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ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダムは「人生で最高のゲーム」だった

「人生で一番面白かったゲームは何?」
この質問に答えるのは難しい。ゲームの表現力はそのスペックと共に日々進化し、自分の感性も年齢を経るごとに変化する。いわゆる「思い出補正」というのもある。自分であれば「スーファミ時代だったらFF4かな~456どれも好きだけど。PSはやっぱりFF7、あれは当時の自分にとっては衝撃だった。PS2は…」という感じで、ハードごとに区切って答えるかもしれない。あるいはRPGなら、格ゲーなら、FPSなら、と答える人もいるだろう。あらゆる時代、ジャンル、ハードの垣根を超えて「一番」を決めるのは困難だし、そもそもナンセンスとも思える。

そう、以前まではそう思っていたのだ。『ティアーズ オブ ザ キングダム』をプレイするまでは。

なお以下のレビューは『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』のネタバレに触れているため注意してほしい。

前作からの進化

「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」は、オープンワールドの歴史を塗り換えた、まぎれもない傑作である。開発が「オープンエアー」と呼ぶコンセプトによってもたらされた自由度――行きたいところへ行き、やりたいことがやれる――これこそが我々がオープンワールドに求めていたものだったと気づかされた。そのコンセプトは今作にも引き継がれている。

まずは、新しくなった能力のうち、「ウルトラハンド」と「スクラビルド」に触れたい。この二つがもたらしたクラフトゲーム的な要素は、「プレイヤーのやりたいこと」を新たな形で実現してくれる。

「丸太を繋げて橋にする」というシンプルなものから、ゾナウギアを組み合わせて「板に扇風機を載せて船にする」「多数の扇風機を搭載して空を飛ぶ」「とにかく武器をたくさん搭載して攻城兵器を作る」――ウルトラハンドによる工作は、幼少の頃に知育玩具で遊んでいた時のような楽しさを呼び起こしてくれる。

前作では「武器の損耗」というのが批判の対象でもあった。せっかく強い武器を拾っても壊れてしまう、弱い武器を持っている敵を倒すリターンが薄い、などである。スクラビルドはこの問題を一挙に解決しただけでなく、更なる遊びを我々に提供してくれた。単純に武器を強化するだけでなく、多くの素材にはスクラビルド用に様々な特殊効果が設定されている。火属性の素材をスクラビルドすれば火を放つ武器で敵を燃やすことができるし、氷属性の素材を矢にスクラビルドして水場に打ち込み、氷の足場を作ることだってできる。敵集団に「コンラン花」をスクラビルドした矢を撃ち同士討ちさせるなど、絡め手にも事欠かない。

一方でクラフト的要素とは別の新能力がある。「トーレルーフ」と「モドレコ」は移動から戦闘に至るまで応用ができる革新的な能力である。正直に言うと、この二つはかなりゲームバランスを壊している。「無制限に天井を貫通して移動できる」「対象の時間を戻す」、どちらもかなりのムチャクチャをやっているのだが、不思議とそこにズルさをあまり感じない。むしろ、これらの能力を上手く生かして、自分の思い付きが上手くいったときの喜びが勝るのだ。「プレイヤーのやりたいこと」をゲームが自然と肯定してくれる、そんな印象を抱いた。

そして今作では新たなフィールドが追加された。「空島」と「地下」である。この新たに追加されたフィールドと先述の新たな能力が密接に関連して、新たなゲーム体験をもたらしている。空から落ちてきた瓦礫にモドレコをする、地下道を即席のスクラビルドしたハンマーで掘り進む、自作の飛行機で空も地下も飛び回る…。『ブレス オブ ザ ワイルド』にあった自由度は今作ではさらに拡張されており、何もかもが自由であり、新鮮であった。続編として大成功と言えるだろう。

音楽による説明力

前作「ブレス オブ ザ ワイルド」から引き続き、今作においても「インタラクティブミュージック」の仕組みが多数取り入れられている。この仕組みについては、じーくどらむす氏のnoteの説明が詳しい。

今作において特筆すべきは、劇中の音楽による「説明力」である。たとえば逆再生された歌唱を聞くだけで、「ガノンドルフにまつわる暗い要素」を連想できる。4つの神殿においては過去作まで遡ってモチーフが引用されており、それらが前作の神獣や英傑のテーマ、村のBGMなどと巧妙にミックスされアレンジされている。その音楽がもつストーリーテリングの力には驚かされた。特に人気が高い「風の神殿」と「フリザゲイラ戦」においては、popo氏の解説が詳しい。

まさに「The Legend of Zelda」

筆者は実はゼルダシリーズは『ブレス オブ ザ ワイルド』が初である。ゼルダの伝説は、ゼルダが主人公だと長らく勘違いしてたこともあるぐらいである。ただ、今作においてはまさにゼルダはもう一人の主人公である「ゼルダの伝説」であったと間違いなく言えるだろう。ゼルダ姫が辿った道のりとその覚悟は前作以上に悲壮で、だからこそ結末は美しい。正直ゲームのストーリーでここまで感情を揺さぶられた経験は無かったかもしれない。

まとめ

『ティアーズ オブ ザ キングダム』は前作と舞台を同じにしつつも、刷新されたシステムは前作の自由な体験を拡張し、更なる面白さをプレイヤーに提供することに成功している。間違いなくシリーズ最高傑作であり、ゲーム史に名を残すべき素晴らしい作品である。今作品がオープンワールドの歴史をまた塗り替えたことは間違いないし、後のゲームにも影響を与え続けるだろう。
そしてクリア後しばらくしてから確信した。今までにないゲーム体験と感情を揺さぶった『ティアーズ オブ ザ キングダム』は、あらゆる時代、ハードの垣根を超えて、筆者の「人生で最高のゲーム」となった。

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