それを上手く避けて滑るのもまた技術なのです。

 しかし、自然にできたモーグル地形は全てではありませんが、これらのルールが適用されない場合があります。シーズン初めや春などはコース脇にこうした地形ができがちですが、ゲレンデによっては「モーグル地形を作らないように」と指導したり、でき始めたら整地するゲレンデもあります。もし狭いコースでそこにモーグル地形ができてしまうと滑れなくなってしまう他のお客さんもいるので、自分が滑りたいからと勝手にモーグル地形を作ることは基本NGです。モーグルコースとしてできているところでは用もなく途中で立ち止まるのは避けなければならないことですが、自然地形ではそれは全く構わないことで、上から滑ってくる人はそれを避けて安全に滑る必要があります。自然にコブが出来てそれを楽しむのは構わない事ですが、その前に様々なレベルの様々な滑る方が共存している場所なので、お互いが気持ちよく楽しめるようにお互いに配慮して楽しむようにお願いします!

 それとコブはケガや事故も多いところです。もし自分がケガしたり、他の方がケガされた時は速やかに周囲にそれを知らせて下さい。コブの裏側で転ぶと上からは見えない事もあるのでストックなどで異常を知らせたり、出発の合図を出してから滑るなどすると、何かの時に周囲が気付いてくれることがあります。
   これから練習して滑れるようになりたい方は先ず、初級向けの斜度の浅いコブのコースが用意されているゲレンデで練習する事をお勧めします。もしくは連続ウェーブが設置されているコースも練習に良いですよ!ケガ無くチャレンジしてみてください!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?