ノーズマニュアル_Moment

【検証結果】解放式ビンディングでノーズマニュアルについて

<注意>
 このブログ内の事を実際に行う場合は全て自己責任となります。当方は一切責任を負いませんのでご承知下さい。

 昨日この動画を上げたところかなり反響がありました。その詳しい解説になります。
 おそらく今どきのスキーボードを躊躇していた方々には大いに参考になるのでは?

ノーズマニュアルとは?

 動画で見て頂いた通り、スキーの先っちょだけで滑るトリックを「ノーズマニュアル」と言います。見た目も派手ですがかなり難しいトリックの一つで、これを目標にスキーボードを楽しまれている方も多くいらっしゃると思います。

 このノーズマニュアル。実は従来の外れない固定式ビンディングでないとできないと言われ、最近のスキーボードの解放式ではできない!?と思われてきました。実際解放式はヒールが外れる機能を有しているので、ノーズマニュアルの形に維持しようとするとバチン!と板が外れてしまい、ノーズマニュアルが出来なかったのです。

 じゃあ、なんで出来たのか。それをここで解説したいと思います。

ただ傾いてノーズを上げれば?

 ノーズマニュアルは体を思い切って前方に傾けると出来ます。すごく雑な言い方ですがこれだけで板の後端は持ち上がります。しかし持ち上げて維持するのが難しく、しかも滑りは強制的にフェイキーとなるのでもともとフェイキーが出来ていないと難しい技でもあります。

 実際はバランスをとるために足に前後差をつけて傾きます。この時あまり知られていませんが上げる足を自分に近い方にするのか遠い方にするのかで上がり方が変わり、自分に近い方で上げるとカチ上げノーズと言う思いっきり後端部が持ち上がる形に、遠い方で上げると薄く上げる薄上げノーズになります。この二つ、使い分けられる方はかなり少なく、見た目の派手さからカチ上げノーズの方が認知されています。

 このノーズマニュアルまでに入るための形作り、それが今回のコツでありキモになるのですが、解放式でノーズマニュアルをやる場合はできるだけ「引き上げる」やり方で一気に持ち上げないと板が外れます。具体的には板の先端部に体重を乗せて前方に傾くやり方ではなく、乗せたら前に傾かないのが大事でした。

 動画を見て頂ければと思いますが、私のノーズマニュアルの恰好はあまり前方に傾いていません。また背筋も曲がらず、まっすぐ下に体重を置いている感覚です。板の前後にバランスよく体重をかけることで十分に体重が分散され、板が外れてしまうリスクが小さくなっています。

 しかし多くの場合ノーズマニュアルの姿勢になるために強く前に傾くと思います。このやり方は固定は出来ますが、解放式はNGになります。

 よくわからないという方は、先ほどのカチ上げと薄上げ二つのノーズマニュアルが出来るかどうかです。できる方は多分解放式でもノーズマニュアル出来ます。が、できない方は外れてしまうでしょう。

それだけでない解放式だからこその事

 解放式ビンディングの付けられるスキーボードは、必ず内部にビンディングプレートと言う樹脂、もしくは金属の板が入っています。この板は少なくとも50cm以上の長さがあり、解放式ビンディングのスキーボードが柔らかく作れない最大の問題になっています。

 しかしノーズマニュアルは硬い板は難しく、やわらかい板はやりやすい傾向にあります。今回動画で使ったCrossはスキーボードの中ではかなり硬い板で、ノーズマニュアルでもあんまりたわんでいないのがわかると思います。

 つまり、解放式ビンディングのスキーボードはどれを選んでもノーズマニュアルが基本的に難しく、特に傾くことでしかできない方には「無理」と思われても仕方ないほどです。これが長らく解放式では無理と思われていた理由の一つでもあるのですが、これに加えもう一つに理由、ビンディング自体の構造も問題があります。

 固定式は板に対して最低限で設置するのでたわみを広く使えるメリットがあります。しかし解放式はビンディング自体も存在するので余計にたわまないのです。最近ではたわみを邪魔しにくいレールシステムの解放式もありますが、やはりこの点においては固定式に軍配が上がります。

どうやって解放式でやるのか?

 解放式は適切に板が外れるようS-B-BシステムというISOの規格に則った算出方法でビンディングを調整する決まりがあり、ほとんどはそれにより調整されています。ですがこの調整のままだとノーズマニュアルには適さないのでヒール側の解放値のみ調整する必要があります。
<<注意>>
 この調整は自己責任のものです。解放値は理由がない限り推奨値で使わなければ怪我の原因になります!

 私の場合は解放値は8になっています。で、今回のビンディングは後ろだけ9に強めて行いました。

 この解放値は強めるほど外れにくくなります。普通は7程度もあれば十分な解放値ですが、外れてしまっては困るワールドカップなどのスキー競技で使われている方々は、自己責任でそれ以上の解放値にしてめったに外れないようにもしています。このケースなどのようにユーザーが望めばそれ以上の数値にすること自体は禁止されていません。もちろん怪我とのリスクを天秤にかけるわけですので安易に行うものではないとここで強く言いますが、重ね重ね「自己責任」という事を承知の上で調整は可能です。

 ここで一つ。絶対に前側は強めるべきではありません。スキーボードの最も危惧される怪我に対しては、この前側の調整が最も影響します。ここを強めてまでノーズマニュアルをするのであれば、素直に固定式を選ぶ方が良いです。

 さて、危険について十分にお伝えしたところでまずは解放値を強めて外れにくくします。実は元の解放値のままでもできるのですが、やはり何があるかわからないので強めました。

 そして傾くのではなく引き上げることを意識して後端を持ち上げます。そして持ち上げたら板に乗っかるのではなく、ブーツのタンに脛で乗っている感覚で乗ります。

 さらに急激なギャップや自分から押し込むような動作は外れてしまう懸念があるのでやりません。カチ上げは正直雪に板が潜って長い時間滑れなかったのですが、薄上げでなら動画のようにいろいろ出来ました。

 今回の検証は他にも解放式が苦手とするバター系トリックなどにも有用な技術検討が出来ました。解放式のスキーボードは30年の歴史のある従来のスキーボードに比べ日も浅いので技術検討はまだまだこれからです。「こうしたらこれが出来た!」というような事があれば、ぜひ当方にも教えて頂けると嬉しいです。

 最後にノーズマニュアルを好んで行う方は、これまで通り固定式で楽しむのが良いでしょう。ただたまに少しやる程度の方ならば、解放式は難しいですが「アリ」だと思いますよ。



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