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ある日 突然 山にツノが生える

山はある日突然、ツノを生やす時がある。時には一本角、時には二本角、腹から生えたり、肩から生えたりする。生えるというよりは、本人の意志とは関係なく、生えさせられた、いや植えられたと言った方が正しいかもしれない。痛々しく、植えられ、突如として光景が一変する。

ある朝、新聞を取りに外に出ると、わたしの大好きだった山のそれが、煌々と朝陽に照らされていた。美しいほどに銀色に輝いて、太陽の光を浴びている。「おまえもとうとう、植えられてしまったのね」申し訳ない気持ちと、どうしようもない気持ちで落胆する。

どんなに山奥でも、それは生える。

どうか、わたしの大好きな、あの山は選ばれないで欲しいと思っても、ある日突然、それはある。山たちだって、触ってほしくないと思っているだろう。脈々と流れる深部の水の流れも変わってしまうから。

便利であることが価値のあること、文明が発達することが価値のあることだと思っている人間たちと、変わらないことで多くのいのちたちの母となり父となっている山々たち。

いずれ、山たちの自律神経が崩れ、突然動き出し、立ち上がり、髪を振り乱して、頭に刺さったそれを振り落とすのではないか?

ふと、そんなことを思いながら、家に入りスマホの電源を入れた。


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