転ぶのは安全じゃない件

 昔からスキー界隈では「転べば上手くなる」とか、「転べば大丈夫」と言われます。またスキボだと「転ぶのもグラトリ」みたいな考え方もあります。

 しかし中の人は言いたい。転ぶのは安全じゃない!と。

 かくいう私も30年以上スキーを、スキーボードも25年以上やってきて、さまざまに怪我をしています。その怪我の全ては転倒によるもので、中にはわりと危険な怪我もあります。
 特にスキーパトロールとしての勤務経験の中で強く思ったのが「転ぶのは結局良くない」ということです。その結果私のレッスンなどは「転ばないセーフティ」を軸にレッスン方法を組み上げてやっています。

 転ぶというのは非常にリスクの高いことで、その一瞬でともすれば人生が終わってしまうことすらあります。私もスノーボードで転倒して記憶を飛ばしてしまったり、膝に手術しても元に戻らない可能性高い怪我を負ってしまったりしていますが、今でも滑ることはできますが怪我をきっかけにできなくなってしまったことはたくさんあります。また仕事に支障がでたり家族に迷惑をかけたりと良いことなんて何もありません。

 怪我はしないに限るんです!

 怪我をしないためには転ばないのが肝心です。そして転ばないためには自分の滑りのスキルを増やしていくことが大事です。
 転ぶ事に慣れてしまうと残念な事に上達が阻まれてしまうことが多々あります。これは滑りもグラトリも一緒で、私の経験上、転ぶ事に慣れてしまっている人ほどバランスの悪い滑りやリスクを感じるグラトリをしているように感じます。

 と言って否定ばかりではいけませんね。じゃあどうしたら良いか?答えは「ポジションを下げる(低い体勢で滑る)」ことです。高い位置から物を落とすのと低い位置からではどちらが衝撃が小さいか?といえば低い方ですよね。スキーも同じで、重心を低くするほどメリットは大きくなります。とくに安定感については低い方が有効で、安定感=転ぶリスクが減るということですから良いことばかりです。

 実際にスキー理論で三角形を考えることがあるのですが、板が底辺として安定させるためには高さは低い方がいい。ですがスキーで体勢をを低くするのは案外難しくて、とくにブーツが硬いので簡単ではありません。
 またこれはつい先日、有名なスキーヤーに教えていただいたのですがスキーボードは短いからこそ体勢を低くして滑った方が板がデカく見えて技の見栄えもいいしカッコよく見える!とのことでした。確かに彼のスキーボードでの滑りは同じ板を履いているとは思えない滑りでカッコよく、スキボを履いているのを知らないリフトの上のお客さんたちからは彼のパフォーマンスにたびたび歓声が上がっていました。

 そんな彼も慣れないスキーボード履いて様々な技を繰り出す中で転倒していましたが、安定感があるのでそのままリカバリーしてすべったり、板が外れても問題ないように滑りを続けてそれすらもカッコよく見えました。

 でもこれらは彼の技術に裏打ちされたものであって、普通の人ならば無事で済む転倒ではありません。限界の動きを知るからこそ、限界を超えた時の動きを知り得たのだと思います。

 少し話が逸れましたがそんな彼と滑る経験があって改めて「低く小さく滑る」というのがスキーボードにとってとても大事な技術だと改めて実感しました。私のレッスンでは必ず「小さくなって滑る」というステップがたびたび出てきますが、転倒時のリスク面だけでなく見せ方という部分でも重要なものと知りましたので、この点をさらに磨いてみなさんにお伝えしようと思います。

 転べば良いから転ばなように滑るにはどうしたらいいか?そこに考えをシフトしていくと劇的に滑りは進化する可能性が生まれます。もし伸び悩んでいるのならば、小さくなって滑ってみてはいかがでしょう?新しい世界が開けるかもしれませんよ?

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