スキーボードが減ってしまった訳※十年前の暗黒時代

 年々、着々とユーザーを増やしているスキーボード。先日仕事の都合で銀行の営業の方とお話をしていて、ふとそんな話になりました。その中で「増えてきた理由って何かあるんですかね?」と、ウインタースポーツはあまりしないという営業さんに訊かれました。

 そもそも、スキーボードはとても急激に増えて減った、ミーハー的な流行のあったものでした。登場したころはまだスキーブームの余波が残る頃で、スキーは一般にも深く浸透したスポーツでしたが、そのころの板は今の形状と違ってとても長く、扱いにくいものでした。
 だって、2mくらいあるんですよ。そんな長いものを両足に取り付けて自由自在に滑るのなんてとても難しい事でした。
 その時期に登場したスキーボードは日本でファンスキーの名が与えられてブームになります。お店ではずらりと並び、軽くて安くて手軽で取り回しの楽なスキーボードはあっという間に世間に受け入れられました。
 その頃にスキーボードを始めた方々は既にアラフォーな年代ですね。私もそうです。

 しかし急激に発展したスキーボードには、無視できないデメリットが潜在的に有ることが判ってきます。それは安全性に欠けるという事でした。安全性と言うのは流行から一般に浸透するために必要な事ですが、これの解決がとても難しかったのです。
 もちろん技術でそれを補う事は可能でしたが、とは言ってもその技術習得をユーザー皆さんが得ることは難しく、ついには業界の方からも危険性の指摘が出てきます。転倒などでひどい怪我になる傾向が大きい事は、あまり喜ばしい事ではありません。

 この解決の一つは、今は当たり前になってきている普通のスキーと同じ、外れるビンディングの実装でしたが、当時スキーボードに適した外れるビンディング、解放式ビンディングはまだ登場しておらず、それに近い性能のビンディングも、板の良さを殺してしまうような仕様だったために受け入れられませんでした。こうしてメーカーの多くがリリースの縮小などし始め、スキーボード市場は急速に閉じはじめていました。スキーブームも去ってスキーヤー人口は減少の一途、スノーボードブームから若いユーザーもスキーから離れ、同じ様にスキーボードユーザーも減ってきていました。

 そんな悪いニュースが蔓延しつつあった頃に世界を襲ったのがリーマンショックで、これがとどめになります。業績に余裕がなくなったメーカーは、売れないスキーボードから撤退します。ついには売り場でもなかなかスキーボードが見られなくなり、あの流行が嘘のように消え去ってしまいました。

 スキーボードにとって運が良かったのは、この頃にはネットでの交流や売買が当たり前になっていて、しかもスキーボードに適した解放式ビンディングが登場したことでしょう。ネットが無ければ辞めていたユーザーも多かったと思いますが、ネットによってユーザーがつながり、小さいながら市場も維持されました。そして危険性ばかりのことだったスキーボードに転倒時などにはずれてくれるビンディングが登場したことで、初心者から玄人まで多くの方が楽しめるようになったのです。

 そこからは微増ながらユーザーを増やし、かつては滑っているのがゲレンデの中で自分だけ、という状況から、スキーボードは珍しくない存在に変わりました。これはスキーボードの魅力にずっと続けてきた皆さんと、そう言う方々を見て新たに始めて楽しんだ皆さんあってのことだと思います。

 未来的には、今のスキーの世界は世界情勢にも影響しているため、現状が改善されなければより親しみにくいスポーツになってしまうかもしれません。が、スキーボードは増えてきています。楽しんでいるかたが楽しいと喜べるよう、GRも一緒に楽しんで広げていきたいと思います。

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