転ばないセーフティー!?

 新型コロナの話題が続きましたが、今日はスキボの話題に戻りましょう。

 スキーを教わったとき、多くの方が「転び方」を教わったことがあるかと思います。そしてスキボでは転び方がすごく大事で、特に転んでも板が外れない固定式のスキーボードでは転び方が間違っていると転んだ時に大怪我をしてしまうことがあります。

 そもそも、転び方ってなんなのでしょう?

元々は古いスキーの考え方

 かつてスキーがまだ真っ直ぐで長かった時代、今から30年くらい昔。この頃はスキーブームでスキーをやっていない日本人は少ないというくらいの盛り上がりのある時代でした。

 この頃のスキーは今より直進性が非常に高く、長さ故止まることも難しいスキーでした。そんな板でもし暴走したら……コース外に飛び出て大変な事になります。

 そこで「自分から転ぶ」事で最悪の状況にならないように、転び方を教わるようになったそうです。実際私も教わりました。

 しりもちをつかず、体側面を山側に投げ出す。そう言う転び方。

 ただ、これが今は余計に怪我をしかねない原因になっています。

カービングは転ぼうとすると捻られる

 現在、スキーの怪我として多いのは膝の怪我です。靱帯損傷、半月板損傷といった骨よりも軟組織に影響を及ぼす怪我が多いのです。実際に私も靱帯に半月板と怪我しています。
 これはカービング形状のスキーが普及したからと言われていて、カービング形状は板が傾くと曲がっていく形なので、基本的に膝は捻られやすくなるデメリットがカービングにはあります。そしてこのカービングで転ぼうとすると進行方向と板が曲がっていこうとする方向に大きな違いが出てしまい、酷く怪我をしてしまうことがあるのです。

 そしてそれはカービング形状を採用しているスキーボードにも同じことが言えてしまい、転ぶ事が危険に陥る事もあるのです。

 ですが固定式では転び方が出来ていないと安全に滑れません。これはブレーキのないピストバイクと言う自転車で止まり方を知らないと乗れない事や、クラッチの使い方を知らないとマニュアルの自動車に乗れないのと同じです。固定式の転び方は転んだら足を挙げること。上半身で受け身を取って、板が邪魔にならないように転びます。

 コレが実に難しい。一度体得してしまえば簡単になりますが、体得するまでがなかなか苦行になる人もいます。とっさに転んで足をあげられる人はいわゆる「運動神経が良い人」か、「柔道などの経験がある人」でないと簡単でないのです。

 そういった方に転び方を教えても、先ほどのカービングの特性で膝を捻られてしまうことは十分あり得るのです。

転ばないセーフティー

 これは私がスキーボードを教える際にお伝えしていることで、新しい考え方だと思ってください。

 転ばないセーフティーは、危険が生じた時に転ばないで回避する事を先に教える。と言うことです。ヤバいと思ったら「転べー!」って叫んでる方も多いですが、そもそもそんなときはものすごく踏ん張っていて止まることなんてできませんし、転ぶ事も無理です。そしてそうしたときに無理して転べばしなくても良い怪我を負う可能性の方が高くなります。

 暴走する前に暴走しない技術を習得させる。止まれなくなる前に止まれる技術を習得させる。そんな考え方です。

 そのために板をどうしたら安定して立っていられるか?どう使えば止まれるか?をまず自然に教えます。「こうすれば立てる!止まれる!」それを体感させるのです。

 具体的な教え方は非常に長くなるので今日は割愛しますが、この専門用語でいうところの「ポジション」「制動」を何よりも先に教えることで、「転ばなくても安定できる」事を体感させるのが主たる目的です。

 この時に大事なのが「転べば大丈夫」と言うようなことを伝えないこと。習得が不十分だととっさの時に転ぼうとしてしまい、逆に転べなくなって暴走するからです。

 それよりも滑走しているときの体勢を低くする事、それによる視覚的な安心感は初心者ほど絶大です。また、初期的に斜滑降を教えることで斜度に対する恐怖心の緩和の方法を伝えて「どうしたら怖く感じなくできるか」を体感させる。すると何かあったときに自然に体勢を低くして斜滑降しようとするようになるのです。斜滑降状態は転んでも捻られるリスクがはるかに和らぐので、直滑降状態で転ぶよりも安全性が高いのです。

 そして最初に止まり方、「少しでも動いたら止まる」からだんだんと滑る距離を伸ばして行くことで、意識せずにスピードコントロールの技術とスピードリミットを体感します。ヤバいと思った時にすぐに制動に入れるので減速は難しく無いですし、転ぼうとしない事で安定したポジションを維持できるのもメリットです。

 こうしたことを転ぶよりも先に教えて体得させるのが「転ばないセーフティー」のキモなのです。

転び方は?

 転ばないセーフティーを主眼においた導入の場合、これができている後であればいくらでも転ぶ事を教えても構わなくなります。何かの際に「コントロール」→「転ぶ」を行うので怪我のリスクが圧倒的に減りますし、完全な暴走状態で転ぶ事もほぼないので、転ぶ事がコントロールで手に負えない非常時の次の手段になります。

 何が言いたいかと言いますと、転び方を先に教えてしまうとカービングの特性上転ぼうとして板が膝をひねり、結果酷い怪我を負いかねないので、まず先に安定できるポジションとコントロールする事を体得させて、転倒による怪我のリスクを軽減させたい。そういう考え方なのです。

 これが転ばないセーフティーなのです。

 実際パト時代に、自分から転ぼうとして膝を怪我した方を何人も看ています。怪我した際には必ずどうしたらどうなったと聞くのですが、多くの場合「止まれなかったから転んだ」と言ってました。その中で共通して浮かんだのが「止まれなかったら転べ!」と言う教えで、そんな中でこの考え方に到達しました。実際にこの転ばないセーフティーのやり方で教えると滑れるようになるまでも驚くほど早くなりますし、メリットははかりしれません。

 とは言っても固定式を使うならば転び方は必須。それも安定した状態で転ぶのと暴走しているときに無理して転ぶのでは色々と違ってきます。

 どうでしょう?少し考え方が変わりませんか?

 固定ビンユーザーの方はこのような考え方をもって教えて頂くとより固定式の良さをお伝えできるのでは?と思います。単純には教える順番を変えるだけの事ですが、効果は大きいと思いますのでぜひ参考にしてみてください!

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