休養とリハビリの概要、および今後の展望について
2022年3月中旬ごろから8月20日にかけて半年弱の間、メニューを組むようなトレーニングを行わずに休養した。その後8月21日から2か月間練習を行い10月23日のデュアスロンに出場することができた。
コロナ禍やケガ、病気、仕事の都合などで練習休止期間ができてしまい困っている方が意外と多いことを知り、復帰に際し多少の知見になればと思い休養および復帰の経緯を記載することとした。
余談が多いのは、何回にも分けて書けるほど甲斐性ではないためである。
*印をつけて省略可能とすることで、不慣れなゆえの構成の行きとどかなさと共に容赦頂きたい。
・2020年末までのトライアスロンとの関わり(背景) (*余談)
・2017年春ごろ~
トライアスロンを徐々に本格的に再開。
当初から練習は一貫して極端なPOL。特にランは2021年秋まで10年近くペース走(M~Tペース)をしたことがなかった。
2019年、初ロングのCairnsを9:46で完走(S 1:03 B4:59 R3:35)。
強い逆風コンディションの中バイクで4:50を切ったのがエイジで竹谷さんを含め2人だった点、ランは胃薬を飲んだ後の後半ハーフを3時間20分切るペースで走れた点、暑さが苦手な点。
これらを考慮するとレースを選べば9時間を切れそうと考えるようになり、コナスロットに変わりサブ9を第1目標とし始めた。
・2020年
コロナ禍の環境が自分の肌に合っていたようで、2020年はかなり順調に練習を積むことができていた。そのためアイアンマンでのコナスロット獲得、サブ9への接近を現実的に見据えて2021年に突入した。
・休養の経緯
休養に至る原因について結論から述べると、2021年4~5月を中心としたオーバートレーニング。練習時間としては少し減らしたフェーズに起こったためオーバートレーニングとして自覚することが困難であった。
以下、2021年初からの経過を記載する。
・2021年
冬
1月から3月上旬にかけて、練習のほぼ全て(98%以上)をL2以下の強度にしてかなりmassiveな練習量をこなしていた。2月末には高強度を全くしてないにもかかわらずFTPを更新、明らかに調子が良かった。3月中旬に落車し尾骨の骨挫傷がある状態でもしろさとTTで結果を残せた。
3月中旬ごろよりフェーズ移行し、ランを中心に高強度の頻度が大幅に増加。(4月中旬にラン5000m記録会があり、それに向けたピーキングを行っていた)
結果、総練習量の低下もあり5000mをDNF。
この頃より情勢的にも2021年シーズンの海外レース参戦が非現実味を帯びてきていた。
春
6月のスペシャライズドカップに照準を合わせ4月下旬からはRace specificな練習を計画したが、ゴールデンウィーク周辺の負荷が高すぎたことや年始からの蓄積疲労からか5月中旬から身体の反応が急激に悪くなった。ウエットスーツを着るだけで息苦しい最悪のコンディションでスペシャライズドカップをなんとか完走。
夏
海外レースの可能性はなくなり、秋に開催されそうな国内ミドルを念頭にメニューを組んだ。コンディションは底を見せたが上昇の気配はなく、構造的なトレーニングに集中することや柔軟なメニュー調整ができなくなっていた。これはアイアンマンのような明確な目標レースがなかったことも一因として考えられる。
秋
8月後半から涼しさと共にやや調子を取り戻しつつあった中、9月から10月にかけて3回の落車。明らかに集中力の低下、および自身の実際の体力と体力への認知にズレが生じていたことがわかる。体調の改善に注視し、フィットネスの低下をコンディショニングで補い10月末の99T、翌週のしろさとTTをそれなりの形にして完走できたのは収穫だった。
冬
5月以降結局バイクの練習意欲は回復することなく、しろさとを最後にバイクの構造的トレーニングを計画すること自体を休止。10月頭からは12月末のフルマラソン(Beyond)に照準をほぼ一本化していた。
ランニングに絞ることでメニューをこなすことが心理的に楽になり、Beyondでは自分のA目標2時間45分切り(2時間44分)を残すことができた。
・2022年,
1月
マラソンでピーキングしたこともあり2週ほどゆっくりしてから2022年シーズン開始を試みた。例年より緩やかな始動。
2月
2月初からベース期に入ろうとした際に強い倦怠感、練習意欲の上がらない感覚が出現。振り返ると、昨年5月からの感覚が特に精神的に遷延していることを自覚。コロナ禍も行動制限的観点ではまだ長引いているため2022年の海外レース参戦も積極的に検討できないことも踏まえ、長期的な休養をとることが望ましいと考えるようになった。
3月
3月10日ごろより練習を計画する事自体を完全に中止。休養に突入した。
*レベルは全く違うのだが、この期間にロードレース界でトムデュムラン選手が休養、そして東京五輪後に引退を発表しており、症状や心理状態など重なる点が多かった。とても好きな選手だったのでゆっくり休んでほしい。
・休養中の生活(*余談)
いままで運動に注いでいた心身のエネルギーバランスをとるためなのか、目的なく思いつきで旅行することが異常に増加した。もともと遠出が嫌いで大会以外でわざわざどこかに行きたくないような人間なので、驚きと共に過ごした。出先で運転したりして泊まるだけなので旅行というよりも移動といった方がよかったかもしれない。趣味の読書や、他の活動に割くエネルギーが増えたとかはなかった。飲酒量は急激に増加したわけではないが、飲酒している時間が長くなっていた。
・復帰のタイミング(*余談)
運動をしたい、あるいはしたくないと思っていたかどうかも定かではないが、7月くらいまではこのままトライアスロンからフェードアウトしても全く不思議ではないと感じていた。その一方でやはりサブ9(より厳密には、バイクとランで一定目標を達成し、結果サブ9すること)を達成してから退きたいという気持ちは維持していたため復帰のタイミングを見計らっていた。
6月前半、7月初にそれぞれ一度身体を動かしてみることに。2週間ほど軽く継続できたがそこで打ち止め。特に6月の再開時に、環境を整えないと本格的復帰は難しいだろうと感じており、7月に続かなかったのはそれを裏付けた。
復帰をしたいからというよりはどちらかというと勢いで生活環境を大幅に整えることとなり、8月21日から練習再開にこぎつけることに成功した。
人と競うことにほとんど興味がなく人と練習すると逆に諦めが早くなりがちな自分としては、他者という歯止めがない分またすぐに練習をやめることは正直いつでも起こりうるし、そうなったとしても受容できる感覚はある。
・休養期間の練習量
3月14日~ Run0㎞ Bike41分(しろさと)
4月 Run8.3㎞ Bike 3時間20分 (ローラー1回、ヤビツ1回)
5月 Run47.7km Bike2時間50分 (主にGW)
6月 Run46.3km Bike6時間 (ほぼ6/8-20)
7月 Run60.5km Bike8時間 (7/5-15)
+(練習会2回でRun18.5㎞、Bike14時間)
8月20日まで Run0Km Bike1時間50分(淡路島ライド)
Swimは2022年全体で、10月25日現在9回19000m(ほぼ7月のみ)
・リハビリプラン
8月21日の時点で9週間後の10月23日の紅葉チャレンジデュアスロンを念頭に置き、5週間でMaxの85%くらいまで練習量を戻しそれを維持する計画を立てた。
自分のMax練習量はノースイムで25h/週程度なので、20‐21h/週を目安とした。(練習時間についての注意点は後述したい。)
・練習時間
P:Plan R:Result
week1 P:12.5h R:13.5h
week2 P:15h R:14h
week3 P:18h R:18.5h
week4 P:15h R:13h (回復週というより用事)
week5 P:20h R:16.5h(1日練習ロスト)
week6 P:20h R:20h
week7 P:18h R:17.75h (連休の関係で翌週と合計40h)
week8 P:22h R:4.5h (憩室炎に罹患。火曜から日曜ほぼoff)
week9 P:10h R:9.25h
(+Race) (+Race)
・おおまかな練習の内容
筋トレを週2回計1.5h実施。
練習時間の90%を明確にLT1以下のゾーンで実施。
LT1を超える強度の練習: Bike: SFR週2回(乳酸的な強度が狙いではなく結果的に乳酸が出てしまう練習) VO2週1回(Rattle snake) (week3から計4回実施) Run: Repetition週1回 (これも乳酸的な強度ではなくエコノミー向上が目的 week3から計5回実施、うち1回失敗) Cruise interval計2回
時間数の枠組みは当初から決めておき、各週の月曜日にその週の練習スケジュールを立てた。 強く意識したのは、実施できそうにないスケジュールを組まないこと。 →練習メニューのロストは憩室炎までの52日間(95回くらいの練習セッション)で2回(うち二日酔い1回)だけで済んだ。
*練習時間について
私は日常生活の他の要因を限りなく削いでおり(というか自堕落に逃げている)、他の人と比べて休養に費やせる時間が多いため、練習時間の絶対値を参考にしないことを強くお勧めしたい。バイクは空力、安全確認目的以外に実走しないため、練習時間≒ペダルを踏んでいる時間である。これは結構大きい違いである。
・リハビリ中の感覚
Bike
筋量がそこまで落ちていないからか、4週目くらいから時間を伸ばすことの抵抗が減ってきた。LT2を超えたレベルの出力の仕方は悪くないが、subLT2-LT2(SST-FTP)を維持する力は戻りが遅い。(と思う。全く取り組んでないからわからないが多分長時間できない)
1から身体を作り直そうと筋トレとSFRを取り入れたのが非常に良い。基本的に週2回筋トレをしてしまうと週を通じて筋疲労が残った状態で練習をせざるを得ないが、それでもこなせる強度の練習を積み続けることでテーパー(というか憩室炎による強制休養)により一気に強化された自覚を得ることができた。
スクワット、ブルガリアンスクワット、SFRは出力の効率を明らかに上げていると思うし、使用する筋肉が変わっていった。レースでは初めて腸腰筋がバキバキになり、最初ランニングができないくらいになった。
総合すると2カ月で80%くらいまでは戻った感覚があり、項目によっては休養前より強くなった要素もあった。
Run
最初の3週くらいはジョグが重すぎて駒沢公園の1周2㎞が異様に長く感じていた。6週目くらいから心拍数は抑えられていて筋疲労も確実に軽減しているが、いまだにジョグは重い感じが強く体感強度があまり下がらないままである。当初5'50/kmくらいだったのがいまは5'25/kmくらいでジョグしている。5'00/kmを切るジョグをすることは多分当面ないし必要ないと考えている。
Repetitionのようなスピードワークのペースは以前とほとんど変わりない。ジョグにできるだけウインドスプリントを入れるようにしてから動きの改善は図れているように思う。逆に、最後にウインドスプリントをしようと思えるくらい余裕を持ったジョグをすることが重要ともいえる。
総合すると2カ月での復帰度は55%-60%くらい。恐らくBikeと代謝的には同じ部分がボトルネックになっているが、Runの方がその影響が色濃く現れるのだと思う。
*マクロ、ミクロで見た練習ごとの目的や、栄養摂取など詳細については、もの凄く気が向いたら書く時が来るかもしれないが、とても有用な情報を提供してくれている方々があちこちにいらっしゃるのでそれらを漁って頂きたい。
・復帰レースレポート
1st Run 7.6km 4'05/km
直近の練習内容から1st Runのペースは4'00-4'08/kmを想定していた。最初は時計を見ずに自覚強度だけでペーシングして4'05/km一定で刻めたのでまさに想定通り。ただし心拍数はかなり高く、これ以上ペースを上げることは乳酸蓄積の観点で全くできないという感覚だった。
フルマラソンでこれより12秒/㎞速く走っていた神経感覚が残っており、筋肉と代謝回路のミスマッチにより結果的に強度が高かったこととなりこの後に影響が及んだ。
Bike 65.25km 42.9km/h 247w (62㎏台中盤)
Bikeは90分と長いので、まだ高強度の時間耐性を測りかねていることもあり2段階設定。B目標230w、A目標245wとしていた。序盤はやはり体感強度とスピードのみを見てペーシング。落ち着いてきたラインをベースにそのパワーを維持する形をとり上記パワーに。
パワメはキャリブレーションしていたが恐らく2%(5w)くらいの高ぶれ(自宅にて検証)。実質242wといったところでこれは肌感覚にも合っている。ケイデンスは大体72‐77rpmの範囲。かなり踏んでいる感覚だったが四頭筋へのダメージは全然目立たなかった。
165㎜クランクが功を奏している可能性はある。フレームもいいのかもしれないが、気象条件を加味するとパワーに対してスピードが遅い(この条件、コース、パワーで43㎞/h台中盤を目指している)のでフレームの剛性が悪い方にも働いているように感じた。事情はあれど肘パッドも高くエアロも煮詰め切れていなかったのもまた事実。しろさとTTでもう少し様子を見る。
心拍数、体感強度は恐ろしく高く、今までのレースの中で一番しんどいBikeだった。1st Runがかなりギリギリのラインで走っていたので、乳酸濃度、心拍数が高い状態のままBikeに突入し、それを維持せざるを得なかった(一息付けなかった)ことが一番影響していると思う。逆にこの体感強度を90分維持することは全盛期でも難しかったように思う。(多分筋疲労が先にリミッターになる)
ここもまた代謝回路のミスマッチを自覚したところであった。
2nd Run 15.0km (4'47/km)
(5㎞ごとのスプリットが5'03/km→4'47/km→4'31/km)
目標ペースは4'15-4'20/km。元々バイクの後のランが相対的に得意なので悪くとも1stから15秒/㎞落ちには収められるというのがこれまでの感覚。
まずバイクoff時点で今までにないほどの疲労感があり、これは想定通り走ることは無理だと悟る。走り始めた際に今までに一度も感じたことのなかった腸腰筋の強烈な筋肉痛を感じ、非常に嬉しい気持ちになりながらも痛すぎてまともに走れず。呼吸を整える意味合いも含めて5'15/kmくらいでしばらく走ることになる。9㎞ほどで身体が落ち着いてきたため終盤はリズムよく4'30/km弱で完走。
・総評(リハビリを含めた)
レポートとして書き表して振り返ってみると、やはり一貫して乳酸処理能力の復調が他の要素に対して間に合ってないことがよくわかる。逆に言えば、
この結果だけを見るとSSTなどをすることで速やかに課題は埋められそうだが、長期的な観点で言うとまだベースが足りていないのでそこに着手するのは時期尚早。焦らずに現状把握目的で結果を眺めることが重要である。
・今後の展望
第1目標:高速コースアイアンマン(6-8月のどこか)でBike+T2+Runでの7時間50分切り
Bike180㎞4時間33分前後
(39.5km/h)
Run42.2km3時間13分前後
(4'30/km+2km毎のエイドで各6秒+最初3㎞の馴化で1分)
→Sub9
大体のスケジュール
11月から1月にかけてはひたすらにRunとBikeのベースを積み上げる。その期間中は週2回の筋トレを維持する。11月後半ごろより非常に慎重にsubLT2のトレーニングを導入し始める。強度が下振れする分には問題ないが、週ごとにスキップするか実施するかを検討しオーバートレーニングを避ける。
2月からはSwimを本格的に始める。
Runが順調に行けば、Runの割合を減らし筋トレも週1に減らしながらSwimに時間を割く。4月ごろよりVO2を導入する。
RunではVO2領域のトレーニングは実施しない。(恐らくRunの1000m×nなどはむやみにVLamaxを高めてしまうという仮定のもと)5月あたりからはRace Specificなトレーニングも導入するが、レース強度はあくまでLT1近辺なのでLT1をはっきり超える強度の練習を増やさない。(BikeならいわゆるL3(テンポ)、Runなら速めのジョグ:これらは強度が高すぎて継続性を担保できない)
→むしろそれまでの練習からVO2などの高強度を取り除いたくらいの内容で、取りこぼしを避ける。6月か8月のアイアンマンで目標達成。
総じて今までよりもレースが近づいてきた時の練習強度を下げることを強く意識して取り組む。
もちろん今年味わったように、計画通りいかないことはままあるので長期計画は半分絵に描いた餅くらいに見ておきたいと思う。
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