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エフェクターボードを解説してみる vol.2

前回、エフェクターボード解説をしたのは昨年8月のこと。
そこから半年も経たないうちに大きく更新されてしまったため、更新された部分の解説をしてみたいと思う。

前回の記事はこちらから。


外観


外観

まずは外観。メイン・手元・サブの3構成であることに変わりはないが、接続順を変えた。今までは「メイン→手元→サブ→メイン」だったが、「メイン→サブ→手元→メイン」に変えた。その理由は、手元のchase blissがサブの前に来てしまうと効果が薄れてしまうからだ。用途的にも、chase blissのエフェクターは「ふりかけをふりかける」くらいの感覚で「効果音を付け加える」ものとして使うことが多いため、より後段に持ってきたほうがその効果を実感できる。
そして、大きく更新された部分はなんと言ってもサブボードだ。もはやサブではなくなった。前回はARMORのPS-2C(55×31cm)だったが、CAJの4408(80×44cm)に更新。メインのPS-0Cと比較すると、縦は一緒で横が8cmだけ小さくなっている。
そして、手元・メイン共に追加されたものがあるので、順番に見ていこうと思う。

メインボード


メインボード

メインボードに追加されたのは、一番右上のキルスイッチのみである。

1 キルスイッチ

こちらはメルカリで購入したハンドメイドのキルスイッチである。押している間だけ音が途切れるもので、リバーブ(RV-500)の後の一番最後に接続している。ブレイクの時や、盛り上がってきた時にふと音を途切れさせたりで使っている。

手元ボード


手元ボード

chase bliss audioのエフェクターを載せているこの手元ボード。前回から追加されたのは、一番右のHabitだ。右側がInで左側がOutになっているので、Habitが1番最初につながっている。そして、これも足元のES-8とMIDI接続されているため、手元に加えて足元でも操作が可能だ。

1 chase bliss audio Habit

こいつは手持ちのエフェクターで一番難しい。再生速度・方向可変やローパス・ハイパス、グリッチ等のモディファイアーをかけられるディレイなのだが、それだけではない。簡単に言うと、過去3分間の入力が常に記録されており、その中から2つの再生ヘッドで音を取り出してモディファイアーをかけるという超尖ったエフェクターである。
まず、「モディファイヤー付きディレイ」としての使い方として、私がプリセットに保存しているものを1つ紹介する。MODIFYをA-1(steped speed)にし、dipスイッチを使ってTIMEとMODIFYをRANDOMにBOUNSEする。(ここでRAMPは速めに設定しておく。)このとき、ディレイ音のピッチがランダムに5度やオクターブ等で音楽的に崩壊しない変化をし、同時にTIMEがランダムに動くことでたまに音が途切れたりグリッチするという面白い現象が起こる。わざわざループを作らなくても入力音に付随して効果音を鳴らしてくれるので、かなりアクセスがよく、手も伸ばしやすい。
そして、過去記事にも書いたが、blooperとHabitの大きな違いの1つとして、Habitはdipスイッチの設定をプリセットに保存できる点が挙げられる。普段はdipスイッチをオフで使って、トグルスイッチを倒すというワンアクションのみでプリセットを呼び出せるのがHabitのいいところだ。
そして、問題は「SCAN」のぶの使い方だ。Habitは3分間の常時録音の活かし方がとても難しいのだ。普段は再生ヘッドを入力と同時時点(0秒前の時点)にすることで、ディレイの機構部に入力音がそのまま入り、普通のディレイとして使える。しかし、「SCAN」をautoにすると、それに加え、この3分間の録音の中を再生ヘッドが動いて音を探し続け、「CDを早送りする時」のような音が鳴る。これがHabitをHabitたらしめる音の一つであると思う。
具体的な使い方をひとつ提案する。曲のはじめにHabitの音量(LEVEL)を0にした状態でオンにし、音は流さずに3分間のテープにフレーズを記録しておく。このとき、SCANノブは任意の位置に設定しておく。そして、先述の「CDを早送りする時」のような音を出したいタイミングでLEVELノブをひねって音を出す。このときにMODIFIERをかけてもよい。ルーパーと違って録音・再生を自分でしなくていいので、楽ではあるが、「常に録られている」という意識が脳内によぎってしまい、思うがままのプレイができないことがある。まるで監視カメラのある部屋でずっと過ごしているかのような気分だ。すべてのエフェクター使いをHabit主体で考えることになるので、どちらかというと、Habitを軸に数個のエフェクターだけで音世界を表現したいという人に向いている使い方かもしれない。逆に、REC時や曲作りの時などには、この使い方はかなり実用的で創造性を掻き立てるアイテムだと思う。

サブボード


サブボード


サブボード

前回から大きく変わったサブボードだが、配線が少し複雑だ。一応接続順に番付した。青が既存だったもので、緑が新しく入ったものなので、緑のみを解説していこうと思う。

1 BOSS SY-300

ギターシンセの第一人者であるローランドのBOSSから出された、専用ピックアップのいらないギターシンセである。勿論専用ピックアップを必要とするギターシンセとはかなり別物に感じるところもあるが、オシレーターが3基と様々なFXが用意されており、多種多様なルーティングを組める優れものだ。BOSSエフェクターのこの柔軟性はやはり多くの人に愛される最も大きな理由であると思う。
サブボードに入って最初にSY-300に入るのだが、この出力はシンセ系統とギターのダイレクト音(THRU)で2つに分かれる。画像右上のジャンクションボックスにSYNTH専用端子があるのがわかると思うが、シンセ音はギターとは別にPA側に送られるようにしてある。そして、SY-300のシンセ音の出力も一旦RC-600につながっており、シンセ音もルーパーに記録できたり、RC-600内蔵エフェクトを使えるようにしてある。
では、このSY-300で具体的にどのような音を出すのかということだが、シンセ感のある音で用いることはあまりない。内部の仮想EXPやLFOを多用して「鳥の鳴き声」等の変な効果音を、入力のギターをトリガーに鳴らす使い方をすることが多い。そのため、普通は前段につなぐであろうギターシンセを後段のサブボードに入れてある。その他、FILTERのCutoffをLFOで動かすシンセっぽい音をギターの裏でうっすら流したり、いずれにせよ「自分のギターを聴いて演奏してくれるもう一人の自分」のようなイメージで用いている。

3 kinotone audio ribbons

このエフェクターはやばい。基本的にはテープエミュレータでLo-Fi系のエフェクターであるが、なんでも出来すぎてとにかくやばい。このkinotone audioは昨年アメリカで突然出現したブランドで、どうやら1人で全部やってるらしい。当然代理店はなく、直輸入した。昨年9月の円高が酷い時に買ったので、7万くらいしたが、当時Lo-Fi系エフェクターが欲しかったのもあり、あまりにも凄すぎて買ってしまった。
まず、ステレオ入出力に対応しているため、REC時も大活躍しそうだ。そして、「TOUCH」という所謂FX的なやつがついているわけだが、これが非常に充実している。Lo-Fi系といえばchase bliss audioのGENERATION LOSSと度々比較されがちだが、ジェネロスは正直Tape Stopくらいしか使いやすいものがない。対するribbosは、Tape Stopはもちろん、Broken Machineというテープ機器が壊れた時のような音がでるものがあったり、Magnetic Danceというハーモニーを付け加えるものがあったり、Repeaterというグリッチ的な使い方ができるものがあったりする。それぞれの設定はプリセットに保存でき、MIDI PC・CCにも全対応してる。さらに、それだけではない。なんと4トラックのルーパーがついている。しかもそのルーパーをトラックごとに再生速度・方向・音量等を無段階・段階的に動かすことができる。blooperが4つ並列で入ってるみたいなイメージだ。とんでもない。
具体的な私の用途としては、普通にLo-Fi系で使ったり、Lo-FiにせずにオンにしてBrocken Machineの音を使ったりするシンプルな使い方もするが、TOUCH MODEを「Repeater」に設定し、Touch Param 2でResampling Repeaterに設定、MIDIでES-8から仮想EXPを使ってTouch Param 1とTouchのオンオフを動かすと、様々なタイムで時々グリッチするランダムグリッチペダルになる。これでENZOのシンセ音やDD-500の発振音をランダムにグリッチさせることができる。The king of gearのMINI GLITCHに近いかもしれない。ただ、このグリッチは当然オクターブアップや逆再生はないので、やはりmerisのottobitを追加で導入したいとも最近思っている。
接続順としては、SY-300のTHRUからENZOを経由してここに入力される。

4 bananana effects ABRACADABRA

ABRACADABRAはシマーリバーブ専門機だが、まさに唯一無二の音がする。これを使う人はみんな紫の「SH+Noise」モードが目当てだと思うが、空間が一気に海の中に変わってしまう。素晴らしいが、使いすぎると全部持っていかれるので注意は必要だ。なんだかんだで導入したのは最近だが、海系の曲に使う予定だ。

ギターの音はこの後にRC-600に入り、出力される。

7 TC Helicon VoiceLive2

これはギターではなくボーカルのエフェクターだ。なのでギターとは完全に別系統である。
ボーカルエフェクターで最も最強なブランドといえばやはりTC Heliconだろう。VoiceLiveシリーズの型落ちの2を導入した。今はVoiceLive3 Extremeが出てるが、高価すぎて手が出ない。ただ、2でも十分すごいのだ。
とにかく、ハーモニーをたくさんつけられる。ボーカルエフェクターでコーラスをつけられるものは多いが、大概は上下に1つずつが限界である。しかし、このVoiceLive2のハモリは合計4つ、しかもそれぞれをダブリング可能で、原音に対するダブリングも4人分までできるため、自分の後ろに12人分の声を付け加えることができる。細かくGENDERやPITCH、音量等を調節できるのも良い。私は自分の曲で度々ゴスペルっぽくコーラスを無数に重ねることが多く、それが1人で完成してしまうすごいエフェクターだ。2年ほど前からずっと欲しかったが、最近手に入れた。
使い方としては、シンプルに歌声を大人数にする用途で使っている。たくさんハモリをつけて大合唱にしたり、全部ダブリングにして13人の斉唱にしたりしている。これが1人歌うだけでライブでできるのだから、本当にTC Heliconさんありがとうという気持ちでいっぱいである。
接続順は、マイクからRC-600に入り、一旦出てVoiceLive2に入った後、またRC-600に入って出力されるという順序になっている。これには訳がある。私は度々声にオクターバーで1オクターブ上げの加工をすることが多く、これをRC-600内のエフェクトで行うため、VoiceLiveより先にRC-600につなぐ必要がある。そしてVoiceLive2でハモリなりユニゾンなりで声を複数人にした後に、RC-600に再度入力し、ルーパーに入れるという仕組みだ。

最後に

長くなってしまったが、これが2023年1月現在で追加されたシステムである。細かすぎて伝わらない解説な自覚はあるし、なんなら自己満足で書いてるみたいなところはあるが、一部でも共感してくれたりするとそれだけでも嬉しい。最近、空間系やENZOのシンセ音を鮮明にするために、ライブではアンプの前にDIをかましてダイレクト音もPAで混ぜてもらっているが、結局メインボードの空間系の前にstrymonのiridiumを入れてDI出しした方が良いのではないかという結論に辿り着きつつある。まだ検討中だが。
まだまだ、おすすめのエフェクターがあれば是非教えていただきたい。



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