滑走面とワックスの話
GRではついに来シーズンモデルのSaltoroからシンタードベースを採用しました。これまではエクストリューデッドベースでしたが、ちょっと本格的なスキーにも使われるような滑走面がシンタード。ここで簡単にエクストリューデッド(EXT)とシンタードの違いをご案内します。
EXTとシンタードは何が違うかというと製法です。どちらもポリエチレンが素材に選ばれますが、作り方が違っていて、EXTをポリエチレンを溶かしてフィルム状に伸ばして整形したもので、シンタードは溶かしたポリエチレンに圧力をかけて整形します。簡単には丸餅とのし餅の違いで、丸餅は整形しても弾力が残りますがのし餅はカッチカチになります。
またポリエチレンにも細かい違いがあって高密度ポリエチレンを使って作られるのが多くのEXTで、超高密度ポリエチレンを使うのが多くのシンタードです。これはメーカーによってそのまま使ったり混合したりと様々で、それが滑走面の素材の違いにもなったりします。
難しいことは置いておくとEXTは柔らかく、シンタードは硬い。そう思ってもらって大丈夫です。
EXTはワックスが入らない?
割と耳にするこの話。EXTにワックスは要らないとまでいう方もいらっしゃいます。
しかし現実にはワックスはあった方が断然滑ります。EXTはワックスがなくてもある程度滑れる上にもともと性質としてワックスが浸透しにくい性質がってそれは元材料の差なのですが「シンタードに比べるとワックスが入らない」だけであってワックスが無意味ということはないのです。
実際にGRの試乗会にいらっしゃる方の多くが驚かれるのはGRの板の滑り。プレチューンとして行ったワックスでもこの差を体感していただいています。
実はEXTにはワックスを入れるコツがあって、板が冷えている状態ではワックスを入れない、というのと、リキッドワックスを有効利用するというコツがあります。
板が冷えている状態は毛穴が閉じている状態のようなものなのでワックスは浸透しにくくなります。室温程度にあたためるだけで入り方は違いますし、結果保ちも良くなります。※板を温めすぎると逆に劣化の原因になります。人肌以上に暖めるのはお勧めしません
そして再三お勧めしているハヤシワックスのリキッドワックス。これが非常に相性が良くて、作業も簡単でコスパも優秀です。もともと溶剤でとけているものなので浸透はばっちりします。
そもそもワックスは滑走の為だけでなく劣化からの保護のためにも有用ですし、1日を快適に過ごす為にも有用です。滑走面を良い状態に保つだけで1日は大きく印象が変わりますからワックスはぜひお勧めしたいものです。
シンタードとワックス
実はこれまでGRではシンタードの採用を見送って来ました。それはシンタードはワックスがないとEXT以上に滑らない滑走面になりかねないからです。
シンタードは硬くワックスが浸透しやすいのが特徴で、そもそもがそういうふうに作られています。競技スキーなどの世界ではコンディションに合わせたチューニングが必須で、1秒にも満たないタイムを向上させるためにワックスを選択して使うことは必要なのです。
こういう素材なのでメンテナンスは重要。硬いので元々雪面との抵抗が小さいのもシンタードの魅力ですが、しかし一度劣化させてしまうとその硬さが仇となり、やすりのようになって大きな抵抗になってしまいます。
それを防ぐのにもワックスは必要なのですが、レジャースキーを楽しむみなさんが適切に滑走面をメンテナンスできるかといえば無理があります。だったらシンタードほどは滑らないけどシンタードより劣化しても滑るしメンテナンスがしやすいEXTの方が良いじゃないか?と考えた結果がこれまでのラインナップです。
※ちなみに一度シンタードで滑走面を劣化させるとEXTの3倍は大変な作業をしないと元に戻せません。道具も必要なのでプロに頼んだ方が安くあがることも少なくありません。
メリットもあるけどデメリットもある。それがシンタードなんです。
そんなシンタードを採用した理由は、パークでの利用ではジブに対して柔らかく引っかかりやすいEXTよりも硬く傷つきにくいシンタードの方が圧倒的にパフォーマンスが良いからです。Saltoroの性格上滑走を楽しまれる方も多いと考え、その目的のために滑走面にシンタードを採用しました。
じゃあワックスを使えば良いのか?
単純にはその通りです。シンタードの場合、本当は適時ホットワックスやスクレイピング、クリーニングという作業も必要ですが、しないよりは全然良いです。リキッドワックスでも良いから常に使って浸透させておくとそれだけで長持ちします。
ワックスがないとスカスカのスポンジのようなもので、雪面の汚れや油などをシンタードは吸い込んでしまいます。そうなるとワックスを入れても入らなくなり劣化は進む一方となって、機械の手を借りるようなおおがかりな作業をしなければ滑りが悪いままになってしまうのです。
※そもそもなんでそんな隙間があるのか?というと、ポリエチレンだから仕方ないとしか言えません。見ても硬いプラスティックにしか見えませんが実はポリエチレンはそういう素材で、スキーの滑走面の素材としてこれ以上に優れた素材が無いので選ばれているわけですが…
しかしスキーのたびにそんな面倒なメンテ作業があったら嫌になりますよね?なのでここでもお勧めしたいのがやっぱりリキッドワックスなのです。
リキッドワックスは数あれどハヤシワックスのリキッドは全然違います。きちんと用途に合わせてラインナップされ、使い勝手も良いのです。スキーボードの場合ベースワックスという土台のワックスが必要ですがそれに使い勝手の良い「NF-02LQD」を使っておくだけでシンタードもEXTも劣化は全く変わってきます。春ならゴミや砂に対応すべくさらに硬い「NF-03LQD」を使っておき、さらに滑走性能をあげるために「ARL」や「Blendsベースリキッド」を使っておくとより滑りが良くなります。水が浮くような状況ならゲレンデで滑走面を拭ってから「ARP」や「Blendsトップリキッド」「SHF-01LQD」などと、用途や使い方に合わせて様々に選んで使えます。ワックスがなければ困るシンタードでもベースのリキッドを使っておくだけで滑りの気持ちよさは維持できますし、オフシーズンにメンテする時も簡単になります。
ちなみにハヤシワックスの商品はGRオンラインショップでも取扱があります※取り寄せになります
ワックスについて不安があればお気軽に尋ねてくださいね。
このようにいろいろあってシンタードは採用してなかったのですが、ここ数年でみなさんの活動の甲斐もあってスキーボードでもワックスを有効に利用して楽しまれる方が増えたこともありいよいよ?と考え採用します。今後も板の性能や性格にあわせて適切な滑走面を選んでいき、みなさんがストレスなく楽しめるスキーライフを送っていただけるようさまざまにご提案したいと思います。
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