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【詩】蔦

蔦に覆われた家

深い緑の葉が折り重なって分厚い層をなし

その一葉、一葉を風が震わす


安心すら感じさせる束縛が、そこにある

蔦はただ静かに、茎を壁に這わせていく

細いながらも断ち切りにくい

茶と紫を混ぜたような色のその茎を


蔦にこのまま覆われて、陽の光の入らない世界で生きることを選ぶのか

それは心地よい過去

変わらぬことへの安易な執着

そのうちお前は窒息するのだろう

それすらもまた、恍惚だというのか



目を背けること

耳を傾けないこと

慣れすぎたお前は

過去の傾いた陽射しの中にある、どこまでも優しい思い出と共に朽ちていくよ

それでもいいと思えないからこそ

お前は今、吐き気を覚えている

蔦に覆われた家に

住み続けること

お前はいつ、その蔦をかき分けて

外へ出る


優しい思い出を捨てることはない

外へ出ることは、優しい思い出を抱いて

前に進むことだと

そう、わかっているだろう

わかっているのだろう


わかっている

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