レオの火消し(7)

7

「ハッハッハ!」
松尾の笑い声が高らかに響き、発火光が静かに収まった。
レオは状況が飲み込めておらず、額に薄い汗をかいていた。柳はまたか、といった様子で安堵のため息をつく。
「松尾さん、、やめて下さいよ、、、あなたの発火を止めるのは一苦労なんですから、、、」
柳はため息をつきながらソファの後ろに寄りかかった。
「ビビったかレオ?まぁ、八足のシマを荒らした事の処分は少し考えよう。それよりお前に頼みたい仕事があってなぁ。」
松尾は葉巻を灰皿に置いて、少し顔を引き締めた。レオは驚いた様子だったが、ゆっくりと落ち着きを取り戻した。
「埼玉の飯能で少し仕事がある。レオ、お前に頼みたい。」
レオは嫌そうな顔を押し込め、とりあえず話を聞いた。
「八足が顧問を請負ってる企業が飯能で新事業を立ち上げている。山の木を木材に加工して輸出する事業だ。
工場の建設が始まった所なんだが、最近妙な事件が起きてな。」
松尾は少し上を見上げるとゆっくりと話を続けた。
「現場責任者が何者かに惨殺された。遣いの奴が言うには殺傷されたらしい。」
レオは静かに話を聞く。
「ただの殺傷事件なら変な話じゃないんだが、どうも切り傷が異常なくらい大きかったらしい。体の前面がほぼ真っ二つだと。」
レオの顔がピクッと動いた。
「発火者の仕業だと?」
レオは驚いた様子もなく松尾に問いかける。
「流石に勘がいいな。そう、おそらく発火者の仕業だ。」
松尾はレオを見据えながら落ち着いて答えた。
「発火は負の感情が著しく高ぶった際に発現する事は知ってるだろ。俺の睨む所、その発火者はその企業と何か関係があるんじゃねぇかと考えてんだ。」
松尾はまた葉巻に火をつけた。
「ぶちのめして政府に渡しても良いんだが、それだと原因が分からなくなっちまうからな。
そこでレオ、お前の火消しを使って身柄を拘束して欲しい。」
レオはめんどくさそうにため息をついた。
「報酬は?」
「柳の店をめちゃくちゃにしやがった事を水に流してやる。」
松尾はニヤッと笑いながら葉巻をひと吸いした。
(店を壊したのは俺じゃねーんだが、、、)
レオはイラッとした表情を隠しながらも、心でそう呟いた。
「分かったよ、八足と揉めるとロクな事にならない。」
「物分かりがいいじゃねぇかレオ。じゃあ明日の朝向かえ。移動は八足が手配する。」
松尾は嬉しそうにそう言うと、葉巻を灰皿で消した。
「柳、お前もレオと一緒に行け。こいつが変な真似をしたら発火して殺っていいぞ。」
松尾は表情を変えずに柳にそう言った。
「かしこまりました松尾さん。レオ、よろしくお願いしますね。」
柳はニコッと微笑み、レオに軽く会釈した。

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