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木が育つまで

木材製品は私たちの生活に馴染みのあるものですが、そのもととなる木はどこの国で育ったのか、どうやって育てられたのか、案外知らないという方も多いのではないでしょうか?本日は、木が育つまでのストーリーを加えながら、日本の林業ってこんな感じ!というイメージをつかんでもらえるような記事を書いてみようと思います。

1、木はこうやって大きくなる

 木を育てたい!と思ったら、苗木を山に植えることから始まります。一般的に木を育てるときは、山に種をまくことはありません。
 苗木を植えた後は、雑草や雑木に負けないように下狩りを行ったり、曲がって育ってしまった木など除去する作業(除伐)、まっすぐで太い木として成長させるための間引き作業(間伐)を行い、少なくとも40年かけて一人前の木として収穫することができます。収穫までに少なくとも40年かかるので、親が植えた木を子が収穫し、子が植えた木を孫が収穫するという、まさに世代交代しながら林業を受け継ぎ山を守っているのです。

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2、40年がスタンダードなのか

 収穫までに40年も?と驚いたかもしれませんが、100年というもっと長い時間をかけて木を育てている地域もあります。有名な地域でいえば、奈良県の吉野林業です。吉野林業は、年輪幅を狭く均一にするために極端に密な状況下でゆっくりと生育させ、100年という長い時間をかけて収穫します。

 一方、東南アジアの湿潤熱帯地域では、10年以下という短い期間で収穫できるユーカリやアカシアなどが植えられています。アカシアは、オーストラリア・アフリカを中心として熱帯〜温帯地域に分布している樹木で、日本では九州地域で植えられていたこともあります。アカシアは聞きなれない名前かもしれませんが、実はアカシアのチップ輸入は日本が世界第一位なのです。輸入したアカシアは製紙、合板、燃料等さまざまな目的で利用されています。

3、スギが植えられる理由

 早く収穫できるならアカシアを植えたほうが良さそうじゃない?そもそもなぜ日本に植えられているきはスギが多いのか?と思いませんか?

 まずアカシアですが、成長が早いメリットがある一方で、成長が早いが故に在来植生を追い払ってしまうこと、また森林土壌のバランスを大きく変えてしてしまうこと※等、環境面において問題点が残っています。※地面に落ちて堆積した葉や枝からの窒素の供給量が大きい一方でリン供給量が少ないため

 次にスギの話をするまえに昭和10年頃の話を少しだけ。昭和10年といえば、日本は戦時中ですが、木材はというと軍需物資等としての需要が高かった頃です。また終戦後は復興のために木材を必要とし、大量の伐採が行われれていました。結果、森林は大きく荒廃してしまい、台風等による大規模な山地災害や水害が発生します。そこで国は国土保全の観点などから、造林に力を入れ積極的に植林を行っていきます。これが戦後の拡大造林と呼ばれているものです。

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 当時は、建築用材、土木建設用の木材を必要としていたため、柱として利用できるまっすぐ生長する木(=スギ)の需要が大きかったのです。またスギなどの針葉樹は、広葉樹と比べると柔らかく加工しやすい点や、屋外でも腐りにくく、白アリにも強いという特徴もあることから、スギが好まれたのはないかと思います 。
(ちなみに英語では針葉樹をconifer 広葉樹をhardwoodと呼びます。)

4、手間暇かけて林業をする意味とは

 既にお話した通り、日本において林業は一人前に成長するまでに、長い年月と手間暇がかかります。一方で、国産材の木材価格は低下し、育てた木を伐採して販売しても森林所有者の手元にはほとんど利益が残らない厳しい状況におかれています。近年では、労力の省エネ化に取り組んでいる企業も多く、例えば、ドローンを使った苗木の運搬や間引きの作業を効率化するために低密度植林を行ったりしています。

5、おわりに

今回の記事では、木を育てるには時間がかかること、木材価格が低下していて林業は厳しい状況だ、ということをお伝えしましたが、でもちょっと待ってください。そんなに経済的に厳しいなら、林業をする意味とは…??防災のため?景観のため?動植物のため?マキや建築物に使用する木材を入手するため?
 答えは人それぞれかもしれませんが、その答えを探すきっかけやヒントになるような記事をこれからお届けしていきたいと思っています。引き続きnoteを見ていただけると嬉しいです。

■氏名:上野 みさこ
■所属:GFnote編集部ライター
■紹介文:地元京都は山に囲まれた盆地。自然は身近な存在だった。学生時代に始めた登山をきかっけに、日本の美しい自然を守っていきたいと思うようになる。現在はGIS(地理空間情報)に関する仕事をメインでしつつ、いろんなことに挑戦中。

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