GRのスキーボードのセンター位置は?【ブーツセンターとビンディング位置の関係】

 春って、意外とスキー板が売れる時期なんですよ。モデル更新があるメーカーなどは値引きがありますし、試乗会などで気に入って現行モデルなら買う人も多い時期です。
 GRでも特別販売ありますしね。

 で、スキーボードに限らずビンディング別売りになるフリースキーなどでしばしば問題になるのはビンディングをどこに付けるのか?です。

こちらはGRの人気スキーボードSaltoroですが、板をよく見ると真横に一本線があり、その前後にメモリが刻まれています。Saltoroは希望する乗り方にあわせてセット位置と呼ばれる板とビンディングの位置関係について、前に30mm、後ろに10mmずらして取り付けが可能です。

 なぜこのようになっているのか?というと、スキーやスキーボードはビンディングの位置によって細かくその乗り味、性格が変化できるからです。特に短いスキーボードではたった5mmの違いが大きく乗り味に作用することもあり、かなり大事なセッティング項目の一つになります。

 GRのスキーボードに限ってのことですが、基本的にGRのスキーボードは「乗って滑って楽しく滑走ができる場所」に設定しています。簡単にいうと滑走に最も適していて、滑走に一番良い場所を「センター位置」として設定しています。この位置とブーツに表示されている「ブーツセンター」を合わせることで、GRが想定した乗り味が十分体感できますが、このセンター位置とブーツセンターをあえてずらして取り付けることで、パークやグラトリが楽しめる乗り味や、パウダーで乗りやすい位置などに仕上げることができます。

 ここで注目ポイントは、GRの板は設計上の最もくびれているところがセンター位置に設定されていない事です。一般の、特に低価格のスキーなどではそういった位置に設定されることが多いのですが、GRではテストで様々な位置を確認して最も良い場所を見つけ、さらにその位置を生かすべくエッジチューンなどを決めて仕上がっております。見た目で分かりませんが、よーく調べるとセンター位置は微妙に太い位置だったりするんです。
 さらに難しい話をすると、キャンバーアーチの頂点に設定していません。この話はかなり難しいので割愛しますが、ここを無視すると極端に乗りにくくなったりするのでセンター位置の吟味は開発テストで最も気を遣うところになります。
 楽できたのは来季登場のOverwriteぐらいじゃないでしょうか?この板はドセンターセットが前提での開発だったので、セット位置の吟味がほとんどありませんでした。

 さてそんなセンター位置。フリースキーだと「板の長さの中心から何cmバック!」みたいな話がしばしば出てきますが、GRの板はこの概念はあまり必要ありません。この話は盲目的に、特にフリースキーでは当たり前に存在する話ですが、ぶっちゃけると設計上のセンターにセンター位置を設定している板以外ではあまりこれを意識すると、板の本来の性能を殺してしまうことすらあります。開発で吟味に吟味を重ねて決めているセンター位置に対して前後ならば乗り手の好みに合わせた効果が期待できますが、そういった位置を無視して取り付けると開発で想定していない位置や、設計上NGの位置に取り付けることもあり得るので、きちんとその板のセンター位置について確認してから検討した方が良いです。これがスキーボードだとマジで5mmの違いが圧倒的に変わる場合もあり、センターセットがかっこいいから!と取り付けて滑って見ると調子悪い・・・なんてことも起こります。

 専門的なところだとエフェクティブエッジ、有効雪接点と雪接点長を意識して位置を決めるのが失敗の少ない方向になります。最近のロッカー板だと前が意図的に長い場合があるので、この板の中心に取り付けると前が後ろに比べて使えるエッジが短くなり、終始後傾で滑らないと滑れない板になったりします。終始後傾って、すっごい太ももが大変な滑りなのでめちゃくちゃ疲れます。モモパンです!

 ただ、位置を変えると調子よくなる場合もあります。滑りが前傾気味だったり後傾気味だったりする場合、セット位置を変えるだけで滑りが楽になったり滑りやすくなったりする場合があります。人によっては全く同じ板なのに全然違う!と感じる方もいるくらいで、ポジションの癖の調整でセット位置を変えるメリットはあります。
 また滑走スタイルの部分で「俺はグラトリしかしない!」という方なら滑走性を多少犠牲にしても前寄りに、パウダーが好き!という方だと後ろにと変えると良かったりもします。こういう部分って実際は乗ってみないとわからないのですが、こんな時に便利なのがレール式のビンディングだったり固定式ビンディングの良さで、それぞれ簡単に前後にセット位置を変更できるので、人によってはシチュエーションや遊び方でその都度セット位置を変える方もいらっしゃいます。

 このセット位置を変えるという考え方、実は固定式が存在するスキーボードの世界ではかなり昔からある考え方で、一般のスキーでは簡単に変更できないセット位置変更をスキーボーダーは昔から楽しんでいました。今はレール式ビンディングの登場でスキーでも簡単に変更できるようになりましたが、20年くらい前だとセット位置変更はその機能がある専用のビンディングを取り付けないとできないくらい大変な事だったんですよ。

 ここでセット位置変更のご注意ですが、自分でビンディングの調整をすることはNGではありませんが、自己責任になります。そして解放式では「前圧調整」という確認を必ず行わないとビンディングが正しく動作せず、勝手に外れてしまったり外れなかったりというトラブルが起こりえます。自己責任では不安がある場合はS-B-Bの認定技術者に依頼するか、販売店に相談して行って下さい。前圧調整ができていない解放式ビンディングは、味見をしないで料理をするくらいリスキーなことなので十分ご承知下さい。

 ビンディングの位置関係って、実はかなり奥が深い沼なので2500文字程度では全く書ききれないのですが、興味がある方はちょっとでも頭に入れておいていただくと、何かの折に役に立つかもしれません。
 そしてセット位置でお困りの方は、来季のGR試乗会でお試し頂いても構いません!試乗板や自身の板で調整してぜひ最高の乗り味をお探し下さい!

#スキー #スキーボード #ファンスキー #GRskilife

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