とある人事の不幸な話~従業員が突然慰謝料を請求してきた話~

登場人物

俺 とある会社の不幸な人事担当

従 とある会社の従業員

奥 とある会社の従業員の妻



とある従業員から退職の申し出があり、「都合のいい時に、退職届を持ってきてね」と言いました。体調不良を理由にしていたので、「車の運転を伴う業務は中止してください。」ともお伝えました。

従は「はい、わかりました。ご迷惑をおかけしてすみません」といいました。

普通のやり取りをして電話を切りました。

従はまだ採用してから数か月しか経ってないのに残念しきりです。仕事にも穴があいて、てんてこまいです。取引先に頭を下げたりして対応に追われました。

ところが次の日、従が奥と話してほしいと言ってきました。

もう嫌な予感しかしませんよね。スルーしてもいいんですが、従を紹介してくれた関係先の兼ね合いもあるので、ひとまず奥と電話でお話しすることにしました。

電話をとると、開口一言から「話がちがわないですか!?」といきなり喧嘩腰・・・思った通りやああぁぁああああ


不幸のはじまりです。


奥「うちの旦那は、辞めるとは言ってない!!!」(断言)

奥「体調不良なんかじゃない!体調不良と言われて名誉棄損だ!!」

Σ(゚Д゚;エーッ!!!

奥「不当解雇だ!!!我々にも生活がある!!!!謝罪と賠償を求める!!!!!」(ブットビー!!)

とまくしたてられました。

俺「えぇ・・・(困惑)」

会社と旦那様との間のお話しなので、とやんわり断りをいれつつも

俺「一応、従が体調不良のため代理の方という事でお話しします。旦那様は、退職を希望されまして、退職届を提出して欲しいとお伝えしただけです。体調不良を理由にされておりましたので、車を使う業務を中止していただいただけですよ」

とお伝えしましたが、

奥「それって解雇ですよね!?」

と、迫られました。

俺「今のところ解雇する必要はないんですけど・・・」

と伝えるも。

奥「明日から仕事をしなくていいって言ったじゃないですか!?」

俺「いえ、車を使った業務を中止してくださいとは言いましたが、会社をやめてくれとは言ってないですよ。退職は撤回していただいても大丈夫ですよ」

以下、無限ループ。

奥「代理人弁護士を立てて、お話しします!」という事だったので、これ幸いと、「承知しました!ご連絡お待ちしております。」と電話を切りました。

(´Д`)ハァ…胃が痛い。不幸だ不幸すぎる。

理性のある人と話したほうが簡単なので、代理人を立てて話ができる方が助かるんごね・・・

とりあえず該当の従業員が使っていた営業車を回収し、車の運転はできないように確保。体調不良で運転したら危ないからね。

合わせて、ドライブレコーダーのデータも回収しました。

これがさらなる不幸を呼ぶことになりました。

こええ奥さんやなぁと思いながら、最終日の業務内容に問題がないかドライブレコーダーの確認を始めたところ、驚愕の内容が出てきてしまったのです。

営業中、車の中で奥と従が、「不当解雇を理由に会社を訴えてやろう」「口裏を合わせて、辞めるとは言ってないという事にしよう」と相談している会話が録音されていたのです。

あぁ…これあかんやつや…めちゃめちゃめんどくさくなるパティーンやああああああぁぁああ

一方で、従は自身の母親に「(訴えるとか)そんな面倒くさいことしないでほしい。(仕事を)紹介してくれた人の顔に泥を塗ることになるからやめたほうが良いと思う」と話している内容も入っていました。

俺もほんとそう思うやで…

という事で、従と奥は、なんと不当解雇を理由にして会社から金をとってやろうと思いついてしまったようです。

なので、奥はこれは解雇だ!訴えてやる!と気の弱い従に代わって電話してきたというわけです。

とりあえず虚偽の訴えを起こすような事があれば、それは犯罪にもつながりますし、そうなったら大変です。すぐに従に電話することにしました。

ドライブレコーダーに従と奥さんが話している内容が記録されていたよ。
嘘をついて訴えを起こしてはいけないよ。

体調不良ではないという事であれば、出社して欲しいよ。

と、電話で伝えました。

できる限り優しく話しましたが、気の弱い従はこの時点で、ガクブルです。途端に無言になってしまいました。

が、となりで何か奥さんがしゃべっている声が聞こえます。

ささやき女将カーイ





ささやき「労基署に行ったんで、その手続きを待ちます。なので会社にはいけません」





で、デター!!!労基署っていっちゃうやつー!!!

労基署に行ったことを理由に、会社休むってドウイウコトオオオオオ!!!!

気に食わない事があると、労基署に駆け込むぞ!!!となるパティーンです。

最初は大体、弁護士を立てる!!!!

とイキってみるんですが、実際に弁護士に代理人をお願いする場合は、10万円ほどが相場でしょうか。それなりにお金がかかります。それも代理で話をしてくれる&法律相談にのってくれるだけで、裁判となると別にまたお金がかかります。

基本的に相手からお金が取れたり、依頼人にメリットがないと弁護士は依頼を受けないのが普通です。腹にすえかねるから、お金払うからやってくれ!!!と言うならやってくれる人もいるかもしれませんが、お金はない、示談金もなにも取れそうにない案件は当たり前ですが、やんわりお断りされます。

弁護士に相手にされないと、次に出てくるのは労基署です。

こちらは無料ヤッター!というわけです。ほんと、労基署職員の皆様心中お察しします。

相談へ行くのはおおいに構いませんし、相談には表面上は、乗ってくれると思いますが、基本的に労基署は何かしてくれるわけじゃないです。

事実に基づいて事実の通りに処理してくれるのが労基署なので、マジでそこはみんな間違えちゃだめだぞ!

会社からのアクションがあれば証拠を残しておくといいですよ、くらいは言ってくれるかもしれません。ですが、謎の労務相談は労基署にいっぱい来ています。

労基署に用事があって行ったりすると明らかに様子がおかしい人を死んだ魚の目で対応している労基職員を見かけたりします。



マヂでみんな優しくしてあげてくれよな!!!



国は民事不介入ですので明らかな労基法違反以外に労基署が何かしてくれることはありません。とくに労務問題は、グレーな話が多いので労基署はノータッチです。


一生懸命説得するも、労基署から言われているので会社に行けません。労基署で手続きします。の一点張り。労基署が会社に行くなって言うなんてなんだか笑っちゃいますよね。労働の基本は出勤ですよ!


一体どんな手続きがあるんでしょうね…嘘をついて変なことをしてなければいいのですが…


このお話、全部の状況を合わせると、こんな感じ。

奥 子供が生まれる予定。そろそろ産休に入るため従の稼ぎに不満。従に反論は許さない。モンスター。ささやき女将。誰に言われたのか口癖は解雇通知書を出せ!

従 子供が生まれる直前にして、無職を決め込みたい。でも、お金はあったほうがいいなぁ。結婚もしなければよかった等と退職の申し入れとともにこぼす。めちゃくちゃ気弱。自分で仕事を探すことはできない。

俺 そ、それはだめだろ!生まれてくる子供!子供!!!!

奥&従 よし、それならば退職したいと言った事を無しにして、不当な解雇をされたと言って会社を訴えてお金をもらおう!名案!ピコーン!

という訳です。

本当に迷惑極まりない話です。

これから会社がどういう手続きに入るかというと、まずは書面で出社を促します。それが、無視されるようであれば、期限を決めてこの日までに出社がなければ懲戒処分または自己都合退職扱いで処理されるだけとなります。懲戒処分じゃちょっとかわいそうだな、刺激して発狂すると面倒だな、とか情けがかけられると、おそらく自己都合退職扱いで処理されます。

会社は敵じゃないので、ちゃんと話せば話を聞いてくれますし、気のいい社長さんの中小企業なら、少しくらい休んでも有給扱いにしてくれたりすると思います。もしかしたら、次の職場を紹介してくれたりすることもあると思うんですよね。

今回は、奥が身重だって話を聞いたりしていたので、やめるにしてもある程度暮らしに困らないように手配してあげようと社内で話がされていました。たくさんの好意を全て無駄にしてしまったというわけです。

中途半端な知識で、すぐに訴訟だー!!!と言ってしまうのはほんと良くないです。嘘をついてお金をせしめてやろうなんて言語道断です。

会社を経営しておりますと、割とこの訴訟だマンに出くわします。結構多いですほんと。

生半可な知識で、訴訟だマンするとお金も信用も失ってしまいます。

世の中、意外といい人も多いので、困ったことがあったら、まずは相談しましょう。

後日談があれば、また書くかも?

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