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【基礎から学ぶ人事制度│評価制度編③】人事評価シート設計のポイント~業績・行動評価シートの作り方~

このコラムは、グローセンパートナーの人気セミナー「動画で学ぶ人事制度」の内容をまとめたものです。人事制度から人材育成・教育に関する全体像を理解し、人事制度設計で押さえるべきポイントを説明します。

動画で学ぶ人事制度とは
動画とテキストに沿って演習や事後課題を進めることで、人事ポリシーの設計、等級・評価・報酬制度の概要設計、教育体系などの概要設計ができるようになっています。より詳しく学びたい方は、ぜひテキストをダウンロードして動画をご覧ください。

弊社HPから人事評価シートのテンプレートをダウンロードできますので、こちらもあわせてご活用ください。

今回は、評価シートの設計の仕方について具体的に解説します。ゴールは自社の評価シート設計・改善のポイントが理解できることです。


業績評価シートの作り方

一般的な人事評価シートは、業績系(目標管理など)と行動系(能力評価基準・行動評価基準・コンピテンシーなどに基づく評価など)で構成されます。まずは業績評価シートの作り方から解説します。

目標設定する際には、少なくとも3要素「何を(①目標項目)・どこまで(②達成基準)・どのように(③実行計画)」を書く必要があります。必要に応じて、④期限 ⑤役割分担などを追加してください。

業績評価シートの例

弊社の考え方としては、「①目標項目」と「②達成基準」は上司から期待として伝えるもの、「③実行計画」は部下が企画・構想するものと考えています。一般的には、上司から営業目標(例えば、売上高3000万円)を伝えられ、それをどう達成していくかは部下が企画・構想して、構想案を③実行計画に記載して、目標設定面談でその実現性などを話し合う流れになります。

まずは、①目標項目、②達成基準、③実行計画のそれぞれの書き方について解説します。

①目標項目(何を)

  • 「対象」+「方向性」で示す。
    例)売上の拡大・コストの削減・マニュアルの作成 など。

  • 上司方針と関連した内容・上記の期待値を記載する

②達成基準(どこまで)

  • 客観的に達成が把握できる表現にする。

  • 達成状況を測定できる表現にする。
    悪い事例:プロジェクトの推進・部門間の調整

  • 定量目標は、「指標」と「数値」で示す。

  • 定性目標は、達成した「状態」を具体的に記載する。

③実行計画(どのように)

  • 目標を達成するための、「手段」や「スケジュール」などの具体策を記載する。

  • 目標を達成するために、自分がやろうと思っている「仮説(Plan)」を記載する。「仮説」なので、実行の後に「検証(Check)」が必要である。PDCAサイクルを回しながら実行していく。

  • 「仮説」なので、全て実行したら達成基準を上回る程度の具体策を事前に考えておくとよい。

改善が必要な業績評価シートの例

以下のような業績評価シートの場合、改善をお勧めします。

  • 実行計画がないケース
    達成基準だけが記載されているため、単なるノルマに近くなってしまいます。

  • 達成基準と実行計画が混在するケース
    達成基準と実行計画を書く欄が一緒になっていると、どちらを書いても良いということになり、実行計画だけが書かれるケースが増えてしまいます。

  • 達成基準がないケース
    この場合は評価ができないため、達成基準は必ず含めてください。

①目標項目 ②達成基準 ③実行計画の3つの項目は少なくとも準備しておきましょう。

業績評価シートの考え方

期初に「①目標項目」「②達成基準」「③実行計画」を記入する欄と、期末に「達成状況(結果と振り返り)、自己評価と一次評価、一次評価に連動する得点の欄を設けましょう。

業績評価シートの例

業績評価シート設計のポイント

  • 重点課題・成長課題は達成基準を設定して絶対評価にする。

  • 優先順位の高い重点課題・成長課題を3つ程度に絞り込む。

  • ウエイトや難易度は設定しない。

  •  目標項目・達成基準・実行計画の3要素を必ず入れる。

  • 日常業務の評価や期中の役割変更は、調整評価で調整する。

行動評価シートの作り方

行動評価は成果だけでなく、行動面も評価したい、社員の成長を促進したいニーズに応えるものです。行動評価シートは、評価の基準となる「評価項目」ごとの「求める行動」に対して、期初に「成長課題」を設定し、期末に評価をする流れになります。

行動評価シートの例

行動評価シート設計のポイント

  • 求める行動に対して成長課題を設定する
    多様性の時代に入り、全員に同じ求める行動を求める時代ではなくなりました。部下 1人ひとりの個別理解(強みや力量などの理解)を考慮したり、キャリアを考えた成長課題を設定しましょう。

  • 評価は求める行動に対する絶対評価とする
    行動評価は、求める行動を基準にした絶対評価で行うことを推奨しています。成長課題は、あくまでも求める行動に近づけるための成長課題であり、毎年少しずつ評価が向上していくイメージです。

  • ウエイト・難易度は記載しない
    重みづけや難易度設定はしてもよいですが、評価の流れが複雑・煩雑になるだけで、結局調整はしたくなるものです。しっかり調整機能を盛り込むことで、できる限り評価の仕組みは簡素化したいものです。

  • 求める行動は、6~10程度 に絞り込む
    求める行動が多すぎても、全部は意識してできません。最大でも10個前後で良いと考えています。多すぎると、評価が中心による問題が発生します。 

調整評価は必要だが、行動評価を調整弁にしない

評価シートの行動評価の「一次評価」欄では調整評価させないことを徹底します。ここで調整してしまうと、「求める基準ができているがC評価」もしくは「できていないがA評価」などのように評価ルールが崩れてしまい、求める行動に対してのフィードバックができなくなってしまうからです。

こような問題が発生しないためにも、一次評価で評価調整ができるように、評価シートに調整評価機能を盛り込むことをお勧めしています。
下の図の事例を見てみましょう。

評価シートの例:調整評価の機能を盛り込む

業績に関する評価は絶対評価であり、行動に関する評価も同様に絶対評価です。それを基に一次評価点が自動で計算され、ここまではすべて絶対評価です。各評価はウエイト付けされた得点として算出されます。

この図の事例では、「算出された得点(この例では3.9)を、A評価またはB評価にするために多少の調整を加えてもよい」という形で、調整の余地を持たせ、最終的に「最終評価は相対評価」となります。

求める行動(行動評価の基準)の作り方

戦略的に求める人材を変える必要があれば、行動評価の基準となる求める行動は、「過去軸」「未来軸」の両面から抽出する必要があります。

過去軸:これまでパフォーマンスを上げてきた人材像
我が社における成長ポイントということで、現場の好業績者はどんな人かを聞き取りします。これまでこんな人が成長してきた・成果を出してきた(過去軸)という、過去から求める行動を抽出します。

未来軸:これから求める人材像
会社の経営理念や戦略に基づいて、こんな社員が育って欲しいという未来軸を抽出します。基本的にインタビューを通して両軸から抽出したものを、等級別に求める行動として言語化していきます。

求める行動の策定はシンプルにする

以前は現場インタビューなどを行い、行動評価の基準作りに時間をかけていましたが、最近はあまり手間をかけていません。その理由は、以下の3つです。

  • 職務基準(ジョブ型基準)の策定は行っていない
    日本では仕事の範囲があいまいで、職務基準の活用が難しく、完成してもすぐに陳腐化します。また、その追加や修正に人事部門や現場が時間を割く余裕がないためです。実際に人事部門から現場に基準の見直しを依頼しても、対応しきれないことが多いのが現状です。

  • 行動基準の策定も簡素にできる
    様々な業態の人事制度の設計してきましたが、会社が求める人材像はほぼ共通していることがわかりました。弊社で準備する「求める行動ディクショナリー」から抽出したり、必要な項目を抽出し、修正・追加することで、簡素に完成させることが可能です。

  • 職種別求める行動基準の策定も行っていない
    職種別に求める行動基準を詳細に策定しても、個人に当てはめる際には表現を変えるなど調整する必要があるためです。特にスタッフ職では、財務担当と総務担当では求められる行動基準が異なり、それぞれに合わせた表現調整が必要です。詳細に作り込むほど、更に細かい調整が求められるため、このジレンマから最近は対応を簡素化しています。

求める行動の基準に関しては、下記の通りどの会社もほぼ同じです。

等級制度は、新入社員クラス、一人前クラス、中堅社員、管理職一歩手前の中核社員、マネジャー、経営層の6〜7等級で構成されるケースが多いです。等級別に求める行動を抽出していきますが、上記で述べた「求める行動ディクショナリー」を活用する際の例として、下記のように役員に◎や〇などで求める行動の重要度を記入してもらい、重要な順に抽出していきます。

例)求める行動ディクショナリーの活用

この表は、ある企業で求める行動を策定した事例です。表のNo.1からNo27までの求める行動について、社長・専務・取締役に「どのような行動を求めますか?」という質問をし、〇または◎をつけてもらいました(この表では、左から2・3・4列目)。その中で、多数が「大切」と考える行動項目(オレンジ色)を軸に求める行動をカスタマイズしていきました。

このような方法で、実際に2時間程度で求める行動を策定することができます。弊社HPから「求める行動ディクショナリー」をダウンロードできます。こちらをたたき台にして議論することにより、効率化が図れますので、活用いただければ幸いです。

▼等級別の求める行動のつくり方と活用のポイント(求める行動ディクショナリー付)

▼人事評価シート活用マニュアル(テンプレートあり)


より詳しく学びたい方へ

より詳しく学びたい方は、動画をご覧ください。テキストと演習用ワークシートは弊社HPからダウンロードできますので、ご利用ください

動画

テキスト・演習用ワークシート

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