その②ティール組織

〈はじめに〉

現代は SNS で自身の意見を発信しやすくなり、さらにグローバル化の推進などにより、 個性や多様性が認められやすい時代であるといえる。実際に、様々な会社がダイバーシティに対する取り組みを行っている。しかし、組織においては中心的人物が存在し、組織づくりにおいて、その中心人物がメンバーの個性や多様性をうまくマネージすることができなければ、組織はまとまりのない状態になってしまうのではないかと考える。すなわち、この個性や多様性が認められやすくなった現代の組織においては、どのようなアプローチを行うことで多様なメンバーを上手くまとめることができるか、いかにして多様性をもつメンバ ーを巻き込むことができるかが重要であると考えられる。

一方で、石川(2016)は、「いかに優れたリーダーであっても 1 人のリーダーだけでは、優れた決断ができないのが現代である。したがって、リーダー的地位にある人だけでなく、職場の他のメンバーが必要な情報や資源、スキル、能力を持ち寄って、必要な場面でそれらを 効果的に用いることで、職場全体に影響力を発揮することが大事なのである。」と、述べている。つまり、現代においては一人の中心人物のみが力を発揮するのではなく、中心人物を 起点としつつも組織に所属するメンバー全員がリーダーシップを発揮するような環境を創 造することが望ましいことがわかる。このような、職場のメンバーが必要なときに必要なリ ーダーシップを発揮し、誰かがリーダーシップを発揮しているときには、他のメンバーはフ ォロワーシップに徹するような職場の状態のことをシェアド・リーダーシップという(石川,2016)。

また、ラルー(2018)は、「歴史を振り返ると、人類がこれまでにつくってきた組織のタイプは、その時代に優勢だった世界観と意識にしっかりと結びついている」と、述べている。 この、石川(2016)の、「いかに優れたリーダーであっても 1 人リーダーだけでは、優れた決 断できないのが現代である」という言葉から、現代に優勢な世界観と意識が変化し続けてい ることが考えられる。つまり、現代も組織は変化していることがわかる。ラルー(2018)は、 現在の社会にあった組織としてティール組織を提唱している。

以下、本研究では特に、多様性のマネジメントが求められる現代のチーム作りにおける発 達段階に注目する。そこで、「チーム内で一人一人が能力を発揮する」という点で関連性の あるティール型組織とシェアド・リーダーシップについて概念を整理した上で、研究目的に ついて述べる。

〈ティール組織とは〉

ティール(teal)とは、英語で「青緑」という意味を表している。ラルーは、インテグラル 理論によると様々な段階を名称ではなく色で示すことが多く、色で識別すると覚えやすく なる効果が期待されると考えたため、組織モデルの発達段階に色を付けたと、述べている。 ティール組織の色を付ける前の名称は進化型組織である。組織の発達段階については、次の 項目で詳しく述べる。以下には、ティール組織の定義を述べる。

ティール組織とは、全体性とコミュニティーを目指して努力し、職場では自分らしさを失 うことなく、しかし人と人との関係を大事に育てることに深く関わっていくような人々を 支える組織である(ラルー,2018)。また、意思決定の基準が外的なものから内的なものへと 移行する。

ティール組織の誕生の背景には、以下のようなことがある。

現在の組織の底辺で働く人々を対象とする調査では、「ほとんどの仕事は、情熱を向ける ものでも人生の目的でもなく、恐ろしく退屈なもの」という結果になるのが常であり、組織 ピラミッドのトップを務めるのは責任やプレッシャーからそれほど充実した仕事ではない。 つまり、現代の組織の在り方が限界と感じている人々は多く、組織での生活に幻滅するよう になっている。トップでも底辺でも、組織はエゴを追い求めるという終わりない努力をする場になっており、人々は心の奥底に抱いている情熱を発揮できないのということがわかる。 そこで、自分らしく働ける組織モデルとして進化型組織、つまりティール組織が誕生した。 次に、ティール組織までの組織の発達段階とそのモデルについて述べる。

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