スキーやスキーボードの撮影、動画作りについて(その4・見せ方、見え方の知識編)

この記事は連載記事です。(マガジンにまとめました!)

 前回一通りのお話をさせていただいたところ「もっと濃いめでマシマシで!」なんて話もありましたので、今回は少しリミッターを外しての解説です。
 ちょっと内容は難しいですが、これを知っておくと機材のチョイスや、見せ方の検討の参考になるので、ぜひ頭の片隅にしまっておくと、ある日の気付きでその引き出しが使えると思います!

人の目は自動高性能ズーム機能付き

 例えば富士山を見た時、その雄大さや迫力に驚かれた方も多いと思います。ふと写真が撮りたくなってパシャリ!と撮影して、あとでその写真をみると・・・あれ?思ったより迫力が無いっていうか、こんなに小さかったっけ?
 そんな経験、ある方が多いと思います。意外と気付きませんが、人間の目はとても高性能なズーム機能が備わっているのです。
 人間は注目したものを大きく見ることが出来ます。山や標識、小さな虫など、注目したものを拡大して大きくはっきりと見ます。

 アフリカの方で視力が5.0とかという話を聞いたこともあるかと思いますが、これも高性能な拡大効果で、遠くのものがはっきり見えるだけでなく、可能な限り拡大してみているそうです。

 これが見え方とどう関係するかというと、みたものと撮影したものは見え方が全く違うということです。なぜこのようになるかは、人の目はレンズにあたる水晶体や絞りにあたる瞳孔を自在に変化させることができ、さらに脳で高度に処理されているからになります。これがカメラの場合、自在にレンズを変化させることは出来ませんから、用途や見え方に合わせてレンズを変え、絞りを工夫したりして表現したい見え方に近くなるようにして撮影するのです。

 最近のスマホはレンズが増えてきていて気持ち悪いと思う方もいますが、これは見せ方が内部処理だけで追いつかないため、適したレンズを最初から用意してシチュエーションに合わせた写真が撮れるように工夫されているからです。

広角と望遠

 これは実際に見た方が分かりやすいでしょう。ちょうど私のスマホには望遠と標準、広角の3つのレンズがついているので、アングルを固定して撮影してみました。

望遠
標準
広角

 ちょうど目の前にあった赤い屋根の倉庫を中心にして固定して撮影しましたが、レンズの違いでこんなに見え方が変わります。遠くにある山も望遠だと大きく見えるのに、広角だと小さく迫力に欠けます。
 望遠から広角を比べるとその見える範囲もかなり変わります。望遠だと見えない手前のものが広角だとしっかり入ってきます。全体を見せる場合ならば広角はとても有用で、アクションカメラなどのレンズはだいたい広角のレンズで、広角の撮影をします。

 ではちょっとシチュエーションを変えて次の写真。

望遠
標準
広角

 恥ずかしながら我が家の前の花壇のようなものを同じ位置から撮影しました。望遠だとなんだか綺麗な花畑っぽいですが標準ではあれ?さほど?な感じで、広角では手入れが間に合っていないのがバレバレです。

 ね、見え方ってレンズで全然変わりますね。望遠も言葉のイメージでは遠くを撮影するものと捉えがちですが、対象をしっかりと見せる場合に有用なレンズで、人の目はどちらかというとこちらの見え方が印象に近くなります。

 とまあ、広角ってあんまりメリットない?な感じになっていますが、次の写真は接写した時のものです。

望遠
広角

 調整なしでそのまま撮影しているのでピントが甘いのはちょっと置いておいてもらって、10cm程度の距離で同じ被写体で撮影した2枚です。随分印象がちがいますよね?望遠は平面的で薄っぺらい印象なのに、広角は奥行きがあって臨場感があります。
 広角は周りの風景も入るので、周囲の歪みは出てしまいますが動きのあるものを撮影する時はとても効果的なレンズになります。また手振れに関しても広角はそれだけで望遠よりも優秀で、アクションカメラのレンズが広角なのはこれらの理由があるからです。
 ただ上で見せたように「見せたいもの」を撮影する場合、広角はかなり近づく必要があります。

さあ、沼へようこそ

 この「見え方」と「見せ方」をうまくコントロールするのがスキーやスキーボードでの撮影のキモになり、その撮影の出来栄えでその後の編集の手間や仕上がりが変わり、出来上がった動画の質が変わります。
 簡単にいうと、同じ機材で同じ撮影方法だと、見え方が単調で抑揚のない動画になります。同じ機材でも距離や撮影方法を変えることでメリハリが出ますし、動画撮影で表現しきれない部分を写真で補完するのもよい手法になります。
 そしてこれらを総合的に向上させようとすると、そこは沼なのです。見え方にあわせた機材やレンズのチョイスなどがはじまりアイテムが増え、それぞれの特性に合った撮影方法で撮影を行い、さらにアングルやフォーカスまでこだわると、望遠からの撮影・・・

 あ、望遠レンズの価格はググるとびびります。超望遠になると車が余裕で買えるものすら・・・。

とは言え限界はあるので(お財布的に)

 お勧めの撮影の構成としては「Insta360OneX2+Mac(iPhone)」もしくは、「高性能スマホ+アクションカメラ」かな?と思います。インスタは撮影方法と見え方さえ理解していればこれ一台でかなり十分な撮影ができます。しかし撮影→書き出し→動画ファイルと、書き出しという一手間があり、その書き出しが割と性能の良いPCなどでないとサクサクこなせないので、もっとも環境としてこなしやすいMacとの組み合わせをお勧めします。※アプリもMac向けに最適化されているので、最近のiPhoneをお持ちならかなり簡単に扱えます。
 この「書き出し」。実に見た目では分かりにくいのですが使ってみるとかなりたくさんの処理が可能なので、結構写真撮影すらカバーできてしまう強みがあります。ちゃんとした写真はカメラやスマホには敵いませんが、一台で一通り完結できるのは初心者的にはかなりアリだと思います。※撮影もすごく簡単ですし。

 高性能スマホとアクションカメラという組み合わせは、こちらは写真撮影も考えた場合です。スマホの写真用のレンズについてたくさんついていても、動画に使えるのは標準か広角の一つだけ!という場合が多いので、動画に関してはスマホはちょっと不得手がありますし、何より撮影で使う場合は落としたり壊す可能性があるのでお勧めしにくいです。アクションカメラはGoProのように超高性能で高価なものは本当にそれだけで十分な撮影もできますし、低価格の中華アクションカムも意外と侮れない実力だったりするので、手軽に始める場合はこの構成もお勧めです。※中華アクションカムは不具合が問題になることも多いので十分調べながら購入を検討して下さい。中の人も不良品?を買ってしまい返品したことがあります。
 アクションカメラの使用で写真撮影の機材が必要なのは、広角のみのアクションカメラでは、インスタのような書き出し処理がちょっと簡単ではないので、写真は別で撮影した方があとで色々楽かな?と思って事です。といっても最近のアクションカメラでの写真の切り出しもかなり良いものになってきているので、まあ高性能スマホはあればOKって所ですね。

 ここまで読んできて皆さんはお気づきでしょう。撮影はのちの編集を考えて撮影するのがとっても大事なんです!

手振れとデジタル処理の話(専門的な話を含むので補足として)

 撮影界隈で興味が出てくると「光学式」「電子式(デジタル)」という部分がちょいちょい出てきます。光学式というのは簡単にはレンズそのものの性能でズームしたり手振れ補正するもので、撮影後の画像は最も品質が高くなります。対して電子式は撮影データをデジタル処理を行なってズームしたり手振れ補正をかけます。簡単には電子式の方が画質が悪くなりやすく、特にズームに関しては期待できません。ズームするなら光学式一択と思ってもらっても良いかも。

 手振れ処理について、光学式はレンズを手振れにあわせてレンズを動かす仕組みだったりするので、実はスポーツなどでは限界があり現実的ではありません。なので一般的な手振れ補正は、十分広い範囲を撮影してフォーカスしている対象が常に中心にくるようにデジタル処理しています。なので手振れ補正が強くなるほど画角(撮影できる範囲)が狭くなり、近づいて撮影することが難しくなります。GoProなどで高度な手ぶれ補正をかけると思ったより画角が狭くなるのはこれが理由なのです。
 またInstaのような全周録画できるアクションカムの場合、手振れも何も全部常に録画しているので手振れという問題がなくなります。ちょうどドローンで撮影しているような、浮いているような絵になるのですが、これが実際のところちょっと慣れない雰囲気で気持ち悪さを感じる方も居ます。この問題は書き出しの時点で解決できますが、自動で書き出してくれる「ディープトラッキング」というデジタル処理だけでは解決できないので、よりこだわるならばとても時間がかかりますが、ディープトラッキングは使わず全てマニュアルで処理すると見せ方が自然に近づきます。
※ちなみに公開してもらった例のアレの動画はインスタのみの撮影ですが、書き出しに一番時間をかけています。やり方で結構色々な書き出しができるのでやはりインスタは面白いカメラだと感じますね。

 また、撮影するデータの画素数は大きいほど高精細な画像が撮影できますが、こうした画像はのちの編集時にズームや補正が簡単になります。対して画素数が小さいと編集するときにズームなどで画がギザギザになるジャギーがでてとても安っぽい絵になります。動画も可能ならフルHDでの撮影よりも2K、4Kといった高精細な画質で撮影しておくと、後の編集で大いに助けになりますし、PC上でも手振れ補正ができるソフトがあるのですが、こうしたソフトは高精細でできるだけ広く撮影しておくと、すごく綺麗な手振れのない画像に補正することが可能です。

 それと写真に限ってのことですが、もしAdobeのフォトショップが使えるならば、撮影したデータの画質を編集時にあげる事が可能になります。やり方も簡単、メニューのパラメーターをちょっといじってあげるだけ。とても便利な世の中になったものです。※ただし調子に乗って超高画質に出力すると写真のファイルサイズがギガを超える場合も・・・。あとAdobe高い・・・。

 というわけで見せ方、見え方についてお伝えしました。いやあ、濃い内容すぎて一度書いたんですが、濃すぎたので全部書き直しましたがまだ濃い!それでもこれらの内容を薄っぺらくも知っておくと、結構撮影の助けになるのでこってりラーメンでも食べながら読んでくださいね。
 次回は濃度を薄めに自分自身の撮影、「自撮り」についてお伝えしますね!

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