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欧米ビジネスディナー・サバイバル 海外出張先で会食に呼ばれたら

あなたは海外出張先で社外のお客さんとのビジネスディナーに呼んでもらえることになりました。「やったー! 会社のお金でご馳走だ」と喜んだのもつかの間、大事なお客さんの前で粗相があっては困るな、と不安になります。

最低限のマナーだけでも確認しようと、スマホで「海外出張 会食」と検索。でも出てくるのは海外の食事で苦労した話とか(面白いけど、今必要な情報じゃない)、会食の場の英会話とか(下っ端に気の利いた会話なんて求められてない)、食事代の会計処理とか(帰って経理に確認すればいい)、いらない情報ばかり。

焦っているうちに、待ち合わせの時間になってしまいました。待ち合わせ場所で合流した先輩に不安を打ち明けると
「大丈夫、俺の真似してればいいから」
と心強い一言。あなたはほっと胸をなでおろします。

そう、ビジネスディナーでのサバイバル術は上司から部下へ、先輩から後輩へとOJTで伝えられてきました。ところがコロナ禍で海外出張がなくなって早2年。往来が再開した暁には、伝統はちゃんと受け継がれるのでしょうか。それとも縋るような瞳で不安を打ち明ける後輩を前に、「俺だって知らんがな」と言うに言えない状況に陥ってしまうのでしょうか。

そんな先輩のために、粗相なく会食を生き延びるためのごく最低限のサバイバル術を記録しておきたいと思います。

まず前提として、誰もあなたに完璧なふるまいなんか期待していないということは覚えておきましょう。海外から日本に来たお客様を「吉野家」に連れて行って、そのお客様が「並、つゆだく、卵もつけて」と言ったらビビるでしょう。ぎこちなく周りを伺って、ちょっぴり失敗するぐらいでいいんです。

注文

テーブルに案内されたら、まず飲み物のオーダーを聞かれます。ドリンクメニューを見て注文しましょう。会食だったら偉い人がワインをボトルで注文してくれるかもしれません。

アルコールが苦手だったらソフトドリンクを。ノンアルではボトルドウォーター(ガス入り・ガス無し)、アイスティー、ジンジャーエール、レモネードあたりが無難なチョイスです。このタイミングでは温かいコーヒー・紅茶は頼みません。

飲み物を注文してから、料理を選びます。居酒屋のようにシェアして食べることはまずありません。自分の食べるものは自分で選ばなければ、何も運ばれてこないのです。誰も何も言いませんが、前菜から一品、メインから一品選ぶことが期待されています。

「え、メインだけじゃ駄目? 前菜とか、こっぱずかしいんですけど」

駄目ではないのですが、料理は前菜→メインの順番で運ばれてきます。前菜を頼まなかった人は、同じテーブルの皆さんが前菜を食べているあいだ、気の利いた会話で間を持たせるか、気まずさ全開で何もないテーブルをじっと見つめているしかありません(実話)。

ちなみに、もしもあなたの出張先がアメリカだったら、一皿の量はたぶんとてつもなく多いことを覚えておきましょう。胃腸に自信のある若者なら心配無用ですが、女性や中高年はできるだけ軽そうに思えるメニューを選んだ方が安心です。

肉だったら重さが書いてあることが多いです。本当はティーボーンステーキが食べたくても、フィレにしておいた方が無難かもしれません。

ボトルワインを頼むと、ウェイターさんが一人ひとり注いでくれます。ワインを注ぐのはウェイターさんのお仕事なので、いくら下っ端だからってあなたがお酌して回る必要はありません。注いでもらったら「ありがとう」を忘れずに。

さて、いよいよ注文です。注文は一人ずつ聞かれます。基本的に前の人の真似をすればいいのですが、不幸にもあなたが最初だったら、「前菜は〇〇、メインは〇〇をお願いします」と勇気をもって伝えましょう。大丈夫、心配しなくてもみんな二つ選んでますから。

注文し終わったら、料理が運ばれてくるまでのあいだにテーブルにあるナプキンを膝の上に載せておきましょう。ちなみに欧米ではどんなにチープなお店でもナプキンがあることが多いです(もちろん紙ナプキンですが)。日本だったらお手拭きのポジションなのでしょうか。むしろお手拭き付けようよ、と私なんかは思うのですが。

食事中

いまどきナイフとフォークに戸惑う人もいないでしょうから、注文さえクリアできればほぼ優勝です。カトラリーが並んでいてどれを使えばいいかわからない場合は、基本は外側ですが、なにかしら適当に使えそうなのを選べばOK。もしも間違っていたら、ウェイターさんが何も言わずにそっと補充してくれます。

ちなみに、テーブル担当のウェイターさんは一人に固定されている、ということは覚えておきましょう。違う担当さんを呼びつけたりしないように。というか、”ウェイターさんを呼びつける”ということ自体しない方が無難です。手を挙げて「すみませ~ん!」なんてやったら相当浮きます。

なんかの理由でウェイターさんを呼びたいときには、担当のウェイターさんにアイコンタクトするか(ちゃんとしたウェイターさんならこれでOK)、ウェイターさんに気づいてもらえる程度に小さく手を挙げれば来てもらえます。

ああそうだ、食事をしているうちに右のワインと左のワイン、どっちが自分のだったかわからなくなったりしますよね。

そんな時に覚えておきたいのがBMWです。正面向かって左からB(Bread:パン皿)、M (Meal:料理)、W(Water or Wine:飲み物)です。あるいは、親指と人差し指をくっつけた時の手の形を頼りに、左手がb(Bread:パン皿)、右手がd(Drink:飲み物)と覚えてもいいでしょう。

そして、くれぐれも酔っぱらわないように。ビジネスディナーに酔っぱらいは禁物です。顔が真っ赤になる体質の人も、量は控えめにしておきましょう。

そしてデザート

さて、前菜、メインが終わったらデザートの時間です。ウェイターさんが「デザート食べる?」とデザートメニューを持ってきてくれます。

昔、私に会食サバイバル術をOJTしてくれた上司は「デザートまで食べてこそ一人前」と言っていました。そこまでストイックになる必要はありませんが、甘いもの好きなら飲み物と一緒に注文してみましょう。美味しいものを美味しそうに食べる姿はみんなを和ませます。ですが、もしもあなたの出張先がアメリカだったら、一皿の量は(以下略)。

デザートメニューには飲み物も載っています。デザートは注文しない人もコーヒーは注文することが多いようです。ここで何も注文しないと、再び手持無沙汰になってしまうリスクがあるので注意しましょう。周りをよく観察して。お腹いっぱいでコーヒーが入る隙間もないよ、という人にはエスプレッソがお勧めです。

さて、日本だとデザートと飲み物はセットなのですが、欧米では飲み物の前にデザートが運ばれてきます。飲み物と一緒に食べるのではなく、どうやらデザートを食べてから飲み物、ということのようです。不思議ですね。

さあ、なんとか大きな粗相もなく会食を生き延びることができました。あとはご馳走してくれた人とお店の人に「美味しかったです、ご馳走さま」と感謝の気持ちを伝えれば完璧です。お疲れさまでした。ビジネスが上手くまとまるといいですね。


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