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一枚の自分史:留学生たちに振袖を着せてあげたい!

2002年1月12日、52歳になってすぐの頃
「留学生振袖の会」がスタートした日でした。
この会は、来年、コロナ禍がなければ、2021年で20回目となる予定でした。

その2年前、娘が通う桃山学院大学の学園祭、保護者の会の活動でバザーの会場には、500円のタオルセットを買うのに逡巡する台湾からの男子留学生の姿がありました。国の親への土産にするという。親孝行に免じて半額にしてあげるというと、やっと愁眉を開いた。日本の学生たちは、もう、500円を消費するのにこんなに悩むことはない時代なのに、聞けば、急激な円高が留学生たちの生活を直撃しているという。それが留学生たちとの出会いでした。

その後も、国で思っていたよりも厳しくて寂しいと言いながらも健気で真摯に学ぶ姿に触れる機会がありました。「日本の女の子のように成人式に振袖を着るのが憧れ」という。

日本で学ぶことを励まし、いい思い出になるのならばと「振袖を着せる会」を企画しました。家のタンスに眠っている振袖を持ち寄って、私たちで何とか着せてあげられないだろうか、喜ぶ顔だけを思い描いて、同じ年頃の娘を持つ身、わが子も、遠い国で学ぶことがあった親の立場からの個人ができる会の範囲で始めたのです。

ところが、多くの人や大学を動かすことになり、私にできるのかという不安の中、人の善意だけを頼りにスタートしました。

振袖が20組集まり、着付けのボランテア、写真撮影のボランテア、ヘアー担当の女子学生、初詣に案内するお父さんたちとどんどん協力者が集まりました。
学校側からは、チャペルの談話室を更衣室に使わせてくださいました。

当日、お天気までも応援してくれているかのようなぽかぽか天気。留学生たちは次々とかわいい姿に出来上がりました。

お母さんたちが持ち寄った手作りのお赤飯やおむすびで心づくしのお祝いをし、集合写真も撮りました。そこではまたも奇跡が起こりました。たまたま学長が通りかかって、記念写真に収まって下さいました。

留学生たちははしゃぎっぱなしの1日でした。みんなが「お母さんありがとうございました」と涙をいっぱい溜めて言ってくれました。こちらこそ、こんなに熱い思いにさせてくれたことにありがとう。

昔、親たちが娘へ贈った特別な思いの振袖を惜しげなく着せてくれたこと。単に美しい着物を着せてもらったのではなく、日本の親の娘を思う美しい心も一緒に着せてもらったことをお伝えしました。多くの無償の善意に出会えた奇跡の一日でした。

困難なこともたくさんありましたが忘れました。
それから7回を数えて、寄贈の振袖も充実し、モノも揃い、いろいろと整った形で現役の大学生の保護者のお母さま方に引き継ぎました。

今は継続を目的として組織化され、恒例化された華やかな会となり、始まりの思いがそのまま継続されることは難しくなりました。
けれど、毎年、あの頃の善意だけしかなかった思いをぶちまけたような自分の作った文面が恥ずかしげもなくそのまま残された案内が届くたびに、やり続けてくださっていることが有難いと思うばかりです。

2021年の会は中止になってしまいましたが、これまで一度も休みなく行われてきたこと続けられたことこそが奇跡だと思います。

多くの人の優しさに感謝しかありません。

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