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おっさんずラブとの出会い〜長い長い前置き〜

これはもう、運命の出会いとしか思えない。何かの力が働いているのかとさえ思ってしまう。

異動のない職場で、ある程度大切に扱ってもらいながら、結婚、出産、育児を経験しつつ、仕事を続けることができていた。大変恵まれた環境にあった。

途中入社の年上のその男性が来るまでは。傍若無人、空気が読めない、口が悪い、そして、大したことない職場で偉そうにしている、大したこともないのに贔屓されている、その人から私はそう映ったに違いない。今振り返ればそういうことなのだろう、と想像する。 

私からその人を見ても、同じだったが。乱暴な言葉使い、呼び捨て、話しやすい仲間を囲う、嫌いな相手をとことん無視する、直接言わず仲間に陰口を叩く、見えない権限で仕事に負荷を加える…証拠がないから、自分が思い込んでいるだけと思い込まされる。

何人も辞めて行った。残った人は、その人に贔屓されるか、嫌われて体調を崩すかだった。私は後者。何とも周りに説明のしようがない、つらい気持ちになる嫌われ方をした。しかし、そのような感情は今、自分自身がもしかしたら他の人に対してぶち当ててしまっているかもしれない。人間関係はとにかく難しい。

自転車。地を足で蹴ってサドルにまたがって、漕ぎ始めるまでが大変だ。一歩間違えばバランスを崩して転んでしまう。一旦漕ぎ始めたら、後はペダルを踏み続けて走ればよい。登り坂、下り坂、急カーブ、交差点などいろいろ危険性ははらんでいるだろうが、大怪我をしないように注意しながら運転をすれば何とかなる。

落ちて転んでしまったら、怪我がある程度癒えるまで休まないといけない。怪我は古傷になり、自転車にも傷がつく。それでもまた何とか安定して走行できるようにサドルにまたがるまで大変な労力を要する。

黒船に乗ってやって来たペリーみたいなその人との人間関係に真っ正面から闘い、エネルギーを使い果たして、とうとう私は自分の体調を崩した。ちょっと合わない「人間」なのに、不安と恐怖でその人が「恐ろしい怪物」みたいに思えた。

何度も言うが、異動のない職場である。辞めずに、メンタルの先生の力を借り、相手も周りからいろいろ指導を受け、付かず離れずの関係になった。怪物は人間に見えるようになり、贔屓しかできないのはその人が弱さを隠すための裸の王様だからと思うようにした。朝礼で当て付けがましく自分の非を発表されても、「いや、これはみんなに注意喚起しているだけだ」と思考を変えた。歳のせいもあり、どんどん鈍感になり、その人との関係ももはやどうでもよいものになっていた。

なのに、10年前に体調を崩し、何とか立て直し、未だに同じところで同じ人と働き、メンタルの先生に維持管理してもらっている、それ自体はふがいない。人間関係は何とか改善したが、その人が定年を迎える9月、これがもう、機械的に待ち遠しくて仕方なかった。一年半前くらいから、自分の中でカウントダウンを始めていた。あと一年、あと半年…毎日はあっという間に過ぎるのに、このカウントダウンは意外と長いなあ…。8月。もうあと少しのところまで来た。あと一か月。

8月も最終週のある日、組織のトップがやって来た。
「○○君には引き続き残っていただきます。後継の長は内部から出せるようにみなさんお互いに切磋琢磨してください」

ドーン。ズーン。え……?の、残る?
期待し過ぎていただけにショックが大きい。何だかよくわからないけど、自分の体調を崩すきっかけになったこの人が残る????

頭の中が混乱し、とにかくショックで落ち込む。その人が嫌、とかではもはやなく、勝手に設定したゴールテープ目指して息も絶え絶え走っていたのに、突然ゴールテープの位置を先にずらされた、そんな苦しさだ。

忘れもしない、8月31日の土曜日、落ち込みつつ、布団でゴロゴロしていた。子供たちは学校へ、出不精のはずの夫も珍しく所用で出かけて、久しぶりに一人だ。

テレビもSNSも、その日は大したネタもなかった。退屈だ。そうだ、こんな時はAmazon prime Videoがいいと仲間が言ってたぞ。ちょっと何か見てみるか。

昔見た『犬神家の一族』なんてのもあるじゃないか。映画、いいねぇ。ん?『おっさんずラブ』?そう言えば、朝の情報番組に俳優さん呼んで来てなんか宣伝していたなあ、どこがカッコいいのか、まあカッコ悪いわけじゃないけど、普通っぽい人が出てたなぁ。

田中圭もおっさんずラブも全く知らなかった。ドラマなんて、何年かに一回、ハマるもの以外は見ないもの。私が前ハマったのは「あまちゃん』だよ。

考えてみれば、プロモーションの力ってすごいなと思う。流して見ていた情報番組で、おそらくおっさんずラブの映画の宣伝を毎日していたのだと思う。それが、私の頭の片隅にほんの少し、洗脳されて残っていたのだろう。

なぜか、本当にどうしてかわからないが、私は『犬神家の一族』を選ばず、『おっさんずラブ』?何だかよくわからないけど、これを見てみるか…とポチっとしたのだ。

これが、全ての始まりだった。

おっさんずラブ第一話。
デキる男、牧凌太がポンコツサラリーマンの春田創一をいじめるのか?とさえ思いながら見ていたが、そんな様子はない。部長が突然、きれいな夜景の公園でバラの花束を持って告白し、最後に、何と牧凌太がシャワーに濡れながら男にキスをする!田中圭が普通っぽく、スタイル抜群でよく見ればカッコよく、なのに、ダサい。いつも同じスウェットを着ている。そんなところがまあ親近感が湧く。

もう、これは斬新過ぎて、他の人より一年以上遅れて、おっさんずラブの虜になった。次が気になって、1日で全話見た。なんなら2回転目も。

娘たちに話したら、実は、気になっていた、テレビで再放送していたのを親がいない時に見て、おもしろかった、と。

やっぱりプロモーションの力ってすごい。
私と、娘2人のおっさんずラブはここから始まった。

おかげで、沈んでいた私の心は一気に吹き飛んだ。ありがとう、おっさんずラブ。

#おっさんずラブ
#田中圭
#おっさんずラブinthesky

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