プレイスメイキングでつくられるウォーカブルなまちの幸福感 -みちを前向きに使い倒すコツとは?(前編)
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プレイスメイキングでつくられるウォーカブルなまちの幸福感 -みちを前向きに使い倒すコツとは?(前編)

日本のウォーカブルなまちづくりの萌芽は、実は2019年。
国土交通省 都市局 が主催した「全国街路空間再構築・利活用推進会議(通称・マチミチ会議)」などが開催され、同年、各地でもマチミチ会議地方版が開催されました。このような全国の自治体を巻き込んだ取り組みが日本のウォーカブルムーブメントのきっかけにもなっています。

ウォーカブルなまちづくりには、街路などの公共空間と民間の土地、両方の環境づくりが大切です。では各地方行政では、どんな取り組みをしようとしているのでしょうか?

※本記事は、2019年4月16日に開催された「マチミチ会議 in 北関東」の記事を再編集したものです。北関東とは、関東の北部三県(茨城県、栃木県、群馬県)を指します。それぞれの都市で奮闘している状況と、街路利活用にとって重要なエッセンスを抜粋してお届けします。

実は私はこの北関東の一部・茨城県にある大学出身です。ウォーカブルを目指しているといいながら、告白します。大学生の時にはスーパーにもドラッグストアにも、大きい公園にも、デートにも、車で行っていました・・・。

茨城に住んだ6年間で、北関東は全体的に車社会であるということを身をもって実感しました。広域移動のための鉄道、通勤通学のためのバス等は通っているものの、市域全体や地域間を移動する時の優先順位は、必ずと言っても良いほど車。

そんな北関東でも、ウォーカブルなまちづくりを目指す取り組みは2019年より前から多数ありました。本記事の前半では、北関東の多くのまちで実践やアドバイスを行っている筑波大学 渡和由准教授の基調講演「プレイスメイキングの理論と実践」の内容をお伝えします。

「プレイスメイキング」によってつくられる人の居場所と日常の幸福感。

ウォーカブルとプレイスメイキングは、とても密接な関係にあります。

日本のプレイスメイキングの第一人者でもある、筑波大学芸術系 渡和由准教授によると、"プレイスメイキング"とは実存感を得られる居場所づくりの概念

1990年代からアメリカの環境デザイン事務所でプレイスメイキングとサイトプランニングを専門に活躍されており、様々な都市でプレイスメイキングの実践やそのアドバイスを行っています。渡准教授は日本にプレイスメイキングを広めるべく10年以上にわたって様々な取り組みを行なってきました。

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「実存感」とは?あまり聞き慣れない言葉です。渡准教授によると、

実存感とは、「このまちに暮らして幸せだ」「気持ちのいい場所で過ごせて嬉しい」など、居心地の良い空間と相まって日常の中での感動や幸せを実感すること。

近年、まちの賑わいづくりとして日本で広まってきたプレイスメイキングですが、渡准教授によると、その主目的は「賑わい」ではなく、「ひとりひとりの心地よさと楽しさをつくる居場所づくり」をすること。商業的な賑わいづくりに主眼を置くのではなく、様々な人が自分らしくいられる様々な居場所がまちの中にあることが重要です。それが、歩いて心地よいウォーカブルな環境づくりに繋がります。

プレイスメイキングの「8つの場の要素」

渡准教授の研究によると、人を中心としたプレイスメイキングには8つの場の要素が存在し、居心地の良い場は、これら要素の組み合わせでできているといいます。

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プレイスメイキングのための「8つの場の要素」(渡准教授提唱、作画/大竹英理耶)

また、居心地のよい街路や公園をなどの環境をつくるには、人の目機能配置の工夫も重要です。例えば公園の近くにキオスク型のショップを置くことが見守りの役割を果たしたり、店舗の駐車場を建物の奥に配置することで、店舗を街路面に開くことができます。敷地内の配置の工夫でまちの印象ががらりと変わります。

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建物の裏側に設置された店舗の駐車場。街路側からは見えない配置になっている。@デイビスコモンズ・米(著者撮影)

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おもて側は公園のような広場になっており、人々が店の前で寛いでいる。@デイビスコモンズ・米(著者撮影)

プレイスメイキングが語られる際は海外の事例が取り上げられることが多いですが、実は日本では江戸時代から建物と公共空間をシームレスに使いながら暮らしが営まれていました。同時に、江戸時代の茶屋、その周りの街路などで人が出会うことにより、商いや交流が自然と生まれていたのです。

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建物の中と外が一体的な空間として使われることが当たり前だった江戸時代。(『江戸名所図会』より)

渡准教授がフィールドとしているつくば市の事例では、歩いて心地よい環境をつくるためには、街路+民有地である民営の居場所がセットであることが重要と語られました。

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縁側のようなデッキや室内の居場所がある店舗と植樹帯の座り場を効果的に連携させることで、街路と店舗が一体となったまちの居場所が形成される。

プレイスメイキングは「即興的街路活動」である

世界のプレイスメイキングを牽引するProject for Public Spaceの創始者フレッド・ケント氏は、「プレイスメイキングは即興的街路活動である」と言っています。

即興的街路活動とは、その場で起こる人の様々な営みそのものです。建築や都市計画のように、全てを計画してつくり始めるものではなく、即興の大道芸のように、来週からでもできること、明日からでもできることなど、誰でもがすぐにでも気軽に取り組めることから始めることこそが、プレイスメイキングのコツと言えます。

後編に続く)

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株式会社Groove Designs代表取締役/都市環境デザイナー 人とまちの新しい関わり方をつくるアプローチ開発を得意とするまちづくりコンサルタント、0歳双子の母、持続可能な都市づくりのプラットフォーム<シティラボ東京>の運営なんかも