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黒人の身体能力は生まれつきなのか。

紹介書籍 『人種とスポーツ 黒人は本当に速く強いのか』 川島浩平(2012) 中公新書

多くの人は黒人について運動能力が高く、走りやジャンプ力があると思っているのではないでしょうか。最近では東京オリンピックがあり、陸上やバスケなどでの黒人選手の活躍が記憶に新しいと思います。しかし、水泳と言うとどうでしょう。あまり黒人選手が水泳で活躍しているところや出場しているところを見たことないはずです。本書は黒人の身体能力は生まれつき優れている」という主張を次の二つの点から再検討することを目的としています。第一に黒人をめぐるステレオタイプや能力の生得説は歴史的に形成されてきた点です。第二に「黒人」とみなされる人々を運動競技種目で優位または劣位に立たせる環境的な要因についてです。

うなぎのエリックを知っていますか。
2000年のシドニーオリンピックで赤道ギニア代表の選手につけられた愛称で、男子100メートルの自由形の予選に出ました。本書によれば普通のオリンピックの選手なら50秒台で泳ぎ切るところを、倍以上の1分50秒ほどかかかったそうです。泳ぎ始めは良かったのですが、後半は犬かきでほぼ腕だけで泳ごうとしていたといわれています。その様子を1万人超の観客が、拍手喝采で応援していていました。
実は エリックは元バスケットの選手で、水泳に関しては素人。8ヶ月しか練習期間がありませんでした。しかし次の2004年のアテネオリンピックではエリックは1分50何秒だったのに自己ベストを57秒に縮めていましたがビザの関係でオリンピックには出場できなかったのです。このエリックの映像は黒人は水泳が苦手だというステレオタイプを強化する結果を招いたのです。黒人がある競技について不得意あるいは得意と指摘されるのは、競技大会で黒人とそれ以外の選手との実績に差異が目立つときである。このように本書では、黒人であるということにより、個人の努力や訓練以上に、遺伝による先天的な資質の結果とみなされやすい事が指摘されています。
 
ここでは本書に挙げられた例として、黒人選手の水泳のイメージが無いと言う話を取り上げて紹介しました。この本では歴史を振り返りあらゆる優劣を人種の本質として還元することを批判しています。

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