レオの火消し(6)

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バーからそう遠くない商業ビル。
赤坂見附に数ある商業ビルの中でも、一際目立つ21階建てのオフィスビルの最上階の入り口にレオとバーテンダーは立っていた。
入口の前にはスーツに身を纏った厳つい男2人が立っている。
「柳(やなぎ)さん、お疲れ様です。ボスがお待ちです。さぁ、どうぞ」
男の1人は丁寧に挨拶をすると、ドア横のセキュリティパネルに暗証番号を素早く打ち込む。
するとドアがゆっくりと開き、広い応接間が見えた。
レオと柳は静かに部屋に入る。
部屋には独特なパターンが描かれたペルシャ絨毯が敷き詰められ、最奥には高級そうな執務机が置いてある。
机の奥には、大柄の男が椅子に座り、万年筆を握りながら書類を読んでいる。
男はレオと柳に気がつくと、部屋が振動するほどの低い声で話始めた。
「おぉ、柳か。ちょっと待ってろ。」
男はサッと書類にサインをすると、椅子からゆっくりと立ち上がり机の脇を通りレオ達の方へ歩いた。
男の身長は2m近くあり、柳より少し高いぐらいであった。
銀の短髪は綺麗に整えてあり、左目は傷がついており、開いてない。
「松尾さん、レオを見つけました。レオ、こちらは八足会の赤坂支部長、松尾さんです。」
「どうも、、、」
レオは決まりが悪そうな顔をし、軽く会釈した。
「お前がレオか。噂は聞いてるぜ。まぁ、座れ。」
松尾は執務机の前にある応接ソファに2人を座らせると、自分も向かいに座り、ゆっくりと机の上にある葉巻に火をつけ、二口ほど吸って吐く。
厳つい顔をしているが、どこか知性的な目でレオを観察している。
松尾は足を組みながらレオに話し始めた。
「八足会は知ってるな?」
「まぁ、、一応、、裏稼業で知らない奴はいない、、」
レオは目線を逸らしながら小さく答えた。
「そうだろうな。うちは発火者で構成された裏稼業組織だ。金さえ払って貰えばどんな仕事でも請け負う。」
松尾は表情を変えずに静かに話続ける。目はレオを見据えていた。
「最近は政府の連中が手に負えない発火者の始末なんかの仕事もやっててなぁ。政府からの報酬受け取りには発火者の死体の提出がいる。」
レオの表情がだんだん曇ってくる。
「ところが最近もぐりの”火消し屋”を名乗る奴が出てきてなぁ。何でもそいつは不思議な力で発火者を元の人間に戻す事が出来るらしい。これじゃあ商売上がったりだ。」
松尾はレオから目を離さず、また葉巻をふかす。
レオはよそよそしい態度で目線を逸らしたまま。柳は少し落ち着かない様子だった。
「なぁレオ。もう一度聞くが、お前八足会がどう言う組織か知ってんだよなぁ?」
松尾の声は一段と低くなり、応接間がピリピリと振動する。
松尾の顔は怒りで赤くなり始め、全身が小刻みに揺れ始める。
発火状態になる際に放たれる赤い光が松尾の片目から漏れ始めた。

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