その⑩考察(KJ法)

〈KJ 法の結果から〉
KJ 法の分析結果では、データは“組織の存在理由”と“組織文化の醸成”の 2 つに統合された。

“組織の存在理由”では、ティール組織の形成に寄与する人物は、自身が掲げている目標や ビジョンに共感している人を集めることによって目標達成へとつながると考えているため、 実際に、目標やビジョンに共感している人を集めていることがわかった。つまり、ティール 組織を形成する人物は、自分の掲げた目標に対して、一人ではなし得ないことであると考え たとき、それに共感して集まった人たちを巻き込んでビジョンや目標を達成へ向かうので あろう。また、ラルー(2018)は「ティール組織はそれ自身の生命と方向感を持っていると見 られている。組織のメンバーは、将来を予言し、統制するのではなく、組織がどうなりたい か、どのような目的を達成したいのかに耳を傾け、理解する場に招かれる」と述べている。 このラルーの言葉と本研究の結果から、ティール組織とは人が集まった集合体というより は、集まった人たちが合体した 1 つの大きな生命体なのであろう。その大きな生命体を作 るためには、仲間が同じ方向を向くだけではなく互いに共感し合うことによって、深いとこ ろまでつながることが必要なのであろう。

“組織文化の醸成“では、非支配的な組織文化を作ることによって、階層や上下関係が生 まれにくくなり気を使い合うコミュニケーションというのは解消されるのであろう。ラル ー(2018)は「権力をトップに集め、同じ組織に働く仲間を権力者とそれ以外に分けるような 組織は、問題を抱えて病んでいく。組織内の権力は、戦って勝ち取る価値のある希少なもの と見られている。人はこうした状況に置かれると、いつも人間性の影の部分が浮き彫りにな ってくる。個人的な野望、政治的駆け引き、不審、恐れ、ねたみといった感情だ。組織の最 下層では『あきらめ』と『怒り』の感情が広がりやすくなる。組織の停戦の力を結集しよう と労働組合が生まれ、トップからの権力行使に立ち向かうようになる。」と述べていること から、組織内では上下関係が生まれるような環境を作ると、組織内に派閥が起きてしまうた め、そのような環境を作ることは望ましくないことが伺える。つまり、上下関係が生まれる ような環境を避けることによって、派閥のおきない平和な組織を作ることができるのであ ろう。本研究の結果では、ティール組織の形成に寄与する人物の特徴として、非支配的な環 境をつくるように心掛けているという特徴がわかった。この結果と、ラルーの言葉から、テ ィール組織の形成に寄与する人物は、非支配的な環境を作ることを心掛けることは大切な のであろう。また、本研究では【C.非支配的】と【D.コミュニケーション】、【C.非支配的】 と【E.自分らしさ】それぞれの組み合わせが、ともに相互補強の関係であることを表してい るから、ティール組織の形成に寄与する人物は、非支配的な環境を作るためには、自分の強 みはもちろん、弱みも開示していることやコミュニケーションをとり、より仲間同士で親密な関係性を作り上げていくのであろう。 ラルー(2018)は、「職場に行くときには、狭い『専門性』としての自己をまとい、もう 1
つの自分の顔はドアの外において組織とは、そこで働く人々に常にそういうことを期待す る場所だった。そうした組織の中では、男性的な強い意志、決意と力を示し、疑念と弱さを 隠すよう求められることが多い。合理性がすべてであり、情緒的、直観的、精神的な部分は まず歓迎されず、場違いだとみなされてしまう。ティール組織は、私たちの精神的なホール ネスがあらためて呼び起こされ、自分をさらけ出して職場に来ようという気にさせるよう な、一貫した慣行を実践している。」と述べている。このことから、ティール組織とは自分 をさらけだすことができる環境なのだと言えるだろう。つまり、無理に自分を着飾らずに、 自分らしくいることができる環境なのであろう。

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