スキーボードの作り方

 GRではどうやってスキーボードを作ってるの~?って訊きたい方がいらっしゃるようですね。今日はそのお話です。

 GRではまずおおもとになるスキーの板をメーカーに依頼して制作して頂いております。この時に担当者と綿密に相談して構造や材料などを決定して作ってもらいますが、何度も繰り返して仕上げたテストの板の仕様と同じものになるように入念に確認して依頼します。

 このテスト板については設計や金型の作成、デザインの作成など多くの時間と労力がかかっています。いつも注文するときが一番緊張しますね。

 板が出来上がるとGRの方に送られてきます。普通のスキーやスノーボードメーカーならばここで製品をチェックして包装、梱包してお終いなのですが、GRはここからが違います。

 板をまずチェックしてA品とB品を仕分けします。B品のうち滑走に問題のないものはアウトレットとしてあとで仕上げます。スキーボードとしては高級な部類であるGRの板なので、きっちりチェックします。

 チェックが済んだら無用に傷がつかないように養生し、プレチューンを行います。エッジの調整と研磨、ワックスなどの必要なチューンを行ってGRの板として生まれ変わっていきます。ちなみにこの作業は何度も「手作業」とお伝えしておりますが、少しでも品質を高め、価格を安くするために手作業にこだわっています。
 機械化した方が安くなるのでは?と思うでしょうが、実はスキーボードって、短すぎて業界で普及しているような機械がなかなか使えないんです。それに今のところは手作業のほうがメリットも高いので、無理して機械化することはまだまだ先、今後の課題ですね。

 このプレチューン作業によってGRの板は「製品」としてようやく仕上がります。さらに必要によってここにビンディングが取り付けられ、皆さんの手元に届きます。

もっとディープな話

 そこんとこの話でなくてもっと根っこの「作る」方の話。

 スキー板を作るには「企画」「設計」「金型作成」「デザイン作成」「テスト」「評価」などという工程が必要になります。このうち最もネックになるのが設計と金型作成で、一般的にスキー板を作るための金型作成にはかなりのお金が必要になります。※メーカーや仕様によってまちまちですが、一般の人のボーナスくらいは簡単に吹き飛びます。
 この金型。ちょっと変更しようとおもったらだいたい作り直しです。ただでさえ高価な金型なのに作り直し…なので設計は非常に悩み抜きます。頭の中にある滑りのイメージが実現できるようにmm単位で設計します。基本的には失敗の許されない事なので最も大変です。と、同時に楽しいです。
 そして同じくらい大変なのがデザイン。どんなに性能が良くてもデザインが悪かったら皆さん満足しません。価格と性能に見合ったデザインを悩み抜きます。ちなみにこの工程が私は最も苦しみます。

 そうやって出来上がったテスト板を実際に滑走してテストします。ただ滑ってというわけではなく、設計通りの性能が出ているか?滑走感や取り回しに大きく影響するセンター位置の決定、そこから割り出すプレチューンの方向性など、それを自分の技量や滑り方をいろいろなユーザーを想定して繰り返しテストします。
 初心者なりに使った時どうか?後傾でしか滑れない人が使った時はどうか?など、その板のターゲットだけでない使用なども想定してテストします。ただフェイキーでしか滑ってないとか直滑降しかしてない時とかありますが、あれも立派なテストなんですよ。
 あえて雨の中で使うテストとかかなり過酷。ForFreeのテストの時、暴風雨でゲレンデにずぶ濡れの自分一人しか居なかったのはいい思い出です。

 そうして仕上がったものを評価します。コンセプト通りの仕上がりになっているか?そしてテストライダーにも乗って評価して納得いったものが世の中に出ていきます。

 これだけのことをやるのは大変!って思うでしょうが、ですが実際、私は仕事として滑ったことがある程度の全く作る側の世界にはいなかった、当時は専業農家だった一般のスキーボーダーでしたが、様々なご縁や幸運もあり、お陰様で今こうして皆さんに私の作った板をお届け出来ています。そして嬉しいのは乗って頂いて「良かった!」と言ってもらえること。試乗会で驚きをもってご評価いただくときなどは本当に頑張って良かったと実感しますし、ご購入された方からわざわざご連絡頂いてご評価いただけるのも本当にありがたいことだと思っています。

 もし皆さんの中で「よーし、俺も板作る!」って思う方がいらっしゃいましたら是非お手伝いさせて下さい。もっといろいろなアイデアの板が生み出されて多様性に増した新しいスキーボードの世界の為に、微力ながらも応援させて頂きますよ!

 それともしスキーボードでなく他のジャンルの板を作りたい!という方でも何かお役に立てるかもしれません。ウィンタースポーツの世界がより広がりを見せるために、手を取り方を組んで盛り上げていきましょう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?