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エフェクターボードを解説してみる

はじめに

 ギターという楽器は、時にリズム隊になり、時に主旋律を担い、時には空間を埋める"上モノ"になる。そんな様々な顔を持っており、変幻ただならぬ楽器である。
その中でも、"上モノ"としての立ち位置を確立するためには、そういうエフェクターがほぼ必須と言っても過言ではないわけだが、近年、そういった嗜好のエフェクターブランドに急に注目が集まり出した気がする。そういった需要で拍車がかかったせいか、ここ数年で"上モノエフェクター"も随分と多彩性に富んだ気がする。歴史を辿ればローランド社のギターシンセサイザーがそのパイオニアにあたるとも言えそうだが、その話は置いておこう。
 とにかく私は、この"上モノ"としてのギターの立ち位置に可能性を感じている。リズム隊や主旋律といったギターの姿は、新しい形で再解釈されることがあっても、基本的には極めてアナログ的なため、ギターがギターである以上、弦を震わして音を出すという超古典的な楽器である以上、進化のしようがない。ギター本体ひとつとってもビンテージの古い個体の方が評価されるし、歪み系エフェクターも基本的に古めかしい音の方が評価される傾向にある。その時点で、その未来に限界を感じてしまうのも無理はないだろう。ところがデジタルエフェクターやデジタル機材というのは全く逆だ。技術の進歩とともに音も良くなるし、高機能化・多機能化もしていく。新しい発想が生み出されれば、そして時代と共に需要が変化していけば、その市場も変わっていくし、多様化していく。私はその未来をいち早く見たいという思いがあるし、進化真っ最中の未完成の音というのはどこまでも魅力を感じる。私はずっと生物のように漂う音を出している"上モノ系ギタリスト"だが、その根底にあるのはそういう思いかもしれない。単純にそういう音が好きだというのも無論だが。私と同じ音の嗜好を持つギタリストには言いたい。エフェクターボードは、歪み系が1割を切ってからが本番だ。機材は沼とはまさに。前置きが長くなってしまったが、2022年8月時点でのエフェクターボードと、私なりの使い方を記録しておきたいと思う。

外観

まずは外観。

 メイン・手元・サブの3つに分かれている。
 メインはARMORのPS-0C。90cm×50cmぐらいあるし、中身が空っぽの状態でも10kg近くあるバケモンで、当初はその大きさと重さに驚いたが、最近はちょっと縮んで見える。まさに昔のiPhoneが小さく見える現象である。
 サブは同社のPS-2Cだが、昔はこれをメインに使っていた。今では考えられない。
 手元はマイクスタンドに取り付ける台にchase bliss audio社のエフェクターを乗せている。後に詳しく記すが、これらはノブを手で操作しながら演奏することが多いので、手元に置いている。

メインボード

メインボード
メインボード

接続順に番号を付けたので、順番に解説していこうと思う。

1 BOSS ES-8

 まずギターからボードに入ると、そのままスイッチャーに入る。メインのボードは基本的にスイッチャー管理だが、ループに入れているのは歪みやオートワウなどの殆ど使用機会がないエフェクター達が多いので、実はスイッチャーというよりはMIDIコントローラーとしての機能をメインとして使っている。MIDIを知らない方も多いと思うが、簡単に言うと、エフェクターをON/OFFしたり、保存した設定を呼び出したりする時に送る信号のことで、スイッチャーとエフェクターをMIDIケーブルで繋いでおけば、「8番を押せばこのエフェクターのこの設定を呼び出す」みたいなことができるわけだ。私のボードは基本的にMIDIで成り立っているので、これがないと死んでしまう。
 スイッチャー反対派(直列派)のギタリストはプロでも多く、その意見もよくわかるのだが、私は空間系は全直列で半MIDI制御という手法をとっている。というのも、やはりMIDIコントローラーやスイッチャーというのはパフォーマンスを格段に上げることができるし、BOSSのスイッチャーはカスタマイズ性に長けている他、仮想エクスプレッションとかいう超ニッチなことまでできるので、音楽表現の可能性を100倍広げることができる。こだわりはそれぞれあると思うが、私はこれがないと死んでしまう。

2 KORG Pitchblack Advance

 amazonで見ると1万円くらいするが、心斎橋のイケベの中古コーナーに何故か1600円で置いてあった。目を疑ったが本当に1600円で買えた。普通に動くし、今でも謎である。本当は黒か白が良かったが、1600円なら赤でもよかった。見やすくてシンプルが一番。スイッチャーのTuner Outから出している。

3 Fuzz Factory

 スイッチャーのLoop1。ゲルマニウムの発振系ファズの名器。ファズ初心者向けに話すと、ゲルマニウムファズは、基本的にギターから直接繋がないと使えないという超問題児だ。しかも電源の特性を受けやすく、綺麗な電源でないとノイズが多くて使えない。さらに、温度や環境によって音がちょっと変わるという気分屋。ES-8はバッファのオンオフを切り替えられるので、ループにファズを入れてもちゃんと使えるが、パワーサプライの近くに置いているので現状では少しノイズが乗る。これはいずれ何とかしないといけないが、とりあえず面倒なので目をつぶることにしている。色々と手のかかるエフェクターだが、音は唯一無二なブチブチサウンド。王道だが、とても好きなファズだ。私は、ファズを使うときは基本的に後ろにオーバードライブ(9. Tube Screamer mini)をかけている。このファズ、後ろにかけるエフェクターでまるでキャラが変わってしまう。私はTSを後ろにかけた時のMIDの主張が強くなって少し篭る音が好きで、その音でバッキングをしたり、目立たないソロを弾いたりすることが多い。バンドアンサンブルだと、トランペットとトロンボーンの丁度間くらいにピークがくる気がして、ピッタリはまる。

4 BOSS Dynamic Wah AW-3

 スイッチャーのLoop2。こちらも心斎橋のイケベで破格だったため購入。もはやワウとして使っていない。このワウは、ピッキングの強さに反応して自動でワウがかかるというやつなのだが、コードを全音符で弾く時に、こいつをかけて後ろでボリューム奏法でアタックを消し、最後にリバーブをかければ、「ホワーン」という浮遊感のあるコードが鳴る(伝われ)。シンセチックなサウンドだ。そういう使い方のためだけに買った。これをするためなら、フィルター系のエフェクターを探せばもう少しよいのもありそうだが、現在詮索中である。Old Blood Noise Endeavorsの新作"float"が気になっているが、ボードが小さくて入らない。

5 meris HEDRA

 スイッチャーのLoop3。空間系に分類されそうだが、これはループに入れている。3並列のピッチシフターで、原音も含めると、単音が最大4声の和音になる。しかもこいつはそれだけじゃない。それぞれが独立したディレイになっている。つまり、ピッチシフトした音をそれぞれ遅らせて返すことができる。もちろんディレイのフィードバックも設定可能で、フィードバック音に更にピッチシフトをかけることもできる。どこまでもいってしまうやつだ。(DL4mkⅡのPITCH ECHOモードや、Earthquaker DevicesのRainbow Machine、Chase bliss audioのHabitやblooperのような。)このエフェクター、やはり3並列というのがミソで、これ自身を楽器として演奏することができる。キーを設定できるため、演奏する曲のキーに設定しておけば、PITCH1~3つまみを適当に弄るだけで曲になる。E-Bowのようなサステイナーでギターの単音をのばし、それにこれをかけて和音にして演奏するという使い方をしたりもしている。

6 Rowin comp

 スイッチャーのLoop4。このコンプ、3000円の中華製で所謂激安エフェクターというやつだが、この小さい筐体と価格からは想像つかないくらい優秀だ。ギターという楽器は、比較的高めの周波数帯を担うことが多いが、実は低音がよく出る楽器だ。コンプをかける時、実はこれがとても問題で、低音がよく出ているため、聴こえにくい低音ばかりを圧縮してしまい、肝心の高音の抜けが悪くなってしまう。このRowinのコンプにはそれを解決する"Trebleモード"が存在する。高音にのみコンプをかけるモードだ。これがギターにはとても有り難く、聴こえやすい帯域のみを薄く潰して持ち上げることができる。このモードではコンプがかなり強くかかるようにきこえるため、compつまみは9時ぐらいで抑え、若干高音が強くなるため、Toneを下げて微調整している。基本的に常がけしている。

7 Whammy DT

 これはMIDI操作ができるため、スイッチャーES-8のボリュームループにつないである。ボリュームループは常にオンにしてあり、直接操作すればいつでも思いつきでオンにすることができる。本当はWhammy 5が欲しかったが、友人から安く譲ってもらえたのでDTを使っている。
 こいつに問題点をあげるとすれば、消費電流がバカでかいこと。普通のデジタルエフェクターは多くても大体400mA程度だが、こいつは何と脅威の1300mA。ビッグマックセットを3つ平らげるバケモンといった感じだ。そのおかげか、とても自然にピッチシフトしてくれる。中には、クラッシュするバグ感を愛して未だに初代を使うプロも多いが、私は素直なピッチシフトを使うことが多いため、DTや5で満足である。
 Whammyは割と飛び道具代表みたいなイメージがあるかもしれないが、私は全くそうは思わない。無論、飛び道具的な使い方も稀にするが、私の主な用途はHarmonyモードである。Whammyユーザーは挙って飛び道具として2Oct上げや1Oct上げ、DIVE BOMBを使いたがるせいで、Harmonyモードを真面目に使っている人をあまり見たことがない。
 これは私がよく使う例だが、例えば、ギターでEコードを弾くとする。そしてWhammyのHarmonyモードの▲4TH/▲5THをオンにすると、ペダルが最小の時はEコードに重ねてAコードが鳴り、同様に、最大の時はEコードとBコードが重なって鳴る。このコード同士が重なった音というのは、構成音が非常に多くなるため、テンションコードのような不思議な質感が出る。そしてWhammyではこれを無段階で上下できるので、4THと5THを行き来する浮遊感のある演奏が可能だ。

8 Xotic RC Booster

 初代のRC Booster。これもES-8のボリュームループに入っていて常がけしている。やはりブースターは常がけ一択だ。音が生きる。RC BoosterはTrebleとBassつまみがあるので、EQの微調整ができるのも良い。初めは銀色筐体のV2を買おうと思っていたが、初代を中古で安く買えたため、こちらに。噂によれば、初代は電源が9Vなのに対し、V2は18V仕様なためヘッドルームが広く、音がより歪みにくいらしい。

9 Ibanez Tube Screamer mini

 スイッチャーのLoop5。初めは完全にFuzz Factoryの後ろにかける用として買ったが、案外他の歪みと掛け合わせた音も好きだった。全ギタリストに怒られそうだが、私はあまり歪みの細かい違いに関するこだわりがないので、Fuzz Factoryの音を丸くできて、場所を取らないこれにした。単体で使うことはあまりない。

10 DOD Overdrive/Preamp 250

 スイッチャーのLoop6。人生で初めて買ったコンパクトエフェクター。私は単純な回路の歪みが好きなのかもしれない。ブースターでブーストした後、こいつに突っ込んだ時の荒々しい音はとてもお気に入りだ。

11 Bananana Effects TARARIRA

 スイッチャーのLoop7。この手のエフェクターは海外製が多いが、Bananana Effectsは京都にある日本のメーカー。初めてYouTubeでこれの紹介動画を見た時、一瞬で「あ、これはこれは買わないといけない」と思った。基本的にはシーケンサー(ギターの音を決められたリズムで加工するもの)で、様々な種類のエフェクトを切り替えてかけたり、自分でシーケンスを組み立てて、倍速や半速、逆再生などに加工したり、ピッチシフトもできる。
 私の今の用途としては、8ステップ中3ステップのみ音が出る設定にして、ランダムにシーケンスすることでモールス信号のような音を出したり、様々なエフェクトをシーケンスできるToyBoxモードで、ランダムにエフェクトをかけたり、グリッチモードでBPMをかなり速く設定して暴れる音を出したり、様々。シーケンサーときくと、ライブでもBPMピッタリで演奏しないといけないように聞こえるかもしれないが、意外とそれ以外の用途でも効果音的に使える優れものだ。
 でもBananana Effectsに物申したい。フットスイッチが固すぎる。

12 BOSS FV-30 L

 スイッチャーのLoop8は未使用。そのままスイッチャーを出てボリュームペダルにつながる。ボリュームペダルは歪みの前派と後ろ派がいると思うが、私は完全に後ろ派である。ボリューム奏法をよくするので、私にとっては必須である。(最近は面倒なのでDL4のAuto-Volを使っているが。)ボリュームペダルはどれも筐体が大きいものばかりだが、BOSSの30シリーズは小さくてボードに優しい。音痩せがどうとかはあまり気にしない。

13 Line6 DL4mkⅡ

 歴史的名機の後継機種。エフェクター業界ではビートルズのような存在だ。発売当初はルーパーのバグが多すぎて使い物にならず、海外で大炎上していたらしいが、最近ようやくアップデートが来て直った。やはりDL4の発振の滑らかさは唯一無二だと思う。mkⅡでMIDI対応したので、ES-8から仮想エクスプレッションで信号を出したりもでき、音作りの幅が広がった。そしてやはりDL4といえばルーパーの優秀さだろう。HALF SPEEDREVERSEONCE。これだけでも価値がある。私はHALF SPEEDとREVERSEをそれぞれES-8の方に割り当ててMIDI操作していて、適当なフレーズを弾きながら、適当にそれぞれを押したり消したりしてオーバーダブを繰り返していくのが好きだ。DL4のルーパーユーザーはみんなそうでしょう?

14 BOSS DD-500

 ディレイペダルの定番だが、私は完全にグリッチペダルとして使っている。CTLボタンにTWISTやWARP、ROLLを割り当て可能で、ROLLとTWISTをよく使う。そして、500シリーズはMIDIを使わずとも単体で仮想エクスプレッションのアサインが可能。Timeをピコピコ切り替えると、ピッという発振音が一瞬なるのだが、複数の仮想エクスプレッションを使うことでそれをランダムに鳴らし、それをROLLすればグリッチペダルのように使うことができる。高い音はアクセントになるのでかなり重宝している。

15 Hologram Electronics microcosm

 無人島に1つエフェクターを持っていくなら、私は間違いなくこれを選ぶだろう。基本的にはマイクロルーパーランダムグリッチグラニューラーディレイの類のエフェクターだが、割と多機能なルーパーリバーブも内蔵されているので、本当にこれ1台で全て解決してしまう。日本に売っていないので直輸入するしかなく、関税と送料で100ドル近く持っていかれるが、仕方ない。昨今の円安で今買うとすごい値段になりそうだ。本当に全て解説するとかなり長くなってしまいそうなので、よく使うMOSAIC-DとINTERRUPT-Bについてだけ解説しておこう。
 MOSAICモードは基本的に全自動マイクロルーパーで、入力があるとその音を繰り返し再生する。AからDまで機能別に様々な選択肢が用意されているが、Dはその入力音の4倍速・2倍速・等倍速・1/2倍速をループするというゴージャスな仕様。キラキラした音になる。
 INTERRUPTモードはグリッチで、入力された音にランダムなフィルターをかけたりビットクラッシュしたり、ランダムにピッチシフトしたりする。その中でもBはランダムピッチシフトがかかるモードで、突然暴れ出したり暴れ出さなかったりする気分屋なモード。
 中々このエフェクターの魅力を活字で伝えるのは難しいが、その名の通りこれ1台で小宇宙に行ける。このエフェクターをジャンル分けすると「小宇宙」だと思う。宇宙が好きな人は全員買うべきだ。


 そして、ここまで来ると一旦メインボードを出て、手元→サブと経由した後に、またメインに戻ってくる。上部に見える赤いジャンクションボックスが、このボードのセンドリターンになっている。あと残すはRV-500(リバーブ)だけなので、接続順は前後するが、一旦リバーブについて解説する。

16 BOSS RV-500

 これもまだエフェクターを数台しか持っていない時に買った付き合いの長いエフェクターである。リバーブは最後にギターの音を包み込むとても大事な存在。ギターの音の質はここに9割が託されると言っても過言ではないだろう。いくら32bit-floatとはいえ、音質で言えばやはりStrymonのBigSkyに軍配が上がると思うが、Twistをよく使うため、RV-500を変わらず愛用している。DD-500RC-600のTwistとは全然違い、シュワシュワ感があり、音程感がない。RECでもよく使うし、ライブでも大活躍する。


手元ボード

手元ボード

 ボードというよりは台だが、chase bliss audio社のエフェクターを手で操作しながら演奏するために、手元に置いている。右側がメインボードのSENDからの入力、左側がサブボードへの出力になっている。基本的には手で操作するが、足元のスイッチャーとMIDI接続されているため、両手が塞がっている時はES-8側で操作することも可能だ。

1 chase bliss audio blooper

 何でもできるルーパー。録音、再生した音にModifierというエフェクトを2つまでかけることができる。Modifierは約20種類が用意されており、1~6にそれぞれ好きなエフェクトを割り当てることができる。例えば、再生速度や方向を無段階・有段階で変えたり、ボタンを押した瞬間テープが停止するようにだんだんゆっくりになって止まるエフェクトや、ループをランダムに切り刻んで順番を入れ替えるエフェクト、ハイパスローパスをかけたりなど、様々。そしてblooperの最大の特徴は、真ん中下のStabilityつまみ。これを上げることで音を意図的に劣化させるワウフラッターをかけたり、ノイズを付加することができる。
 そしてこのblooper、ペダル上部にdipスイッチがついており、任意のノブを仮想エクスプレッションのように動かすことができ、その中にはランダムモードというのもある。再生速度を変更するModifierをかけ、このdipスイッチを有効にして永遠に上書きすれば、どんどん音が崩壊していき、手に負えないサウンドになっていく。また、右上のRepeatノブを下げれば、オーバーダブ時に音が減衰していくため、短い長さのループに永遠にオーバーダブをすれば、エフェクティブなディレイとしても活用可能でき、創造性を掻き立ててくれる。

2 chase bliss audio MOOD

 空間系マイクロルーパーが一緒になったエフェクター。ベストエフェクター賞はこいつにあげたい。このエフェクター、左側が空間系、右側がマイクロルーパーになっており、右側では常に録音が行われている。監視カメラのようなイメージだ。そして、右側のフットスイッチを押すと、直前数秒間の音が再生される仕組みになっている。その再生された音のスピードをつまみで変えることで、音をピコピコさせることができる。
 そしてこのエフェクターの面白い点は、真ん中下のCLOCKつまみで、サンプリングレートを変えることができること。まさにデジタルを逆手に取ったエフェクター。普通、サンプリングレートは高ければ高いほど音質がよく、低いほど音質が悪くなる。それをつまみで弄ると何が起こるか。デジタル処理されたマイクロルーパーやディレイの録音された音の密度を後から変えることになるので、再生速度が変わり、音程が上下するのだ。しかもMOODではこれがきっちり音楽的に成り立つ倍数で段階的に区切られているため、5度とオクターブ単位で切り替わっていき、適当に弄ってもバックサウンドによく馴染むのだ。そしてサンプリングレートを下げすぎると、段々ノイズへと変化していき、原型を留めないローファイサウンドになる。原音に少しテクスチャーを加えるにはとてもよいエフェクターである。

サブボード

サブボード
サブボード

手元からサブボードへつながる。こちらも接続順に番号を付けたので、順番に解説していこうと思う。

1 meris ENZO

 とても優秀なピッチ解析能力を持つギターシンセである。ギターシンセは前段に繋いだ方が良さそうだが、様々なエフェクターを経てかなり後段に持ってきてある。これには、用途的なわけがある。
 基本的にはシンセサウンドを出すエフェクターで、コード等の音程を解析し、そのコードと同じシンセサウンドを出す。MIXノブがあるため、原音と混ぜることも可能。そして、このENZOの機能として特筆したいのが、ARPモードである。和音のピッチを検出し、そのピッチに沿ったシンセ音をアルペジエイターのように鳴らしてくれ、ディレイが内蔵されているので付点八分のような複雑なサウンドもこれ単体で作れてしまう。私はこのARPモードを、効果音の付加に使っていて、ENZOのTAPテンポをBPM50程度のかなり遅い設定にして保存し、たまにバックサウンドに合った音程のシンセ音が「ポン」となる。このエフェクターは、ギターの音を弄るのではなく、全く新しい音を付加するタイプのエフェクターなので、全くのシンセサウンドに変更してしまう場合は前段に置いた方がよいが、MIXを落として音にレイヤーを加える使い方の場合は、後段においた方がシンセサウンドがあまり加工されないままアンプまで届くので、都合がよいのだ。
 そして、このENZOにはDryモードというものもあり、ギター自体の音にもジュレーション系のエフェクトを加えることもできる。中でもリングモジュレーターは他社製エフェクターと比にならないほど音が綺麗で重宝している。

2 BOSS RC-600

 6トラックの並列・直列両対応のルーパーであり、様々なエフェクトを内蔵したマルチエフェクターでもある。私は声も楽器として使うことがあるので、ギターの他にマイクもここに繋いである。本当に何でもできる。9つあるフットスイッチも、好きなようにカスタマイズできる。BOSSの中では唯一REVERSEHALF SPPEDDOUBLE SPEEDに対応したルーパーであるが、録音中の再生速度変更はできない。これがDL4との一番大きな違いである。正直ここにはかなりがっかりしたが、DL4を持っているなら問題なし。シンプルなルーパーとしてそれでもかなり優秀なのである。エフェクトの方も、普通のマルチエフェクターとは違い、かなりトリッキーなことまでできるようになっている。ROLLTWISTWARPなどのBOSSのディレイに内蔵されているようなエフェクトや、FREEZEGRANULERなどもあり、中々BOSS製品とは思えないようなエフェクトが揃っている。個人的には、BOSSがそっち方向に特化したエフェクターを出すと業界の風向きが一気に変わる気がするので、密かに期待している。私はこの中からSYNTHROLLWARPTWISTを各フットスイッチに割り当てて使うことが多い。
 上のAMPERO SWITCHはRC-600のメモリー切り替えに使っている。

3 BOSS EV-30

 これは配線が直接通る訳ではないので、直接音に関係はないが、メインボードのスイッチャーに繋がっている。スイッチャーに一旦繋ぐことで、MIDI制御している様々なエフェクターにこのエクスプレッションペダルを任意に割り当てることができるため、非常に便利だ。ただ、現状ではあまり活躍しておらず、DL4のTimeに割り当てて発振させるくらいのことしかしていない。

このサブボードを出て、メインのReturnに入り、最後にRV-500を経てアンプへとつながる。

最後に

 ここまで読んでくれた人とは仲良くなれそうだ。つらつらと書いていると長くなってしまったが、これが2022年8月現在の私のシステムである。まだまだ欲しいエフェクターは沢山あるし、おそらくまだまだ変貌を遂げていくと思うので、現在の記録程度に残しておいた。この中に欲しい音がある人は、参考にしてみてはいかがだろうか。また、おすすめのエフェクターがあれば是非教えていただきたい。


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