レオの火消し(4)

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コートの男はしゃがんだまま集中を始めると、あたりにふわっと風が吹く。
両足の周りから鈍い赤い光が放たれ、光は渦を巻きながら両足に絡みつく。
ニワトリ男は少し動揺しながら、コートの男へ攻撃する機会を伺っている。
コートの男の目からも同じ赤い光が漏れ出し、目の形状が変化し始めた。
猫のような丸みを帯びた目に形が変わり、赤い光が徐々に収まるにつれ、黒目がはっきりとニワトリ男を捉えている事が分かる。
足も形状が変化し始め、スネのあたりから黒のジーンズが破け始める。
破けたジーンズの下からは、鮮やかなヒョウの毛が見え始め、黄色と黒斑点のコントラストがはっきりとしている。
赤い光が収まると、コートの男はふぅっと少し息をついた後、ニヤリと笑いながらニワトリ男を見た。
ヒョウの目はまっすぐとニワトリ男を見続け、獲物を狙うようだった。
ニワトリ男は突然の出来事に狼狽えている。
「おマえ、ナにモノだ、、、」
ニワトリ男のどす黒い声がさっきより弱々しく響く。
「なんだよ、お前と同じ発火者だぜ?まぁ、お前のとはずいぶんクオリティは違うけどな。」
そう言うとコートの男はバーカウンターの上でしゃがんだ体勢からゆっくりと四つん這いになり、全身に力を入れ始めた。
あたりに風が吹き始め、流れているジャズのテンポが上がる。
ニワトリ男は雄叫びを上げると、コートの男に向かって突進をした。
バーカウンターが音を立てて破壊される直前、コートの男はヒョウの足にグッと力を入れ、強くバーカウンターを蹴り飛ばし、瞬間移動をしたように四つん這いのまま部屋の反対へ移動した。
ニワトリ男は一瞬の事で気づいておらず、コートの男を探している。
「猫科の習性でね。背後を取ると興奮状態になっちまう。」
コートの男の目がさらに丸くなり、四つん這いのまま、また足に力を入れる。
床を蹴り飛ばすと、今度は空中移動中に一瞬で体勢を変え、飛び蹴りのポーズを取った。
革靴のかかとが勢いよくニワトリ男の後ろ首へクリーンヒットし、ウゲっと一瞬声をあげると気を失い、そのまま崩れるように倒れた。
コートの男は倒れたニワトリ男の横に立つと、すかさず手のひらをニワトリ男の額にあて集中を始めた。
手のひらから薄緑の優しい光が漏れ始める。
「暴れやがって。じゃあ消すぞ。」

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