解放か固定か―スキーボードのビンディングについて
今回はディープな話。スキーボードでは避けて通れない「ビンディングについて」です。
まずはここから。ビンディングはBinding、スキーの板とブーツを固定する器具です。よくスキーで、ガチャってはめたり外したりするあれの事です。
ビンディングは国際標準規格ISOによってその機能が定められていますが、これによって様々なメーカーやブランドの板とブーツを自由に組み合わせて履くことが出来るようになっています。
そしてビンディングには重要な機能が備わってはいます。安全にスキーを楽しむために確実に板とブーツを固定出来る事、そして万が一の場合に板が適切に外れる事です。
ビンディングが不安定だと板がグラグラして危険です。そして転倒した場合などに板が外れないと大怪我を負う恐れがあります。
そう言った事を未然に防ぐ目的で今のビンディングは出来ています。特に外れる事が大事で、これによって最大限ケガを防ぐ事が出来るようになってます。
ここで大事なのは「ケガを完全に防げるものではない」と言うこと。
適切に保持し適切に外れる事で、ともすれば再起不能に陥ったり死んでしまうような事を最大限防ぐ。なのでビンディングがついていてもケガをしてしまう事はあります。が、その程度で済んだケガと言うのは、外れなければそれ以上深刻なケガに及んでいた可能性があったとも言えるのです。
ただしこれは適切に調整されている事が大前提で、これもISOによって厳格に定められています。なおGRでは私自身が認定技術者であるので、適切な取り付けや調整が出来るようになっています。
でスキーボードですが、スキーボードは多くが100cm未満なので国際標準規格に則る必要がありません。100cm以上のスキーでは解放機能を持ったビンディングを取り付ける必要があり、これが世間では「ビンディング」と呼ばれているものですが、正確には「アルペンビンディング」と呼ばれます。
ただスキーボードでは後術する固定式もあるため、区別するために「解放式ビンディング」と呼ばれます。外れる機能のあるものはほとんどこれです。
固定式は非解放式とも呼ばれ、アルペンビンディングのような外れる機能が無い簡易的なビンディングです。多くは外れる機能が無いので非常に軽く堅牢で、ファンスキーブームの時のスキーボードのビンディングはほとんどこれでした。今でも根強い人気がありますが、ある理由で手に入れるのが困難になってきています。
スキーボードのビンディングとして最も有名なのはこちらの固定式で、解放式のビンディングのついたスキーボードに違和感を覚える人も多いのではないでしょうか?ちなみにGRでは非解放式と呼ばず固定式と呼んでいますが、それはこの固定式に準じた仕組みのビンディングの中には解放機能を有したものがあるためです。ただこれ、その機能は国際標準規格に則ったものではなく、適切に解放しないものなどもあるため解放式(アルペンビンディング)とは区別しなければならず、非解放式とくくるわけにもいかないので固定式と呼ぶことにしています。
※この解放する機能のある固定式は今でも中古市場で手に入る事がありますが、多くのものが一般の固定式と同じ見た目です。
解放式のメリットはなんと言っても外れること。これほど大きなメリットはなく、スキーボードに対応可能な解放式ビンディングの登場からスキーボードは再びユーザーを増やしつつあります。
脱ぎやすく履きやすいのもポイント。固定式は慣れないと脱ぎはきがしにくく、一度履いてしまうと脱ぎたくないものですが、解放式は一般のスキーと同じ仕組みのためワンタッチで脱ぎはきできます。
また、不意の際に外れてくれる事も安心感に繋がります。適切に調整されている限り滑走中に無用に外れる事はなく、万が一の時はスキー同様に外れてくれるので、ケガの程度を最大限低減してくれます。
対応可能なビンディングも増えたので目的にあわせて選べるのも良い所です。レールシステムと呼ばれる形式のビンディングであればブーツの大きさにあわせた調整も簡単で、わざわざ板に穴を開け直して付け直す必要もありません。
固定式はその堅牢性と軽さが最大のメリットでしょう。調整されていればそう簡単に外れない為、外れる事自体に不安を覚えるスキーボーダーには他に代えられないメリットです。そして軽いことはスキーボードがブームを起こした理由の一つ、この二つのメリットで想像を超える滑りを実現します。実際に解放式では困難となるトリックもあり、そうしたトリックを好む方は固定式を求める傾向にあります。また4×4(フォーバイフォー)インサート規格に準じた板とビンディングならばスノーボード同様に付け外しが簡便なので、複数台板をゲレンデに持ち込んでもかさばりません。
GR板はどちらも選べます。じゃあどっちがいいの?となりますが答えはやりたいことに合わせて、となります。
私のようにガンガン滑って楽しむ方なら解放式がお勧めでしょう。スキー同様の動きをスキー同様の速度で滑るのですから、万が一外れなければ大変な事になります。かつてテストの為に100km/hを超える速度で滑った事もありますが、固定式ではリスクが高すぎてとてもチャレンジしたいと思いません。
また、初心者ならば脱ぎはきしやすく転ぶ頻度も多いでしょうから解放式をお勧めします。
あとはパークをメインに遊ぶ方も解放式がお勧めです。キッカーで飛ぶ時、もし外れなければ大怪我になる事がありますし、アイテムに板を引っ掛けた時も外れなければ大変な大怪我になります。他にもハイクアップで脱ぎはきが頻繁にあるときにも解放式は楽にしてくれます。
グラトリを究めたいのならば固定式をお勧めします。ノーズマニュアルやバターなどのトリックは解放式よりも固定式のほうがやりやすく、足を高く上げるトリックでも重いより軽い方ができます。
なお、GR以外の最近の板を除くほとんどのスキーボードは解放式を取り付けられないので固定式一択になります。またもともと解放式が付いている板は固定式を選べません。(GRのSnowFairyを除く)
※付ける方法はありますが安くないのであまり現実的ではありません
軽さを求める方も固定式がお勧めできますが、実は近年、解放式でも固定式と同じかそれよりも軽いビンディングも登場していますので、場合によっては解放式をお勧めする場合もあります。
固定式を選ぶ際の大きな注意点ですが「安全性を担保に出来ないならば選ばない方が良い」です。固定式でもケガをしないコツや技術はありますが、そこに到るまでにもし万が一があったら大変な事になります。また解放式では認定技術者の取り付け、調整に関しては協会などでその機能が保証されていますが、固定式は全て個人の責任になるので自分だけでなく他人をケガさせてしまったときの事も考えておく必要があります。(固定式は調整不良などで不意に外れる事があり、もしその時に板が滑って流れてしまった時に他人をケガさせてしまう可能性があります。)
確かに有名な上級者は多くが固定式ですが、それは固定式で長く楽しんでいた経験もあってのこと。憧れもあるでしょうけどもGR板ならば中級以上のモデルは後にビンディングを取り外して解放式から固定式にする事も出来ますので、悩むなら解放式をお勧めします。
車のATとMTのように、人それぞれのこだわりがあり、求めるものは違います。個々の価値観だってあります。
だけど車の場合もどちらも車。スキーボードだって一緒です。固定式を知る人は固定式を勧めるだろうし、解放式を知る人は解放式を勧めるでしょう。
それぞれに良さがあるから悩むんですけどね。そう言うときは気軽に相談してください、多少の道案内位のことは出来ると思いますよ。
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