CrossおよびOverDoseの終売について
先日軽く触れたご案内になりますが、GRのハイパフォーマンススキーボード「Cross」およびマルチユーススキーボード「OverDose」を終売とさせて頂きます。急なご案内で大変申し訳ございません。GRオンラインショップでは在庫限りの販売になり、店舗販売も同様になります。
これに伴い今季試乗会ではCrossとOverDoseの試乗がありません。期待していました皆様、申し訳ございません。
終売と決まった経緯はさまざまな事情が重なったことと、モデル更新の時期が重なった事です。これらのモデルは非常に評判が良く、長らくマイナーチェンジのみで販売しておりましたが、「次」を検討する時期にもありました。実際の予定では今シーズン末での終売予定だったのですが、昨年の世界的な供給不安や価格高騰、生産上の都合で追加生産が難しくなり、ひと足早い終売を決めなければならなくなりました。
実はこの2モデル。GRにとってはとても思い入れの強い板で、終売の判断には本当に苦しみました。
まずCross。先代モデルForFreeの直系のモデルで、スキーボードとして高い性能を求めたGRのフラッグシップだったモデルです。先代のForFreeと言えばGRのファーストリリースモデルの一台で、この一台は私が作りかったスキーボードでもあったものです。
まだGRが立ち上がる前、私はあるスキーボードに出会います。それは飯山のスワロースキーが販売していたEX99という板で、シンプルな特徴のない板でした。
しかしこの板、とんでもなかったのです。自分好みにチューンを繰り返すたびに増していく滑走性能。長板も楽しむ私が乗り込んでも支え続ける板の強さ、扱いやすい形状。その板はすぐに私のメインスキーボードになりました。
そんな板に出会った数年後、ご縁があってGRskilifeというスキーボードブランドを立ち上げてOEMで板を作ろうと検討を始めました。その時にまず思い立ったのがEX99を作ったスワロースキーで作れないか?という事。早速電話して話を聞いてみたところ、なんと同じ金型を使っての生産がOKに!それがいまからちょうど10年前の11月の今頃の話になります。
そして自分なりにデザインし、使う材料を吟味してリリースされたのがForFreeでした。ForFreeはスキーボードとしてはおそらく世界初、フルチューンしての販売を前提にしたスキーボードで、GRという板の特徴を皆さんに伝えてくれた板でした。
ですが、ForFreeはちょっとピーキーでした。私がEX99で納得したチューンをベースにForFreeのチューンメニューは決まって作ったのですが、ちょっと一般向けでないというか、私好みすぎてスキーボードが経験ないと乗りにくいモデルでもありました。そのことを反省し、より乗りやすさを考慮してチューンを吟味し、さらに素材を変えてフレックスを調整したのがCrossというモデルです。
CrossはそのおかげもあってForFreeのようなピーキーさはマイルドになりつつも、スキーボードらしい反応の良さ、ぽんぽんと跳ねるようにターンが刻める軽快な楽しさをそのままに、グラトリも得意なより幅広いみなさんに楽しんでいただけるモデルに進化しました。デザインもやってみたかったトライバルデザインとリバーシブルリンクデザインを用いて、GRをイメージしてもらえるくらいにフラッグシップとして活躍しました。
OverDoseはOversizeの直系後継モデルで、成り立ちはCrossに似ています。そしてOversizeはGRが初めてオリジナルで設計したモデルになります。
ForFreeリリースの同年、Oversizeの企画が進みます。Oversizeは従来あったスキーボード、当時ファンスキーのイメージのサイズ感を拡大、拡張しようと初めて設計図を引いたモデルで、手探りでとても苦労したのを覚えています。リリース前のテスト滑走の時なんて、当時手伝ってもらっていた仲間に乗ってもらった結果
「これ、ないわ」
とひどく酷評されたのを覚えています。※私もダメだと判断しましたw
その後にダメな部分を修正し、世に出たのが105cmのOversizeです。ForFreeと対照的なモデルで、乗り味の目指したところは長板スキーの扱いやすさ。なのでスキーボードとしてはルーズな乗り心地で、大きく、なんでもこなせるマルチなスキーボードが誕生しました。
このOversize、物珍しい見た目とサイズ感からあまり売れなかったんですよね。しかしここでの経験はのちのKleshaの設計に生かされるので無駄にはなっていません。
Oversizeはロングノーズ気味の設計だったので、そこに忌避感を覚えるユーザーも居ました。試乗会でも好評だったものの、立ち位置が曖昧なふうに感じられたこともあり、マイナーチェンジが求められました。
そこでチューンの見直しなどから生まれたのがOverDoseです。Oversizeのマルチな汎用性はそのままに、よりスキーボードらしく使いやすい性能を持たせました。もったりとした乗り味をよりはっきりと「コントロールのしやすさとずらす楽しさ」にフォーカスし、持ち味の大きさを全面に生かしたモデルに進化させました。OverDoseは先代とは比べ物にならないくらい愛されて、実は昨年、さらなる進化を求めて素材の変更などでテストをしていました。
が、この進化は没になります。どう手を入れてもOverDoseの売りだった「ずらす楽しさ」が「ずれ過ぎて楽しくない」になり、チューンでエッジを強めると「ゆったりとした安定感」が「キレないエッジ感」になりと、素材やチューンのマイナーチェンジでは次が見えないものになっていました。
そうしてこの2モデルは終売が決まり、その終了のタイミングが今シーズン末・・・だったのですが。
とは言えこのような背景のあったもの。今でも愛好者は多く、この2モデルを目的に試乗会にいらっしゃる方も大勢いらっしゃいます。GRの最初とGRのイメージを作り上げてくれた大事なモデルなのでこの先も作りたいと思う気持ちも大きかったのですが、全く新規に「次」を見据えることにしました。次は全く違うものになるのか、進化版になるのかはお伝えできませんが、彼らの後継は必ず登場します。
次が出るまでしばらく時間はかかりますが、次に出る新しい2台をご期待ください!
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