いち病院薬剤師が『アンサング・シンデレラ』最終回を見て
何とか最終回まで感想を書き続けることができそうです。
全体として、みんなが安心できる内容で、大団円を迎えました。
瀬野さんの件については、思うところがありますが、薬の開発は日進月歩で、多くの生命を救うために治験から臨床まで人々が努力している、ということを伝える意味もあったのでしょうか。人の寿命は予測されることはあってもそれが本当かどうかは誰にもわかりません。
正直に言うと、今自分の周りを見ていると、瀬野さんのようなケースは珍しいという感覚です。ただ、印象として、治療が奏功し、思うよりずっと長く生きている方はいます。「2年後」という時間設定がまた落としどころとしてあり得るなかな、と思ってみたり。
田中圭のことを応援する多くの視聴者のために、また、同じ病気で治療している人たちのために、希望の光を照らすことが必要だったのでしょうか。
今、ではなく、何年か後の話ならその確率が上がるかもしれません。未来志向の視点での展開だった、と理解しておくことにします。
さて、「左遷」?というやや強引な形で、最後葵さんはのどかな田舎町で妊娠、出産に関わる仕事を見せてくれました。
妊婦、授乳婦と薬については、大変神経を使う話題であり、薬剤師にとって、その職能を十分発揮できる、すべき場面であると考えます。
妊娠したけど、薬を飲んでいたので諦めるべきか、とか、妊娠中に薬を飲んでもいいか、また、出産後、授乳中に薬を飲むなら、授乳をやめるべきか、など、多くの悩みが出てきます。
赤ちゃんに悪い影響があるのではないか?奇形の可能性があるのではないか?という不安から生じるものでしょう。
しかし、最近、特によく感じます。
「普通」って、一体何だろう。ニュースで家計の話をわかりやすく説明する時に出てくる「一般的な家庭」。サラリーマンの夫にパート勤めの妻、それに子供2人の中流家庭、って、確かに最も多いパターンかもしれません。この仕事をしていると、家族背景を見る機会は少なくありません。それぞれの事情があり、案外、「一般的な家庭」はそう多くはありません。みなさん、多種多様な生き方、暮らし方をしていると思います。
妊婦、授乳婦の話に戻りますが、みなさん、「何も問題のない」「普通」の、もっと言えば、「五体満足」な赤ちゃんを産みたいという思いがあると思います。実際、奇形、あるいは先天的な問題を抱えて生まれてきた赤ちゃんを前に、最初は涙に暮れた、という話を聞きます。ある意味、自然な感情だと思います。「普通」の子なら、どんどん成長して、自立した社会人になれるのに、問題があると一人で生きられない、かわいそう、手がかかる、困る…これって、問題発言だと思いますが、人間の本質でもあると思うのです。差別を生み出す、自分は普通だという優越感。
実際、いつまでも社会のお世話になる家族がいる立場を知る私としても、なかには漠然とした不安を抱えながら生きている人がいることもわかります。
元気な赤ちゃんに生まれてきてほしい、と願うのは何とも自然な感情ですね。
たとえ、元気な赤ちゃんとして生まれてきたとしても、その後にわかる問題、個性、持病など。人は「普通」でいることの方が案外難しいのではないでしょうか。
そんなこんなのいろんな感情を知った上で行き着いた結論。
「誰も悪くない。誰のせいでもない。」
母親が、周囲の注意も聞かずよほど不摂生をしたなら別として、出産に関して子供に謝る必要はまったくない。謝られた子供は自分はダメな子供だと言われているようなもの。
こんな子に生んでごめんなさい、必要ない言葉だと思います。
妊娠中にいくらエコーで確認してもらっていても、実際お腹の中から出て来てご対面するまでは、どんな赤ちゃんかわかりません。まさに、こんにちは、赤ちゃん!ですよ。
たとえ、何か障害があったとしても、誰も悪くない。母親も赤ちゃんも、誰も。
妊婦に持病があっても、薬を服用、調節しながら出産に至ることが可能です。
本当にたまたまなのですが、私自身が、妊娠、出産、授乳を経験したことを生かして、不安を抱えた妊婦、授乳婦さんに、薬の面でサポートしていけたらと思っています。
まあ、時代がグローバルですから、女性、男性、妊娠、出産、授乳と区別するのも憚られますが。
最後に、田舎町の産院でのチーム医療、理想的だと思いました。医療職が輪になって話し合う。主治医が治療方針を示しつつ、他の医療職に相談したり、他の医療職からの意見に耳を傾けたりする。主治医がフラットな姿勢で接してくれると、とてもいいチームになれると思います。ゆったりとした町で、エネルギーの塊の赤ちゃんと無事に出会うために、みんなで緊張感を持ちながらも明るく仕事ができる環境で、好感が持てました。
……え?最終回の感想がそれで終わり?長い文章書いて、まとめなし?
難しい話は分かりませんが、薬あるところに薬剤師。薬のプロに近づけるよう、日々精進していきたいと思います。
(毎日のお弁当作りと仕事のルーティンで終わって行っているのが実情…)
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